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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
7章 ゼリリンの異文化交流編
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ゼリリン、突然光る


俺と2号でコネコネした超巨大ゼリリンボムが炸裂してしまった。

サムライおじさんが喋っている最中だったので、おそらく舌を噛んでしまったに違いない。


やはり戦闘中におしゃべりはよくないと思う。


「カァーーッ!!? 痛ってぇなボウズっ!? 思いっきり舌噛んじまったぞっ!」

「やはり噛んでしまったか」

「凄いです若っ! このスライムの鎧、あれほどの爆発を受けてもビクともしませんよっ! それにあの白竜王もあれほどのダメージをっ!」


うむ。

少しダメージを受ける流れは計算と違ったが、かなり追い詰めることができたようだ。

それにリグに装着させたゼリリンボディの耐久にも問題はないみたいだし、結果は上々と言えよう。


問題があるとすれば、あれほどの爆発を受けてなお、王妃さんとサムライおじさんに余裕があるところかな。

王妃さんなんか涼しい顔をしている。


ここは攻め手を緩めずに追撃した方が良さそうだ。


「リグ、スタミナは考えずに全力で攻めて」

「わかりましたっ! 【飛剣連斬】っ!!」


リグが剣から発した風の刃でけん制し、距離を詰めていく。


正直言って、あの爆発を受けてなんともない王妃さん相手に遠距離攻撃が有効だとは思えないけど、魔法耐性が高い相手には物理攻撃が有効だというゼリリンルールがある。

きっとリグの剣技による純粋な物理ダメージなら通るはずだ。


あとは近接戦闘に強そうなサムライおじさんを俺がひきつけておけば、ゼリリンボディと攻略本の耐久力を持つリグが善戦してくれるはず。


「カァ~、まだ痛ぇぜ。やってくれたなボウ──」

「ゼリリンビームッ!!」

「おわっ!? あぶねぇっ! 油断も隙も無い奴だな」


惜しい。

あとちょっとでゼリリンビームが当たったのに、寸前のところで避けられてしまった。


それにしても凄い速度で避けたな。

目にも止まらないというより、純粋に移動が見えなかった。

瞬間的なスピードだけならタクマ以上かもしれないぞ。


「カカカッ、驚いたか? これがサムライの極意、縮地って技だ。こいつぁその昔、俺の神殿までやってきた勇者から教えてもらった技でな、スキルとしてのカテゴリーに含まれないスキル、ただの技術ってやつだ」

「ぜりっ!?」


なんと、スキルに含まれない純粋な技術だけで、あの驚異的な速度を生み出しているらしい。

そんなことってあるのだろうか。


思い当たる節があるとすれば、レナ姉ちゃんは俺よりも魔力操作が上手なのに、攻略本でみたスキル欄には魔力操作の概念がなかった事だが、こういう事なのだろうか。

もしかしたらスキルだけに頼った戦術以外にも、様々な戦い方があるのかもしれない。


勉強になる。


「さぁて、痛みはまだ引かねぇが、次はこっちの番だ。覚悟はいいな坊主、一瞬でやられてくれるなよ?」

「うむ」


次は向こうから攻めてくるらしい。

こちらからの単純な攻撃は通用しない以上、範囲攻撃か搦手からめてが必要になってくるので、ここはあえて後手に回る事にする。


こちらにはゼリリン2号もいるので、どちらかが狙われればもう片方が攻撃に移れる。

攻撃の最中にはさすがに避けられないだろうし、ノーガードの殴り合いになるだろう。


「ごくり」

「行くぜ、サムライ流奥義、一の型【燕返し】」

「むっ!? ……ぬわぁあああっ!!?」


一瞬、おじさんの手に持つ禍々しい刀が消えたかと思ったら、次の瞬間ボディが切られていた。

やはり攻撃速度が速すぎる、これじゃあ反撃どころじゃないぞ。


「ちぃっ、なんで避けねぇ坊主っ!? 死ぬ気かっ!?」

「あれっ? なんともない」

「……はぁ? ……嘘だろおい」


ただ、あまりに綺麗な切り口だったので、一瞬でゼリー細胞が再生して何事も無く体が塞がってしまった。

うむ、結果オーライだ。


それに俺のボディを深くまでは切り裂けないようだし、もしかしたら刀系の攻撃では永遠にダメージにならないのかもしれない。

まだ威力で押しつぶすタクマの剣技の方が脅威的だ。


「やはりゼリー細胞は無敵だったか」

「んな、ばかなっ!? お前さんどの種族から発展した魔王なんだっ!? この刀で切られて傷が治るなんざ、現象としてありえん」

「ふむ」


なんか特別な刀だったらしい。

まあ呪い系や魔法系の類は全部ゼリー細胞が吸収してしまうので、特に意味はなさないのだろう。

いままでもそうだった。


「僕はスライム系の頂点らしい」

「スライム、……だと?」


最強の種族であるドラゴンにとって、スライムの魔王なんていうのは格下もいいところなのだろう。

口をあんぐり開けて驚いている。


この隙は使えそうだな、不意打ちしよう。


そして、あんぐりと口を開けたおじさんと睨み合いを続けつつ、2号は後ろから忍び寄っていく。

いいぞ、あと少しだ。


……いまだっ!!


『ぜりっ!!』

「うむ」

「なっ!? しまったぁっ!!」


不意打ちが成功した。

2号がおじさんの頭に飛びつき、装着されたようだ。


「チャンスだ2号、スライム形態になっておじさんの頭を包み込め」

『ぜりぜりぜりぜりっ!!』

「ぐぉおおおおっ!? お前っ、ちょっと待て、なんだこゴボゴボゴボボボボ」


スライム状になり頭を包み込むことで、相手を窒息させる作戦だったりする、生物に対する反則的な技だ。

弱点は普通こんな簡単に背後を取れないことだが、今回は向こうが油断しきっていたので成功した。


「これは勝ったな」


また一つ勝利を重ねてしまった。


「ゴボゴボゴボゴボ……、グォオオオオオッ!!!」

「ぜりっ!?」


と思ったら、急におじさんの体が光り出し、どんどん巨大化していく。

オーシャルちゃんがドラゴンになる時と威圧感が似ている感じがする。


まさか、ドラゴンになってしまうのだろうか。

いや、まさかね。


でもドラゴンになったら困るし、いまのうちにとどめをさしておこう。


「ゼリリン2号、自爆だ」

『ゼリラァアアアアアアアアアアアッ!!!』

「グォォオオオオッ!?」


──ピカッ!!


そして、辺りは眩い光に包まれた。

とても眩しい。


「……もう一回分裂しとこ」



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