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ゼリリン、無双する


パチュルママに英雄認定された俺は、コロッセオの特等席で幼女にだっこされながら試合を見学していた。


どうやら先に始まるのは大人の部らしく、子供の部は最後のオマケとして開かれるらしい。

ちなみに、主催者の一人であるパチュルパパなんかは順調に勝ち進んでいて、並の貴族では相手にもならないようだ。

さすが最上位の貴族、選んだ冒険者も相当な手練れだな。


「よく見ておきなさいよセリル、あれがパパの選んだA級冒険者の戦い方よ。子供の部で優勝したら、エキシビジョンマッチとして大人の部の優勝者と戦闘になるから、いまのうちに勝ち進みそうなやつには注意を払っておくの」

「えぇっ? 大人の人とも戦うの?」


それまじか、さすがにA級冒険者相手に勝ち目なんてないぞ。

というかこのお嬢さんは、エキシビジョンに勝つ前提で話を進めているみたいだけど、そもそもまだ子供の部で優勝もしてないんだが……


「ふふ、パチュルはやる気満々ね。確か『私が選んだ奴が勝ったら、冒険者になるのを認めて』だったわね」

「そうよ! セリルは絶対に負けないわっ! ……ふふん」


なんて自信なんだ、この物凄いプラス思考は俺も見習いたいものだな。

いまもつるぺたな胸を張ってドヤ顔を決めている。


でも期待されるのは悪くない気分だし、ちっちゃな英雄として出来る限りのことはやってみよう。

これでもゼリリンは魔王種なのだ。


そしてパチュルの言う通りに、勝つための戦略をあれこれ考えていると、後ろの席から知らない少年が声をかけてきた。

こちらの公爵家と同じく、かなりの数の護衛が一緒なので、向こうも高位の貴族といったところだろうか。

少年の年齢は10歳前後ぐらいかな……?

まあ俺はエキシビジョンの分析で忙しいので、会話に混ざる余裕はない。

…集中だ、集中。


「やぁパチュル、試合に出場するパートナーは決まったのかい? 確か前に、最強の魔法使いを見つけたとか言っていたみたいだけど…… まさか、そのチビっこがそうかい?」

「その通りよ。私がだっこしているこいつがその魔法使い、セリルなんだから! あんたの選んだジュニア級なんて一瞬で片づけてあげるわよ。セリルもなんとかいってやりなさいっ」

「…………」


後ろで何か議論が始まったようだが、正直耳には入ってこない。

そんなことより、今会場の選手が使ったあの魔剣みたいなものが気になる…

あんなものまでこの世界にはあるのか、剣が放電するなんて強そうだ。



「ハハハッ! それはいくらなんでも冗談がキツいよ、……クククッ。そのチビっこも怖がって何もしゃべらないみたいじゃないか」

「ち、違うわ! これはきっと集中してるのよ、……たぶん」

「まぁ、なんでもいいさ。同じ公爵家として恥のないような試合を頼むよ。ハハハハッ!」

「……く、くぅううう! ばかセリルっ!」


あだっ!?

なんだ、敵襲か!?


「なに今気づいたみたいな顔してるのよ、もう!」

「ぬわーっ」


なぜか後ろの幼女がほっぺたをむにむにしてきた。

…さっきからいったい何だというのだ、わからん。


ちなみにその後は勝ち進んでいたパチュルパパ、ジェリー公爵の優勝で大人の部は幕を閉じた。

ふむふむ、公爵の選んだ選手はあの魔剣使いを下したらしいな、さすがだ。

かなり戦い方も勉強になったし、特等席で試合を見させてくれたパチュルには感謝だ。

お礼と言ってはなんだが、こっちも出来る限りの貢献をしてあげよう。


さて、子供の部トーナメントのはじまりだ!



子供の部が始まり選手控室に移動してきたわけだが、なかなかどうして、みんな装備が立派だ。

俺もなんか召喚しておこうかな、手ぶらで来たからめっちゃ存在が浮いてるんだが…


「いまあんたが何考えてるのか分かるわ。でも気にしないでいいわよ、どうせ勝つのは私たちなんだから!」

「うん、確かにそうだね。別に武器を見せなきゃいけないルールもないし、気にしない事にするよ」

「そうよ、幼児が参加しちゃいけないなんてルールは無いもの!」

「「……えっ?」」


……お互い違うことを考えていたようだ。


それからしばらくして、俺達の出番がやってきた。

1回戦の相手は中学生くらいの槍を持った少年で、なかなか鍛え上げられた体をしている。

この世界は14歳で一応の成人であることを考えると、出場年齢ギリギリといったところかな。

俺も気合いを入れるとしよう。


さあ審判さん、いつでも合図をどうぞ!


「おい審判! ここに幼児が紛れ込んでるぞ! あぶないだろっ」

「いや、その子は正式に手続きを踏んだ公爵家の選手だよ。君もそろそろ構えなさい、試合を始める」


そうだぞ、これでも公爵家の子供の部代表だ。


「……それでは、試合開始!」

「えっ、いや。 ……あれ?」


ふむ、相手の選手は混乱しているようだ、これは絶好のチャンス。


魔法を使ってもいいがまずは魔力循環からの身体強化で接近戦だ、キノッピを食べる前までは大人の男性レベルの能力だったけど、今の俺がどこまで通用するのか確かめてみよう。

くらえ、ゼリリンパンチ!


「ちょっ、なんだこいつ、速っ! ……ぐはああ!」


クリーンヒットした。

よし、かなり効いている、このまま最後まで決めに行こう。

パンチパンチパンチ!


「ガハッ! ちょ、ちょ…… 強い……」


……ドサリ。


ふぅ、倒したようだ。

なかなか手ごわい相手だったぜ少年、またいい試合をしような。


「勝者、リジューン王国公爵家長女、パチュル・ジェリー!!」

「「「うおおおぉぉ!? あのチビっこすげー!」」」

「ふん、当然よ!この私が選んだ選手なんだから!」


会場も盛り上がったようだ。

パチュルもご満悦なようなので、これで理不尽に叩かれることもあるまい。


さて、無事に一回戦も突破したし控室でジュースでも飲んでおこうかな。


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