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ゼリリン、適当に返事する



土の迷宮と新発見した迷宮が繋がった。

いったいどういう事なのか分からないけど、どうやらダンジョンバトルというのが開始された事だけは把握している。

なにせ俺の頭に直接アナウンスが流れてきたからな、美魔女さんとパチュルには聞こえてないみたいだけど。


ダンジョンバトルがどういう勝負なのか分からないが、名前からして迷宮の総力を挙げた決戦のようなものなのだろう。

とりあえず攻略本さんを召喚して内容をインプットしてみる事にする。


「出でよ攻略本、我に知識を授けたまえー」


それっぽい掛け声と共に召喚してみた。

傍には美魔女さんがいるからね、詠唱の基本とかしらないけど無詠唱が人間に使えるのか分からない以上は迂闊な事はできない。


「ふむ…… 2年前の闘技大会でも見たが、それが君の召喚魔法かい?」

「そうよっ! セリルが本を出す時は本気になった証なんだからっ」

「なるほど、それが切り札という訳か…」


よし、上手く勘違いしてくれたようだ。

ナイスなパチュルアシストだな。


「はい、そうですよ。これは僕の祖父が授けてくれた魔法書なんです。本と契約することで召喚魔法と魔力の強化が可能です」


てきとうな嘘ででっちあげながら、本からダンジョンバトルに関する情報を引き出していく。

美魔女さんには悪いけど、俺が自分から能力を明かすことはないだろう。


「ほほう?その歳で契約まで果たしているとは驚きだよ。確かに魔法書と契約する事で特定の魔法が無詠唱で使えるようになるが…君のお爺さんは相当の魔法使いのようだね?」


なんと、無詠唱にそんな裏情報があったとは……

人間が詠唱を破棄できないのはデフォルトだと思っていたけど、どうやらそればっかりでもないようだ。

いや、そもそも魔法使いにとっては常識なんだろうけど、俺が知っている訳がないしな。

今後魔法を使うときは攻略本さんのせいにしておこう。


「はい、祖父が若い頃は遠い国の賢者をやっていたようです。ダンジョンコアを持ち帰ったと言われる勇者とも面識があると言っていました」


でっちあげもここまで来ると清々しい、我ながらまったく答える気のない回答だ。

頭はデータベースからの情報をダウンロードする事に忙しく、考えてしゃべる余裕が無いからしょうがないね。


「ダンジョンコアを持ち帰った勇者と賢者だと…? まさか、クローム神聖国の勇者タクマ・サトウの事かっ!? ……なるほど、それならば君が出身を明かせないのも道理だな」


えっ、誰ですかそのサトウさんって…

まさかこの国とダンジョンガチャで出たキャミィの国が面識あるなんて知らなかったよ。

どうしよう、やっぱり説明が適当すぎたぞ……


……ま、いっか。

なるようになるだろう。

どこかでサトウさんに会ったら謝っておこう。


それにしても、ふむふむ……

本のデータベースによると、やはりダンジョンバトルというのはコアを賭けた迷宮同士の総力戦のことらしい。

勝敗はどちらかのコアが壊れるか、ダンジョンマスターの死亡、または降伏が確認されれば負けとの事。


降伏した場合は結構な量のDPダンジョンポイントが失われるらしいが、負けたバトルの参加者はいったん外に放り出されるらしい。

最悪の場合、パチュルを守るためにも負けることを視野に入れないといけないな。

まあ出来立てのダンジョンに負けることはたぶん無いだろうけどね。



「美魔女さん、それよりもここから一旦抜け出さないと。こうなった原因がどうあれ、攻略してしまえばどうということはありませんよ。どのみち出来立てなようだしね」

「う、うむ、そうだったね。出来立てのダンジョンはだいたい1~2階層程度の作りだ、私一人でも攻略可能な範囲だろう。それにしても、賢者の孫か……」

「むぅ、あんたクローム神聖国出身だったなら早く言いなさいよ。いままで国中を探し回っても見つからなかったはずだわ。あと、賢者ってなに?」

「賢者っていうのはすごい魔法使いのことだよ」


ちなみにクローム神聖国出身ではない。


なにはともあれ、攻略開始だ。



────────────────────────


???視点。


私は<命芽吹く森の迷宮>の支配者、植物型のダンジョンマスターだ。

名前はまだない。

これから大出世を遂げる予定であるから、いずれ大層な名前がつくことだろう。


私が生まれたのはいまから約半年前だが、その間にできる限りの力を蓄えてきた。

知り合いの先輩マスターからも、新人の中ではかなり優秀だと太鼓判を押されるくらいには努力家なのだ。

なにせまだ入り口に幻影の効果が残っている準備段階の状態ですら、私の迷宮は2階層となっているのだから。


うむ、迷宮の幻影が晴れるまでは生まれてから約1年、そこでようやく2階層まで作れていればなかなか優秀な方だというマスター常識から比べれば、私の凄さがよく分かるというものだ。

これからは私の時代で間違いあるまい。


…しかし、今日の私は不運だった。

いつも通り周りの植物からDPダンジョンポイント稼いでいると、唐突に見知らぬコアからダンジョンバトルが申請されたのだ。


相手は<亜空間迷宮>のダンジョンマスターらしいが、そんなダンジョンは聞いたことも無い。

出世するためにマスター同士のネットワークを大事にしていた私ですら知らないのだ、おそらく生まれて数日くらいの初心者なのだろう。

ひと捻りにしてやる。



……そんな事を考えていた時期が私にもありました。


なんなんだあの集団は!?

切り株のモンスター、トレントをけしかければエルフの風魔法に粉々にされるし、幼女のスキルで燃やされる。

かといってトラップに近づいたかと思ったら、人型マスターがなぜかピンポイントでトラップに気づく。

なんで分かるんだ、ダンジョンの攻略本でも持っているとでもいうのかっ!?

そもそも攻略本なんてものがあるかは知らないが…


それにしてもまずい、このままでは一気に攻略される。

奴らは既に私の目の前におり、いつ交戦状態になってもおかしくない。

戦闘になれば負けるのは目に見えているのだ。

それに私には出世するという野望があるのだ、こんなところで死ぬわけにはいかない。

痛い出費になるが、ここは降伏をするべきか…


ええい、降伏を宣言す──


──そう思ったところで、私の意識は途絶えた。



────────────────────────


攻略開始から10分、ダンジョンの最深部と思われるボス部屋に到着した直後、パチュルが炎の鉄拳でボス植物を粉々にした。

ボスに搭載されていたコアらしきものも一緒に砕け散っている。

以前、ゴブリンを仕留めていた時にも焦げ跡があったが、幼女にあるまじき火力を有しているな。


主にやっていることは火魔法を纏って殴るだけだが、殴ったら対象が爆発するんだ。

ボス含め、いくら相手がE級のモンスターばかりだったとはいえ、この光景は俺のトラウマになりかねない。

幼女怖いよ母ちゃん……


「どう!? これが公爵家に伝わる固有スキル、魔拳よ! セリルの足手まといにはならないんだからっ」

「うん、すごいね……」


できれば俺に使わないことを切に願う。

ゼリリンは死なないが、痛くないわけじゃないのだ。


そうしてパチュルがはしゃぐのを宥めていると、頭の中にまたアナウンスが流れてきた。


『<命芽吹く森の迷宮>と<亜空間迷宮>のダンジョンバトルに決着がつきました。勝者<亜空間迷宮>のマスター、ゼリリン。コア破壊報酬として、人族<パチュル>にスキルが付与されます。取得スキル:自然回復』


幼女がまた強化されてしまった。



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