表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
23/164

ゼリリン、勇者になる

この世界に転生し、5年が経った。

つまりゼリリン5歳である、背もちょっとだけ伸びてきてるようだ。

このまま成長すれば、将来はきっとダンディな男に成長するに違いない…

うむ、きっとそうだろう。


ちなみに、3歳の頃に来た冒険者は優秀な人で、俺たち姉弟に丁寧な指導をしてくれた。

剣術や魔法はもちろん、簡易的な魔道具の作り方や読み書きまで、様々な事を学べたのだ。

家庭教師としてそこまでのお願いはしていなかったのだが、子供好きな人のようである。


迷宮の方も順調で、毎日キノッピを育てては食べ育てては食べを繰り返した結果、5歳児にしてはありえないスペックを手に入れた。

わんわんが一緒ならば、今ならあのA級冒険者に純粋な力で対抗できるかもしれない。

対抗できるだけで倒すのは無理だけど。

おおよそ実力的には、C級の中位に差し掛かった頃だろう。


迷宮で育てたキノッピは、修行が始まってからはずっと自分の成長のために食べ続けていたので、お金には替えていない。

既に30日もの期間、キノコ1つ金貨1枚の取引をしていたことで、俺の財産は金貨30枚ほどにまで膨れ上がっていたのだ。

日本円にすると300万円である、これでおやつを買うのにはもう困らないだろう。

お金が必要になればまた商売すればいいし、これ以上荒稼ぎすることもないだろうという結論に達した。


…そして2年後の今日、B級冒険者である忍者さんが「そろそろランクでも上げてくるか」と言って、朝方くらいに家を出ていった。

父ちゃんと母ちゃんには既に話をつけていたようだが、本当に気ままな師匠だ。

まあだからこそ、子供3人の面倒もみてくれたんだろうけどな。


忍者さんの指導により、8歳になったレナ姉ちゃんなど、いくつかの補助魔法や高速剣技を使いこなすアサシンになりつつある。

俺が魔力の循環を教えたせいもあるだろうけど、人間にしては異常な成長速度だ。

これが天才という奴か…


7歳になったルー兄ちゃんは、忍者の師匠と魔法専門の家庭教師のおかげで詠唱魔法の初歩を完全にマスターしたようだ。

いままでずっと引きこもって力を蓄えてきた反動なのか、先月くらいに急に「そろそろ世界を見てみたい」とか言いだし始めた。

いや、外の世界を見るのにそこまでの決意が必要なのかという話ではあるが、ルー兄ちゃんは慎重なのである。

おそらく今日中には家から飛び出すであろう。


最後にDPダンジョンポイントだが、それに関してはもう[5000]DPほど稼げている。

いくら狩っても絶滅しない謎の種族であるゴブリンを主なDP収入源としていたが、そろそろ貯蓄速度に限界を感じてきた。

昼ごはんを食べ終わったら、新しい迷宮を購入してみようと思う。


「ふー、ごちそうさまでした。それじゃ、森にいってくる!」


今日も今日とていつもの森だ、あの森には魔物がいないので気楽にいけるのがいいな。


するとやはりと言うべきか、ルー兄ちゃんも話に乗って来た。


「…僕も、今日は外に出てみるよ父さん」

「ふむ、ついにルーの心の準備が整ったか。よし、晩御飯までたくさん遊んでこい!」

「あらあら、ふふふ……」


ぜひともセミの抜け殻を見つけてきてほしいものである。

がんばってくれルー兄ちゃん、俺は迷宮制作で忙しいけど世界のどっかで応援してるぜ。



…そして、いつもの亜空間迷宮へとやってきた。

さっそく購入するダンジョンを決めてしまおう。



【亜空間迷宮、DPダンジョンポイント:5022】


【購入一覧】

└ダンジョンガチャ(DP:5000突破報酬):[1000]DP

└土のダンジョン作成:[300]DP

└塔のダンジョン作成:[10000]DP

└石のダンジョン作成:[500]DP

└etc…


なぜか新しくダンジョンガチャなるものが追加されていた。

[5000]DPを突破したことによる報酬らしいが、これいかに。


しかし今のところ特に何を作成したいわけでもないし、このガチャとやらを回してみるのものいいかもしれない。

ランダムで塔のダンジョンとかが当たれば嬉しいしな。


「それじゃ、ダンジョンガチャを購入っと。…うおっ!?…半透明のコアだと?」


半透明のガラスみたいなコアが出てきた。

なんかレアっぽいのを引いたのかもしれない、ちょっとわくわくするな。


「まあ外の様子はコアに手をかざせば分かるか、レアかどうかはそれで決めればいい」


そして手をかざし調べてみると、そこには教会にあるような祭壇があり、数多の信者らしき人たちがお祈りを捧げていた。

なんだなんだ、いったいどういうことだ。


まあでも、最初の時みたいに魔物が居座っているよりはマシか。

考えていてもしかたないし、ちょっと行ってみようかな。

ゼリリン、いざ新天地へっ!


「とうっ!……ゼリリン参上!…あれ?」

「…だ、誰っ!?まさか、魔王の敵襲!?セイクリッドブレイカー!!」

「ぬわああああっ!?」


祭壇の上に着地したと思ったら、いきなり修道女みたいな女の子から光の魔法攻撃を浴びせられた。

いまもその魔法のビームが俺を直撃し続けている…

いったいゼリリンが何をしたっていうんだ、まだ5歳なのに!


でもこの魔法攻撃、ちょとひりひりするけどあまりダメージはない。

さすがゼリリン、魔法に対しては無敵の耐性を持っているようだ。


「…そ、そんな。私の光魔法が全く効いていない?まさか、あなたは光の勇者さま!?」

「…ぬあ?」


魔法耐性のことを考えていたら、ビームが終わっていた。

うむ、上着はふっとんだが体は無傷のようだ。

…帰ったら母ちゃんに怒られそうだな。


あと、勇者とかなんとかいってるけどそれは勘違いだ。

種族でも魔王ってはっきり出てるし、敵襲ではないけど魔王で正解だよ。


「おぉおおおお、光の勇者様が降臨なされた!」

「やったわっ!ついに聖女様が儀式に成功なされたんだわ!」

「あぁ…神よ、感謝致します…」


…いやいや、違うって!

どこからどうみても、ただの5歳じゃないか。


「あの、僕は勇者じゃないよ?」

「ふふっ、ご謙遜を。その証拠に、過去の勇者様が魔王城から持ち帰ったと言われている透明な宝玉、『だんじょんこあ』から出てきたんですもの…魔王でないなら、勇者様以外にありえません」


透明な宝玉ってそれ、さっきのコアじゃないか。


まさかこれ、他のダンジョンマスターを過去の勇者が討伐し、その魔王城ダンジョンのコアを持ち帰ってきたとかいうやつなんじゃなかろうか。

そして俺がガチャでコアの新しい持ち主になり、今に至ると…


…なるほど、さっぱりわからない。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ