ゼリリン、まだしりとりが弱い
本日2回目の投稿となります。
興奮しだしたニィルさんが自分の世界に入り込んでしまったので、暇を持てあました俺はルゥルゥとしりとりをしながら待機していた。
しりとりは俺とオーシャルちゃん、リグ、ユニッピ達とだいぶ鍛えたので、次こそ勝てるはずだ。
「それじゃ、キノッピ」
「のじゃー、……うーむ。ヒ魔法なのじゃっ!」
「ジャ、か……。うーむ、ジャンプしたゼリリン。……あっ」
……また負けた。
これでルゥルゥに1勝28敗である。
いや、だがこれはおかしい。
あれだけ修行したゼリリンが負けるはずがない。
ちなみに1勝はルゥルゥがルールを知らない時に、最初に勝ち取った。
「のじゃのじゃのじゃっ! 弱いのぅ」
「誰かの陰謀を感じる」
「負け惜しみはよくないぞチビっ子?」
「ぐぬぅ……」
ま、まあいい。
どうして勝てないのかは謎だが、いつか勝てるようになるだろう。
それまで地道に特訓だ。
それよりも今はニィルさんの魔法陣が重要だし、いつまでも余興に付き合っているほど暇ではない。
俺はこれでも忙しいのである。
それじゃ、意識が戻ってきているか、チラッと確認してみよう、チラッと。
「チラッ」
「……あ、あの、しりとり弱いんですね」
「…………」
…………。
…………。
「ま、まあ、意識が戻ってきたようでなによりかな」
「はい、お恥ずかしいところをお見せしました。……もう大丈夫です」
「うむ。ではさっそく、魔法陣の研究にとりかかろうと思う。ルゥルゥ名誉顧問、前へ」
「のじゃ」
合図をすると、ルゥルゥが俺たちの前で仁王立ちになり魔法陣を描き始めた。
地面になにやら複雑な陣形がかかれているが、おそらくあれがルゥルゥの考えているテイムの魔法陣なのだろう。
もちろん昨日突然話を持ち掛けたので、あまり深いところまでは構想が練れていないのだろうけど、それでもロリ魔女の考えている魔法陣の一端だ。
ニィルさんが本物ならば、なにか思う所があるに違いない。
「ふむ、あれを見てど思う? 率直な感想を」
「……す、すごい、すごいですよロックナー君っ! あの子、私が考えていた魔法陣とはまた違ったアプローチで、独自の観点から法則を編み出していますっ! それに、ところどころ既存の魔法陣学ではありえないほどの効率化が行われているんですよっ!」
「やはりか」
ニィルさんの才能は本物だった。
もしこれで何が何だか分からないようであればどうにもならないが、これは希望が出てきたな。
経験で言えば悠久の時を生きる魔族に分があるだろうけど、テイムの魔法陣というくくりで勝負するのなら、いままでの文献という武器があるニィルさんに軍配があがるのだ。
2人の知識・才能・経験が合わされば、もしかしたらテイムの魔法陣が完成してしまうかもしれない。
「それじゃ、あとは2人で頑張って」
「えぇっ!? ロックナー君はやらないんですかっ!?」
「うむ」
いや、やるもなにも魔法陣の仕組みをしらないからね。
せいぜい疲れた2人をキノッピで癒すことができるくらいだ。
なので俺はそこらへんでダラダラしながら見学することにする。
ニィルさんの連れてきたスライムたちと一緒に応援タイムだ。
「まあ、疲れた時はいつでも言ってほしい。各種キノッピなら常備してるから」
「……はい。えっ、各種キノッピッ!?」
「なんじゃチビっ子、気が利くのう」
任せてほしい。
◇
──その日の夜。
どこからともなく、ボディをゆさゆさと揺さぶられる感覚がする。
それに誰かが呼んでいる気がするが、まあ、きっと気のせいだ。
気のせいだと思えば、きっと気のせいなのだろう。
「……スピー」
「のう、チビっ子」
ふむ。
「……スピー、スピー」
「のうっ!!」
むっ?
「……んぁ? ……スピー」
「…………」
なんだ、やはり気のせ──
「起きんかばかもんっ!! 【メテオストライク】ッ!!」
「ゼリラァァアアアッ!?」
なんだ、敵襲かっ!?
「今何か、とても眩しかった気がする」
「フーッ、フーッ! この魔法を食らって無傷じゃと? ……化け物め」
「はわわわっ!? ルゥルゥちゃん、やりすぎですよぉ!」
「いいのじゃ、こやつはこれくらいやらんと目覚ましにもならん」
周りをよく見てみると、俺を中心にして森にクレーターができていた。
……はて?
いつ森に移動したんだろう。
「まあいいか。で、首尾はどうだった?」
「えぇぇっ!? よくないですよロックナー君っ! 怪我は、怪我はしてないんですかっ!?」
なんだ、よくなかったのか。
まあテイムは特別なスキルみたいだし、魔法陣の研究に時間がかかるのは致し方あるまい。
ここは気長に待とうと思う。
「そうか。まあ、まだ時間はある」
「いや、何を勘違いしているのかしらぬが、魔法陣の方は完成したぞい。それを鑑定ができるお主に確認させるために起こしたのじゃ」
なんだ、完成していたのか。
ならいいんだ。
「そうか。それで、捕まえた魔物はいずこへ」
「うむ、まずはワシのカラースライムから見てみい」
そういってルゥルゥがカラースライムを近づける。
なるほど、以前にもまして艶があるように思える。
きっと飼い主であるルゥルゥに魔力供給を受けているのだろう。
「ふむ。……攻略本オープン」
「あ、またあの本」
【カラースライム:スーパーミラクルルゥルゥ号(主:ルゥルゥ)】
成長標準:
生命力:D/魔力:C/筋力:E/敏捷:E/対魔力:E
現在値:
生命力:D/魔力:C/筋力:E/敏捷:E/対魔力:E
オリジンスキル:なし
スキル:なし
「なるほど」
「どうじゃ?」
「成功している。スキルとオリジンスキルはないけど、魔力が普通のスライムとはケタ違いだ。それと、主がルゥルゥに変更されている」
普通のスライムは魔力Eだし、何倍もの魔力をもつヒールスラタロですらDだ。
カラースライムの状態でCというのは恐るべき数値だろう。
すると、勝利を確信したロリ魔女が怪しげな笑みを浮かべ始めた。
研究の疲れでおかしくなったのだろうか。
「く、くくくく、のじゃのじゃのじゃっ!」
「ついに壊れたか」
「壊れましたね……」
……なむ。
余談だが、完成した魔法陣はカジノ全体に広めるつもりだ。
一人だけズルはよくない。
ゼリリンがしりとりで負けるのは作者の陰謀です。




