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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
6章 ゼリリンの魔王邂逅編
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ゼリリン、暇だからしりとりを始める

新連載小説はじめました、【伝説好きの異世界観光記】

http://ncode.syosetu.com/n6995eb/


神王長さんを探しに教会の裏手まで回ると、吹っ飛んでいったままの格好で気絶していた。

ヒメドラゴンのパワーはやはりあなどれない。


「……もぐもぐ、やはりたわいないです。それにしても長を倒して食べるキノッピは美味しいですね」

「ふむ」


さらっとえげつない事を言っているが、本人にとってはこれが普通なのだろう。

ドラゴン社会はさつばつとしている。


決闘で勝ったからオーシャルちゃんも神王協会のメンバーになれると思うのだが、こんなさつばつとしたドラゴンさんで大丈夫なのだろうか。

心配しかない。


とりあえず神王長さんを起こそう。


「もしもし」


ゆさゆさ。


「……起きない」

「当然です。ドラゴン族に伝わる秘術で仕留めたのですから、しばらくは起きませんよ。……ククッ」

「……ぜりぃ」


ヒメドラゴンパンチにそこまでの技術が秘められていたとは驚きだ。

というかなんでそんなパンチで仕留めるんだ、オーシャルちゃんはやばい。


間違いなくやばい。


だがここで待ちぼうけしていてもしょうがないので、エリクサーを一本使って癒してあげる事にする。


「だばだばだば」

「ああっ!? 何をするんですか!? せっかく見事に仕留めたのに!!」

「敗者にはねぎらいを」

「……なるほど、優しいですねチビッ子は。深い」


うむ。

オーシャルちゃんに決闘関連のことで何を言っても無駄なので、それっぽい事を言ってごまかしておいた。


実際は神王長さんが起きないと話が進まないから起こすだけなんだけどね。


「ん、んぅ……」

「起きたか」

「はっ!? 私はいったい?」

「オーシャルちゃんとの決闘に負けて、気絶してたよ」

「……決、闘? ……あわ、あわわわっ」


気絶から目が覚めた彼女はあたりをキョロキョロと見渡すと、ヒメドラゴンさんを発見し、まるで見てはいけないものを見てしまったかのように震えだしてしまった。

まあ白竜の王種なんていったら成体なら魔王級だし、そんな怪獣みたいな生物と一騎打ちしたんだから無理はないかな。


「あわっわわわ、あなた様はっ!?」

「いかにも、私がオーシャルです」

「おちつくんだ、オーシャルちゃんは敵ではない。ちょっと頭がおかしいだけだ」

「あなた様こそっ、我が神王協会が信仰してきた白竜王様なのですねっ!? その白く輝く尻尾に人間の姿を模しても隠しきれない角のご立派さ、そして実力。まさかとは思いましたが、本当にご降臨なされていたとは!!」

「ぜり?」


あれっ、なんか雲行きが怪しくなってきたぞ。

門番さんや冒険者さんは脅威に感じてたのに、神王協会では扱いが違うのだろうか?


俺はゼリリン教、もといゼリリンズのゼリリンなので、他の集団の事には詳しくないのだ。


ちなみにゼリリンズのメンバーはレナ姉ちゃんを筆頭に、タクマやユニッピ、リグやわんわん、パチュルなど他にも沢山いる。

最近勢いを増しているから入団がオススメだ。


「私達はずっとお待ちしておりました、あなた様がご降臨なされるのをっ!! 白き炎で悪しき吸血鬼を葬る、あなた様の登場をっ!!」

「いかにも。私は長を倒し、この地の新たなる長として治めるためにやってきました」

「おおっ!!」


二人の間で決定的に話がズレている。

オーシャルちゃんが勝手に話を進めてしまったばかりに、新たな救世主の誕生みたいな流れになってしまった。


どうしよう。


そもそも俺が対応すればこんな事には絶対にならないし、ゼリリンが勘違いするはずもない。

こういう交渉は任せてくれたほうが話がスムーズに進むのに、難儀な事だ。


まあここで割り込むのもめんどくさいので、適当にユニッピとしりとりでもしながら聞き流しておこう。

まずはすき焼きからだ。


「すきやき」

「きゅあぁ」


きゅあぁ、か。

なかなか手ごわい。


「では、白竜王様は我々と共に戦ってくださるのですねっ!」

「いえ、それはできません」

「そんなっ!?」


だが、きゅあぁは手ごわい、手ごわすぎる。

なにかあるだろうか?


せやっ!


「むぅ、じゃあ、ゼリリンッ!! あっ!」

「きゅあぁぁっ!!」


……負けた。

どうやら俺はしりとりが弱いらしい。

いや、ユニッピの誘導が強いのかもしれない。


さて、話はどれくらい進んだかな。


「私はそこにいるチビッ子に雇われ、もとい召喚されたた身の上。長時間ここに滞在する事はできないのです」

「こ、この方が白竜王様を召喚……?」

「そうです。なので私から言えることは一つだけ、吸血鬼の城にいる女王に対話を持ちかけ、力を貸してもらいなさい。そうでなければ、話になりません」

「そんなっ! 他ならぬ奴らの王に助力を願えとっ!?」


ふむ。

いろいろと話がズレているが、ようするにオーシャルちゃんが言いたい事は、自分と再戦したいのであれば実力不足だから魔王に鍛えてもらえって事なのだろう。


なぜか話がズレすぎて、逆にいい方向に転がってきた。

このままいけば和平までいけそうだな。


「そうです、私に勝てない程度のプライドなど捨てなさい。これは新たな長となった私からの最初の指示だと思ってもらって結構です」

「……吸血鬼との和平、ですか。今までの私には思いつきもしないアイディアでした、なんと盲目だったのでしょう。白竜王様が協力関係を結べという事は、向こう側にも既に話がついているはず。……ご慧眼、感服いたしました」


なんか俺の知らない間に話がまとまってしまった。

まあでも、これならこれでアリかな。


神王長さんはかなりの権力があるみたいだし、白竜王パワーが上乗せされればやってやれないこともないだろう。

白竜自体はさっきこの町で姿を現したし、実際に現れた証拠にもなる。


これで一件略着だ。

一旦赤ワインさんのところに帰って報告しておこっと。






ゼリリンが勘違いするはずもない。


そんなわけがない。

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