ゼリリン、イメージを大事にしていた
投稿遅れてすみませんっ!
今日からまた復帰します!
「グルォオンッ!!」
「うむ。あいかわらずいい毛並みだ」
テイムの実験のために、わんわんを召喚した。
正直迷宮スキルの力で仲間になったわんわんにテイムが効くのかどうか分からないし、もしかしたら迷宮スキルと魔法陣の力が相殺されて、元の野生魔物になってしまうかもしれないが、俺は全く心配していない。
なにせ俺とわんわんは常に一心同体で4年間も一緒にいた相棒であり、お互いを信頼しあっているからである。
だから、たぶんだいじょうぶ。
「という事で、いまから再テイムをはじめる」
「うわわわわわわっ!? 魔物がっ!? なんか強そうな魔物が現れたっ!?」
「おちつくのじゃニィル、こやつはこの魔王の配下である……えーと、確か【わんわんバス】じゃ。危害は加えん」
ちがうぞ。
わんわんバスではなく、わんわんだ。
バスとしても頼りになるが、名前ではない。
というかいつの間に起きたんだロリ魔女。
それに見た目は怖いけど、こいつ悪いやつではない。
ニィルさんが驚いたことに逆にビックリして、毛を逆立ててしまうくらいの小心者なところもある、かわいい奴だ。
「よしよし」
「ほら、おとなしいもんじゃろう?」
「そんな事言っても、怖いものは怖いんですぅっ!!」
やれやれ、こんなに可愛いのにニィルさんは見る目がないな。
でも俺の従魔が怖いなんて噂になってしまえば、ゼリリンにネガティブなイメージを持たれてしまうかもしれない。
それはホワイト企業を目指すゼリリンとしては見過ごせない事なので、あとでお手とかお座りなどを仕込んでおくのもいいかな。
心に留めておこう。
「とにかく、再テイムだ」
そして先ほど得た知識を基に、地面に魔法陣を書き始めた。
そこには光り輝く複雑な陣形が描かれていくが、正直なところ描くのははじめてなので上手くいくかはわからない。
知識と実践はまた違うからね。
「よし、できた」
出来上がった魔法陣の光は、自然にわんわんへと吸収されていく。
「す、すごい……。こんな完璧な魔法陣、見たことない……」
「なんじゃチビっ子、お主魔法陣学の知識もあったのかのう? 人は見かけによらんの」
「ふむ」
どうやら完璧だったらしい。
さすが攻略本さんが授けてくれた知識だ。
だが見た目はさっきのわんわんと変わらないし、失敗したのかな?
「失敗したかもしれない」
「クゥン……」
わんわんも困惑している。
だいたいのニュアンスは伝わるが、やはり失敗だな。
意思疎通がやる前とやった後でまったく変わらないし。
おそらく魔法陣の影響力よりも、亜空間迷宮での支配力の方が強いということなのだろう。
「ま、いいか」
「えっ!? そ、そんなはずは……。いまのは完全に成功していたはずですよっ!」
「まー、ワシとしてもダンジョンコアからの上書きは無理だと思っておったわい。とりあえずはこんなもんじゃろう」
「えっ、ダンジョン……? コア……?」
まあ成果は出たし、焦ることはない。
またなんらかしらの改良を施して、明日からコアと魔法陣が反発しないように調整すればいいだけだ。
とりあえず今日はここらへんで解散しておこう。
「じゃ、今日は解散ということで」
「世話になったの~」
「いいってことよ」
それから、なぜか口を開けて震えているニィルさんを放置して宿に戻った。
今日はよく働いたので、かなり眠いな。
おやすみ~。
◇
──翌日。
「いま起きた」
「グォオオオンッ!!」
「……ふむ」
目が覚めると、そこには漆黒の毛並みから白と金の毛並みに変化した、【わんわん】が居た。
なぜか神々しいその毛並みからは、信じられないような質と量の魔力が纏われており、以前の面影は全くない。
イメチェンだろうか。
「うーむ」
とても強そうに見える。
すると、イメチェンしたわんわんが何かを訴えてきた。
「グォン」
「なるほど」
「ウォンッ!!」
「なるほどなるほど。でかしたぞ」
どうやら俺の魔力を大量に浴び、進化したらしい。
イメチェンではなかったようだ。
いつものように影に入って就寝していると、なぜか俺から大量の魔力が供給されてきて、気づけば今の姿になっていたとのこと。
いったいどうなっているんだ。
「せやっ! 鑑定してみよう」
攻略本さん、よろしくっ!
【カイザーフェンリル:わんわん】
成長標準:
生命力:A/魔力:S/筋力:A/敏捷:S/対魔力:A
現在値:
生命力:B/魔力:S/筋力:A/敏捷:S/対魔力:A
オリジンスキル:凍てつく魔眼・神獣
スキル:氷魔法(ブレス込み)・闇魔法・電光石火
【神獣】
└テイムの魔法陣を経由し、魔王ゼリリンの魔力を大量に浴びた結果、常軌を逸した進化を果たした。亜空間迷宮のコアが無事ならば、死んでもしばらくすると生き返る。
「ゼリラァァアアアアッ!?」
「グォオオオオンッ!?」
ば、ばかな……。
わんわんが不死身になってしまった。
勝手に進化するとは何事だ。
「でもカッコいいし、まったく問題ないかな」
能力も生命力と筋力が急上昇しているし、まさしく進化といえるだろう。
まさか失敗したテイムの魔法陣が、実は成功しているとは思わなかったけどね。
きっとコアといい感じに干渉しあって、別の効果をもたらしたのだろう。
「それに今の状態をニィルさんに見せれば、昨日のイメージの払拭になるだろうし、一石二鳥かもしれない」
これは運が向いてきたぞ。
「それじゃ、ちょっくら散歩しようか」
「ウォンッ!」
そうして俺は、わんわんの背に飛び乗り学校を目指したのだった。
衛兵:(なんだあの魔物はっ!?)




