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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
7章 ゼリリンの異文化交流編
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ゼリリン、謎のサムライに出会う


強敵である門番さんのガードをくぐり抜け、里の内部まで侵入した。

ドラゴン族の里といっても、常にドラゴンの姿で生活している人は少なく、中にはほとんど人間と見分けがつかない人もいるようだ。

おそらくこれは、ドラゴンのままでは集落として暮らす時に不便だからだろうと予測する。


里の中にお店らしいものはないけど、それでも質素な家のようなものや、中央には神殿のようなものまである事から文明はあるみたいだし、生物の頂点なだけあって知能が高いのは間違いない。


「ふむぅ」


それにしても里の中が広いな、迷いそうだ。

オーシャルちゃん達はまだこっちに向かっている途中みたいなので、適当にブラブラしておこう。

この里からでも、遠目に他の白竜と戦闘を繰り広げているのが分かるし、まだ時間がかかるだろうしね。


ま、リグはゼリリン3号が完璧にガードしてるし、ユニッピは戦闘から離れて自分で飛んできている。

安全は確保されているから放っておいても大丈夫だろう。


それにこのまま散歩してたら迷いそうだし、しばらくヒメドラゴンバトルでも見学しておこうかな。


「うーむ、なかなかの激戦だな。しかしオーシャルちゃんにはまだ余裕があるようだ」

「……そうだな。確かに若いモンが相手じゃあ、あのグータラには敵わねえ。あいつに勝つにはそれこそ圧倒的な数か、熟練の老ドラゴン、または同じ王種の力が必要だろうよ」

「ぜりっ?」

「むっ?」


岩場に腰かけてバトルの評価をしたら、隣に知らないおじさんがやってきた。

顔に深いキズもあるし、眼帯もしている渋いおじさんだ。

なんかヤバそうな雰囲気を醸し出している。


腰に刀のようなものを身に着けているところをみると、戦いにも慣れていそうだ。

もしかして俺と同じように異文化交流をしにきた旅人だろうか?


……西洋風の服を着たそこいらの白竜人とは違って、和服を着ているし、きっと旅人に違いない。


「うむ」

「おう」


一瞬だけ視線が合ったけど、また何事もなかったように空を仰ぐ。

おそらく相手も俺が旅人だと分かっているのだろう、なかなか鋭いおじさんだ。


「まあオーシャルちゃんは戦闘の経験が浅いから、基本的に大技を使いたがる傾向にある。そこをうまく利用すれば、あの数なら互角の戦いにもっていけなくもないかな」

「おう、分かってるじゃねぇか。それにしてもおめぇ、まだ生まれて間もねぇチビ白竜にしちゃぁ、なかなか戦いってもんが分かっていやがる。見どころがあるぜ」


そういうおじさんも、なかなかどうして侮れない。

今も空を仰ぎながら肩がピクピク動いているし、きっと自分がヒメドラゴンとバトルしたらどういう戦闘になるのか、想像しながら見学しているんだろう。

これは歴戦の猛者であることは確定だな。


せっかくおっちゃんがイメージトレーニングの方法を間近で披露しているんだし、俺も真似してピクピクしてみようっと。

ぴくぴくっ。


「ぜりぜりっ」

「むっ? ……ぬぅうんっ!」


さらにおじさんの肩の振動が激しくなった、もしかしたらここら辺で大技を出すつもりなのかもしれない。

俺も負けてはいられないな。


「ぜりらぁっ!」

「ぬおおおおぁっ!!」

「ぬわぁぁあああっ!!」


おっちゃんと俺の2人の肩が激しく振動する。

ゼリリンの体は震えるのが得意だからマネできているが、普通の人間であるだろうおじさんがここまで振動出来るとは、驚きだ。


「……ふむ、やるなお前さん」

「ぜりっ!」

「はっはっはっ! そうかそうか、これくれぇ出来て当然って言いてえんだな? ……よし気に入ったっ! お前さん、俺の弟子にならねぇか? 最近の若い白竜には根性がねぇと思っていたが、お前さんは別みたいだ。……名は何と言う?」


なんと、知らないおじさんにスカウトされたらしい。

しかし有難い申し出だが、俺にはゼリリンの戦い方がある。


その誘いには乗れないな。

まあとりあえず名前だけ名乗って、どっか行ってしまおう。


「ゼリリンだぞ」

「ゼリリンだ? この里じゃ聞かねぇ名だなぁ。だが、良い名前だ。俺もここに腰を据えて長いが、白竜王となってからは娘の名前に苦心……」


サムライっぽいおじさんが熱く語っている隙に、そそくさと退席する。

最後の方は聞き取れなかったが、まあもう会う事もないだろう。


あばよサムライのおじさんっ!



そそくさとあの場を離れてしばらく、里の民家を隠れ蓑にしながら神殿近くまでやってきた。

既に上空でのバトルには決着がついたらしいので、ゼリリン3号を通じて神殿で待っていると伝えているところだ。

俺が神殿に辿り着く頃には、向こうも到着するだろう。


……というか、もう到着したみたいだ。

神殿に向けて急降下しているのが見て取れる。


あんな巨体がこの速度で落下したら、凄い音が鳴りそうだな。


──ドォオオンッ!!


「……やっぱり音がすごい」


おまけに土埃も凄い。


「ぷはぁっ! やっと雑魚白竜共を蹴散らし終わりましたよチビッ子っ! さすがのオーシャルもあの数は疲れました」

「貴様ァッ!! もっとゆっくり降りる事はできないのですか!? 若が下に居たらどうするんですっ!?」

「きゅぁぁっ!」

「うむ、おかえりオーシャルちゃん、リグ、ユニッピ」


ちなみに3号からの伝達により、オーシャルちゃんがどこに降りるかは完璧に把握できていたので、押しつぶされることは無い。

万が一つぶされても大したダメージにはならないだろうから、気にはしないかな。


「それではさっそくお父様とお母さまに会いに行きますよっ! 私の功績とチビッ子という証拠があれば、白竜王たるお父様も納得してくれるはずですっ!」

「任せてほしい」


あの功績にどれほどの意味があるかは知らないが、俺は嘘をつかないゼリリンなので、きっと信じてもらえるだろう。


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