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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
6章 ゼリリンの魔王邂逅編
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ゼリリン、臨機応変な生き物だった


傲慢の魔王城の外にある森の、少し開けた所までやってきた。

2人が戦っている場所は不自然に木々が倒された場所で、おそらく決闘用にルチファー君が魔法でなぎ倒したものだと思われる。


「おー、やってるやってる」

「きゅっ!」


2人共大暴れしてるようだ。


「くっ、いい加減倒れろっ!! 貴様本当に人間かっ!?」

「オラオラオラァッ!! そんなもんかよ魔王種っ!! 遠くからクソ遅ぇビームかましてるだけじゃ俺は止められねぇぞっ!! セリルの魔法に比べたら蚊に刺されたみてぇなもんだ」

「言わせておけばっ!! 【傲慢の波動プライデオーラ】」

「【勇者流剣技改・絶剣】」

「魔力を剣で殺しただってぇっ!? 意味が分からないぞコイツッ」


どうやら、現状はタクマが優勢らしい。


一応ダメージの量はタクマの方が多く蓄積しているようだが、それは戦局に大きく作用しないレベル。

それに比べて、ルチファー君はタクマに接近されきったら負ける以上、ずっと魔法を放出しておかなければならない。


であるならば、距離が開いている間にどれだけダメージを蓄積できるかにかかっているのだが、先ほども言ったとおりこの程度のダメージではどうにもならないのだ。

このままだとルチファー君の近接モードと、多少ダメージの負った最強勇者の殴り合いになるだろうけど、その結果は火を見るよりも明らかである。


こりゃあ勝負がついたかな。


ちなみに詳しい解説をすると、ルチファー君が距離を取り魔法で狙撃しようとしたところを、タクマが意味の分からない速度で詰め寄り、魔法を通さない剣術で妨害していると言ったところだ。

前は魔法を弾くなんてできなかったはずだけど、どこでそんな剣術身に着けたんだ。


まさかゼリリンボード対策じゃないだろうな。

相棒は闘技大会の決勝で、上空からのゼリリンビームに打つ手がなくて負けたし、ありうる。

よし決めた、ゼリリンはもうタクマとは戦わない。


そんな事を考えながらキノッピをおやつに見学していると、ついにタクマがルチファー君に辿り着いてしまった。

さて、どうなる。


「もらったぞ魔王種ッ!!」

「うわっ!? ちょ、ちょタンマッ!! 負け負けっ!! 僕の負けでいいからタンマッ!!」

「……チッ、もう少しで真っ二つに出来たんだがな。根性ねぇぞお前」

「ぜぇーっ、ぜぇーっ!! なんなんだこの化け物はっ」


ふむ、どうやらタクマが勝ったらしい。

だがおかしいな、追い詰めていたはずのタクマの手はぷるぷる震えているし、そんなにギリギリで勝ったようには見えなかったんだけどな。

嬉々としてトドメを刺そうとした時と比べて、今の相棒の表情には余裕がない。


「それにしてもやっぱ魔王種は強ぇな、ギリギリだったぜ」

「ん? いやいや、今回は君の勝ちだと思うけど? いくら僕が本来の装備をしていないとはいっても、僕がここまで追い詰められたのはセリル君と君だけさ」

「そうじゃねぇ、俺の魔力量をよく観察してみろ」


言われてタクマの魔力を感じ取ってみる。

……ああ、そういう事か。


「んん? あれ、なんだか魔力残量が僅かしかないね、これではあとちょっとしか身体強化できないんじゃないかい?」

「当り前だろ、魔法を相殺する剣技を何の代償も無しで使える訳がねぇ。お前の魔法を殺すためには、こちらも相応の魔力を持っていかれてたって事だ」

「はぁっ!? それじゃさっきの、もらったぞ魔王種ってハッタリじゃないかっ!! ズルいぞ人間っ!!」


うむ、ズルい。

まるでルチファー君を追い詰めたみたいな感じだったけど、実際に追い詰められていたのはタクマだったという訳だ。


言葉や表情で相手に偽の情報を掴ませるとは、悪魔より悪魔みたいな奴だな。


「クハハハハッ!! 騙されたお前が悪いんだ、俺はこのまま勝ち逃げさせてもらうぜ」

「おのれ人間、……いや、悪魔め」

「クククッ、魔王種にだけは言われたくないな」


騙し打ちで決闘に勝ち、上機嫌になったらしい。

漆黒に染められた二本の剣を背中に刺して、軽い足取りでこちらへ向かってくる。


「おつかれ、キノッピ食べる? あと絶剣すごいね、ビビった」

「チッ、見られてたか。アレはお前用のハッタリ剣技だったんだがな」


まあ絶剣の弱点を知ったのデカい。

さっきもう戦わないとか言ったが、勝機が出たのでやっぱ戦ってもいいかなって思い始めた。


ゼリリンは臨機応変な生き物なのである。



傲慢の魔王城でやる事をだいたい終えたので、さっそく王都の学校へと帰ることにした。

友達も募集したし、レヴィアさんとも実際に友達になった。

それにルチファー君との交流もうまくいったし、万々歳である。


あとは王都の宿で気絶しているオーシャルちゃんを起こして、光竜族の里に行く予定を聞きだすだけだね。

簡単なお仕事だ。


余談だが、ユニッピの成長のためにもオーシャルちゃんの里には一緒に連れて行こうと思っている。

同じ竜族だし、何か成長のヒントがあるかもしれない。


「それじゃ、今日は色々と楽しかったよ」

「ああ、僕もセリル君を招待してよかったよ。あの悪魔みたいな奴のおかげで、いい暇つぶしになったしね」

「うむ」


すっかり相棒は悪魔に悪魔認定されているようだ。

一応魔族の代表やってる勇者だし、ある意味箔がついたね。


「おいセリルお前、いま箔がついたとか思っただろ。殴るぞ」

「おもってないよ」

「…………」

「ぜりっ(笑)」

「その笑いが果てしなくウソくせぇ……」


ウソだから仕方ないね。

それじゃ、帰るとしよう。


ばいばーい。



ゼリ語:臨機応変

日本語:熱い手のひら返し


次回から新章突入します。

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