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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
6章 ゼリリンの魔王邂逅編
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ゼリリン、神王長と出会う


厳しめの門番さんの審査を潜り抜けた後、適当にぶらぶらしながら神王協会と思われる教会までやってきた。

途中で攻略本さんを開きながら辺りを捜索したところ、町の中にちらほらと特殊なスキルを覚えた人がいたので、おそらくその人たちがヴァンパイアハンターさんなのではないかと疑っているが、真相はまだ謎だ。


スキルは主に、血流魔法への耐性系やヴァンパイア系に有効そうな装備が大半なので、まず間違いないと思うんだけどね。


まあとりあえず入団試験をクリアしないことには始まらないので、さくっと受けてみる事にする。


「という訳で、入団試験を受けに来たゼリリンだよ」

「……なんだこの子供は? どこかの貴族か?」

「うむ、貴族ではある。そして今日は試験を受けにきた」

「…………」


目の前には教会には似つかわしくないゴテゴテの鎧を着た騎士がおり、厳しい目でこちらを見つめている。

人間側にとっては、ヴァンパイアハンターさんこそが国家の防衛ラインみたいなものだろうし、わからなくもないんだけどね。

おそらくこの人もハンターさんの一員みたいな感じなのだろう。


「……はぁ、子供のお遊びなら他所でやれ。いくら貴族と言えど、我々の職務を妨害すればどうなるかは分かっているだろう?」

「なるほど」


どうやら俺の背が低いばかりに、子供の冗談だと思われて取り合ってくれないらしい。

はやく大人になりたいものだ。


だがここで引き下がる訳にもいかないし、奥の手を使わせてもらうとしよう。


「僕は神王協会に入団希望のフリーのヴァンパイアハンターだよ。さっきだって吸血王の城の最深部まで潜り込んできたんだ」

「何をバカな事をっ!! 吸血王の姿すら見た者は極わずかだというのに、貴様が最深部まで潜り込んだだと? ……あまり我々を愚弄するなよ」


うむ、ここまでは予想通りだ。

ここで重要なのは吸血王の姿を見た者が極わずかであり、おそらく教会内部の重要機密として情報が保管されているというところである。

そして仮にそうであるならば、城の構造や赤ワインさんの容姿などを伝えれば、信じてもらえるだろう。


かんぺきなすいりだ。


「本当だよ。その証拠に、ここに吸血城のマップが記載された本があるし、僕は実際に赤い服を着た金髪美女さんをこの目で見てきた」

「……なに?」


記載された本というよりは、攻略本さんでスキャンしたマップをそのまま見せているだけなんだけどね。

めちゃくちゃ詳細に描きこまれているので、この騎士さんからすればオーパーツか何かだと勘違いすることだろう。


どうみても攻略本さんのスペックは魔導書ってレベルではない。


「……こ、これはっ!? 貴様この本をどこで!? それをこちらに渡せ!!」

「おっと、あぶないあぶない。残念ながらこれは個人の所有物だからね、簡単には渡せないよ」

「貴様ァァアアアッ!!」


マップのクオリティに驚愕した騎士さんが本を奪おうと襲い掛かってくるが、すべてゼリリンステップでよける。

人の物を奪うのは良くないんだぞ。


「くっ! ちょこまかとっ!?」

「ぜりぜりぜり(笑)」


執念深く奪い取ろうとしてくるが、ゼリリンステップは無敵だ。

この人程度の力量では、俺に手がかする事もないだろう。


「チビッ子と人間が楽しそうにしてますよユニッピ」

「きゅあぁあ」

「そうですね、オーシャルも眠いです。私たちも追いかけっこしますか? ……え、私とでは嫌ですか? そうですか」


そして俺と騎士さんの攻防を暇そうにみつめるオーシャルちゃんとユニッピをよそに、しばらくよけ続けているとだんだん向こうが疲れを見せ始めてきた。

うーむ、やはりあの鎧が重いのかもしれないな。


追いかけっこには不向きだ。


「お、おのれ、この私がここまで侮辱されたのは初めてだ。……かくなる上は」

「ぜりっ?」


騎士さんが急に真顔になると、腰に提げていた剣を抜き放った。

本を手に入れるために剣を抜くなんて、やりすぎではなかろうか。


「うーむ」

「高位のヴァンパイアハンターたる私の職務を妨害するとは良い度胸だ、他国の貴族よ。……覚悟しろっ!!」

「あぁっ!」


そうか分かったぞ、これはもう既に入団試験が始まっているのだ。

だからこそ彼はここまで必死に俺を追い詰めようとしていたのだろう。


まさか合図無しの試験だったなんて、さすがここら一帯の国を守るヴァンパイアハンターの試験だ。

一筋縄ではいかない。


まあそれならそれで、俺も少し力を見せるだけだ。

あの重装備ならゼリリンパンチの一発くらいは耐えられるだろうし、受けて立とう。


膨大な魔力にものを言わせ、身体強化を最大出力まで上げていく。

さあ、かかってくるがいい。


「くらぇえぃっ!!」

「……そこまでっ!!!」


──ギィイインッ!!


「ぜりっ?」


剣を避けてゼリリンパンチのカウンターをお見舞いしようとしたら、別の女騎士さんが割って入ってきた。

騎士さんと違って白を基調とした軽装備みたいだけど、なんか虹色に輝く剣を使っていてかっこいいぞ。


「なっ!? アリア神王長!! なぜ止めるのです!」

「……分からないのですか?」

「分かりませぬ!! いま我々ヴァンパイアハンターに楯突いた横暴な貴族を成敗し、吸血城攻略の鍵となる神具を入手しようとしていたのですぞ!」

「…………」

「いくら神王長殿が子供に優しいとはいえ、これは明らかなる重罪でケペッ!?」

「少し黙りなさい」


おお、猛抗議する騎士さんを顎を殴って気絶させた。

すごい技術だな。



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