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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
7章 ゼリリンの異文化交流編
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ゼリリン、とりあえず寝ながら考えることにした



かくかくしかじかと大災害について説明を受け俺は、あまりの内容にゼリリンシャウトをかましてしまった。

それほど突拍子もない内容だったのだ。


曰く、過去に起きた大災害によって、地上の生命体の半数は死に至り、文明は衰退の一途をたどった。

曰く、空から灼熱の岩が降り注ぎ、広い大地を焼き払った。

曰く、ドラゴンも人も魔族も、みな抵抗することはできなかった。

曰く、この大災害における唯一の対抗手段がダンジョンであり、逃れる術であった。


などなどだ。

あまりにもあんまりな内容なので、驚きを隠せない。

リグなんて口をあけてポカーンとしている。


それに、もしかしなくてもこの大災害の正体は明らかに、……アレだ。

そう、間違いなく隕石だ。


「……ぜ、ぜりっ」

「まあ信用できぬのも無理もない。魔王種とは言え、生まれて間もないお主にとっては想像もつかぬ事よの。上位のダンジョンマスターなら知っている事とはいえ、まだまだ亜空間迷宮は新米ダンジョンなのだ」


王妃さんが納得した表情を見せるが、俺も驚いている。

いつそんな災害が起きるのかは知らないけど、隕石なんかが降り注いできたらひとたまりもないのだ。


これはゼリリン的に由々しき問題だ。

いずれ、なんとかして解決策を見出さなければなるまい。


いずれね。


「ちなみに、この隕石の周期はどのくらいなの?」

「ムッ? なんだお主、この災害の正式名称を知っていたのか」

「なぜか知識としてあった」


本当は前世の知識から推測しただけだけどね。


「知識として存在していた、だと?」

「そこはかとなく」

「…………」

「ぜりっ?」


俺が適当な言い訳で答えると、なぜか王妃さんが思案気に俯いてしまった。

おなかでも痛いのだろうか。


優しくさすってあげよう。


「さすさす」

「何をしている」

「さすってあげている」

「……そうか」

「うむ」


さすさすしてあげると、王妃さんがちょっと驚いた。

痛みが和らいだようなら何よりだ。


「でも、今はまだ隕石についての対抗策とかは思いつかないし、この災害の話はまた今度でいいかな。今回はそんなことより、僕が育ててるユニッピについて聞きたい」

「そんな事、だと?」

「そうだぞ」

「……そうか、そんな事か。……ク、クククッ。確かに、すぐに時が来るわけでもなければ、慌てたところでどうにかなるわけでもない。まさかこんなチビッ子に教えられるとは思わなんだ」


慌ててもいい案は浮かばないし、お腹が痛い時は無理をしない方がいい。

こういうのは寝ているうちにいい案が浮かんだりするものだ。


「さすチビ、お母さまにまで大切な事を伝えるとは。オーシャルとしても鼻が高いです」

「きゅぁあっ」

「そこらへんは任せてほしい」


これでもゼリリンズのリーダーなので、落ち着いて考える方法はマスターしているつもりだ。


「なるほど、これが魔王ゼリリンか。このグータラ娘が妙に自信に溢れている理由も分かる気がするな、不思議と信頼のおける相手だ。……どれ、その子ドラゴンを見せてみよ」

「きゅぁっ」


王妃さんの手招きにより、ユニッピがふわふわと近寄っていく。

ドラゴン族の王妃である彼女がいれば何か分かるかと思っていたが、何の躊躇もなく鑑定に入ったところを見るに、やはり何か分かる事があるのかもしれない。


連れてきてよかった。


「どうだった?」

「ふぅむ、第一印象は不思議なドラゴン、といったところか。見たことのない属性を持っているのはすぐに見てとれるが、それを差し置いても進化の成り立ちがまるで不明だ」

「なるほど」


まあ攻略本の報酬だしね。

進化の成り立ちとか存在していなさそうだ。


「問題はスキル外スキル、種族としての特徴として、魔力さえあれば何もない空間でも生存し続けられるだろうというのが厄介な所かもしれん。もしやこやつ、無の世界から生まれたドラゴンか?」

「ぜりっ!?」


なんと、ユニッピは何もない空間でも自由に生きていけるらしい。

魔力さえあれば生活に困らないなんて、まるでゼリリンみたいなドラゴンだな。


ゼリー細胞みたいな再生機能はついてないみたいだけど、活動範囲が広いだけでもすごい。

もしかしたら宇宙とかまで飛んでいけるんじゃなかろうか。


ギャラクシードラゴンというだけある。


「……ふむ。他にも分かる事はあるかもしれんが、これ以上となると時間が必要かもしれぬ」

「ここまで分かったならもう大丈夫。ありがとう」

「きゅぁ」


こうなったら、帰ったらさっそくユニッピを育てて、すごいドラゴンになるまで特訓だ。

仮にユニッピが宇宙空間にまで飛んでいけるようになるのなら、隕石騒動にもちょっとしたアイディアが産まれる。


俺とユニッピの共同作戦だ。


「それじゃ僕はもう帰るけど、オーシャルちゃんはどうする?」

「私ですか? 私はもちろん、光竜族の誇りにかけてチビッ子族のキノッピを食べ続けますよ」


なるほど。

どうやら今後もボーナスのキノッピに期待しているらしい。


「カッカッカッカッ!! おうおう坊主よ、うちの娘にずいぶんと気に入られてんじゃねぇか。このグータラが自ら神殿を出ていくとは思わなかったぜ。……宜しく頼むぞ?」

「任せてほしい」


まだ在庫は1000個近くあるし、キノッピ畑でも栽培を続けていく予定なので倒産することはないだろう。


「それじゃ、今日はドラゴン族の異文化でも体験しつつ、里でしばらく遊んだら帰るとしようかな」


今日はなかなか有意義な時間だった。




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