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ゼリリン、受験する


昼ごはんを食べている間、ルー兄ちゃんは昨日と同じようにお昼までの冒険譚を語っていた。

どうやら今日は父ちゃんと一緒に森を越えて町に顔を出してきたようだ。

あの慎重なルー兄ちゃんがいきなり森を越えていたことに驚いたが、むしろいままでの反動で活動的になったのだと思う。

一度前へ踏み出してしまえば、どんどん進んでいくタイプらしい。


父ちゃんはロックナー家の長男のお披露目も兼ねて町を見て回ったようで、将来領主となる長男に経験を積ませる目的があったのだろう。

自分の町を知らない人間に領主は務まらないからね、正しい判断だ。

そしてその後は貴族とはなんたるかを語りだし、最後には学校へ入学する準備がどうのこうのという話になった。


やっぱりあるんだな学校。


いや、学校があるのは分かってたけど、まさかうちみたいな貧乏貴族が通う話になるとは思わなかった。

入学は7歳かららしいけど、貴族の長男以外は入試が設けられているらしい。

ようするに、後継ぎに関しては国が面倒をみるけど、それ以外は自分の力で入ってこいよってことだな。

実に分かりやすい。


「で、ルー兄ちゃんが7歳になったから学校へ送り込むついでに、僕たちも一緒に入試を受けてみないってこと?」

「ははは、さすがにセリルは物分かりが良いな。入試は国民ならば誰でも受けられるし受験は可能だ。だが特待生でもなければ、貴族の長男以外は莫大な学費がかかる」


やはりそういうことか。

レナ姉ちゃんが7歳の時に入試をしなかったのは、一般枠で入るのは経済的に厳しいからなのだ。

家庭教師の忍者さんとの特訓を終えた今なら特待生を狙えるが、それまでは時期を待っていたという事なのだろう。


そして、7歳になったルー兄ちゃんと力をつけたレナ姉ちゃん、おまけの俺の準備が整ったところで王都へ向かおうという訳だ。

ちなみに、俺は年齢制限にひっかかっているので腕試しみたいな感じらしい。

ここで特待生クラスの点を叩き出せれば、2年後は特待生として入学が可能とのこと。


「レナは勉強が苦手だが、スキルや魔法においては同年代でも飛びぬけているはずだ、おそらく戦闘部門の特待生枠にひっかかると父さんは睨んでいる。がんばれよ?」

「「「おぉーっ!」」」


俺たち姉弟が声を揃えてやる気を出した。

リジューン王国の闘技大会に出場させてもらった俺から言わせれば、レナ姉ちゃんが特待生になるのはほぼ間違いないだろうと思うけどね。


だって姉ちゃん、大会の参加者よりも強いし…

パチュルといい勝負だろう。


「じゃあ、お姉ちゃんがんばるね?」

「うん」


ぜひとも頑張ってほしい。

というか俺の話が全く話題に上がらないが、まさか合格できないとでも思っているのだろうか。

家ではゴロゴロして、昼には森に遊びにいっているだけだというのに、いったい何を理由に俺が落ちるなどと…


……十分な理由がそろってました。


「はははっ! セリルはまだ5歳なんだから無理しなくても大丈夫だぞ、いっぱい遊ぶのが仕事みたいなものだ」


まあ、そうは言いますがねお父様、さすがに中世の7歳が受ける試験で俺が落ちるなどありえませんよ。

ハッハッハ。


忍者さんとの修行はあまり参加してなかったし、父ちゃんが俺の実力を把握してないのは仕方がないことなんだけどね。


「むぅー? お父さん、セリルは強いよ? わたし、知ってるもん」

「そうなのかセリル?」

「うーん…まあ、そこそこ?」


冒険者のC級くらいだからね、ある意味そこそこだ。


「ハッハッハ! そうか、そこそこ強いか。うむ、自信を持つことは良いことだ。期待してるぞ」


そうして俺たちの王都行きが決まった。

試験は1ヶ月後らしいので、少しくらいは受験勉強でもしておこうかな。

この世界の歴史系が出たらいくらなんでも答えられないしね。

カモン攻略本先生、俺に勉強を教えてくれ!


今後の予定はとりあえず受験、特待生になった後は教会のコアに飛んでDPダンジョンポイント稼ぎだ。

ちょっと予定が入ってしまったが、まあ急ぐことも無いだろう。



……1ヶ月後、俺たちは王都へとやってきていた。

長男が国の法律に則って学校へ行く場合、国から竜車という超高性能タクシーみたいなのが貸し出されるので、それに乗って王都へと超特急でやってきたのである。

竜車は騎士の護衛付きで、馬の代わりに飼いならされた亜竜が馬車を引くという仕組みのようだ。


こっそり攻略本で鑑定した結果、亜竜はランクD程度の速度特化の魔物だった。

腕や顎の筋肉は弱いが、足の筋肉が発達しておりかなりのスピードが出せるらしい。

実際めちゃくちゃ速かったよ、普通の馬車の2倍速くらいは出ていた。


学校は貴族の子息が集まるだけあって警備は厳重で、半年に1回くらいは国から貸し出される竜車で送り迎えがつくらしい。

通う期間は10歳までの3年間だ。


そこから先の14歳まで通う学校なんかもあるけど、ここからは国の援助から外れる。

授業がどんなものかは分からないけど、能力によってコースが変わるようなのでちょっと期待していたり。

2年後が楽しみだ。


ちなみに、受験会場までは騎士が案内してくれるので、それに従っていけば良いとのこと。

いたれり尽くせりだな。

父ちゃんからは帰りの竜車を雇えるくらいのお金は持たされているが、キノッピで稼いだ金貨350枚があるから、このお金必要ないんだよね…


キノッピと言えばもちろん、土の迷宮にあるキノッピはとりあえず根こそぎ収納してきている。

3週間も放置したらとんでもない事になるから、これはしょうがない。


パチュル達も神聖国へは今すぐに向かうという訳でもないだろうし、向かっていたとしてもそろそろ着くぐらいの勢いのはずだ。

帰る前に、一度神聖国に遊びに行こう。



なにはともあれ、まずは目の前の試験だ。

さあ、かかってくるがよい。



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