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ゼリリン、軍資金を手に入れる

様々な雑貨や魔道具、瓶に入れられたポーションが散らばる古風な店内の中、凍り付いたかの様に固まって動かない大男がいる。

そう、この道具屋の店主だ。


「ボ、ボウズ! これ本物のキノッピじゃねぇか!」

「うん、本物だよ」


偽物を出すと思っていたようだが、残念ながら攻略本に載っていた本物のキノッピだ。

繁殖したときに鑑定したから間違いない。


「しかもこの色、艶、大きさ、どれをとっても超一流のキノッピだ。これほどのキノッピを一体どこで……」

「それは企業秘密だよ。とりあえず3つ出したんだし、これで交渉は成立だよね?あの子の要求していたポーションを宜しくお願い」


俺がそう言うと、さっきまで俯きがちだった女の子の顔が明るくなり、お礼を言ってきた。


「フ、フン! キノッピなんて、私はいつも家で食べてるんだから! でも、その ……あ、ありがとう」


お礼というか、負け惜しみだった。

なぜそこで張り合うんだお嬢ちゃん、俺にはワカラナイヨ。

だが、半分はお礼だったので良しとする。



「カァ~ッ! 参ったぜボウズ。これだけのもんを出されたら嫌とは言えねぇ、商人として約束は守るぜ。ほら、これが嬢ちゃんのいっていたポーションだ」


店主がそう言うと、透き通った赤い液体の入ったビーカーが棚から取り出され、女の子に手渡された。

よかったよかった、これで交渉成立だな、

俺も心おきなく残りの8個を交渉できる。


「ふふふ、ようやくパパに頼らずにポーションを手に入れたわ。さすが私!これは永久保存ね、よいしょ」


どうやら親の力を借りずに交渉を成し遂げたかったようだ、受け取ったビーカーを大事そうにカバンに入れていた。

だけど分かるぞその気持ち、子供はそうやって自立するものだからな。

ただ、初挑戦にしてはハードル高すぎないかお嬢ちゃん……


「よかったね。それじゃあ僕はこの店主さんとまだ交渉があるから、またね」

「ちょっと待ちなさい! この私が恩を受けておいてタダで返すわけがないでしょう、こういう時は礼を尽くせってパパがいっていたわっ」


いや、礼を尽くすもなにも、出世払いの人じゃん君……


「うーん、そうねぇ…あっ、閃いたわ! あなた私の専属執事になりなさい。このリジューン王国公爵家が長女、パチュル・ジェリーが命じるわっ!」

「ああ、これはどうもご丁寧に。僕はセリルだよ。だけど、公爵家とかそういう冗談はいいから」


なにを言うかと思えば、公爵家の長女さんという設定らしい。

服もけっこうボロボロだし、さすがに公爵様はないだろ。

まったく、おちゃめな奴よの。


「う、うそじゃないんだから! ほんとなんだから!」

「はいはい、また今度遊んであげるから。今は大人しくしててね」

「ぬ、く、くぅううう! 覚えてなさいよアンタ! パパに言いつけてやるんだから!」

「えぇ~…… あ、走っていっちゃった」


……そうして女の子は走り去っていった。

最初から最後まで嵐みたいな子だったな。


「で、リジューン王国ってどこなんですか?架空の国?」

「おいおい、リジューン王国はここだぞボウズ。だが、あの服装で公爵様はさすがにないだろうな、付き人もいなかったしよ」

「ほえー」


この国だった。

そんな国聞いたこともないが、きっと世界のどこかにある国なんだろう。

なにせ、迷宮の繋がる場所はランダムみたいだからな、そういうこともある。



「ふむふむ。あ、それと交渉の続きなんだけど…キノッピはまだ8個あるんだ、買い取ってもらえる?」


ほら、どばどばーっと……

俺がジャンプし、服の中から取り出すような動作をみせると、8個のキノコがおちてきた。

いきなり収納で出したら驚かれるからね、身の安全のためにも服からとり出すような動作は必須だ。


「なっ!? これも全て本物だと!? ボウズ、お前なにもんだ……?」

「うーん、通りすがりのゼリリン?」

「答える気は無し、か……」


いやいや、正直に答えたけどね。

どこからどうみても俺はゼリリン3歳だ。


「どうやら俺にもツキが回ってきたようだ。いいだろう、一つ金貨1枚で買い取ってやる。合計で8枚だ」

「まいどありー」


よっしゃ、これでこの町で活動するある程度の資金がたまったな。

あとは適当に町でも見学してまわろう。


「じゃ、また次も売りに来ると思うから、そのときはよろしく」

「オウヨ! いつでも来やがれ」


うん、たぶん明日も来るよ。


……そうして軍資金を得た俺は、意気揚々と道具屋を出ていった。


ちなみに、一日5倍ペースで増えるなら、今迷宮に残ってる12キノッピは明日で60個になる。

美味しい仕事には変わりないが、供給過剰で値崩れが起きないように注意だけはしておこう。


「さて、次は冒険者ギルドにでも向かうかな。一々門番にワイロを渡すのもアレだし、身分証明くらいはつくっておこう」


この国が俺の故郷と同じとは限らないが、冒険者ギルドに登録するとギルドカードがもらえるのだ。

ギルドカードは身分証明代わりにも使え、冒険者ギルドは世界各地に国から独立した組織として運営されているので、この国でも使えるだろうという魂胆。


ここが別大陸とかなら分からないけど、同じ大陸ならだいたいルールは一緒のはずだ。


この世界の一般常識として、基本的にギルド登録への年齢制限はなく、登録するには多少の金銭が必要。

スラムの孤児なんかは身分が証明されていなく、仕事に就けないことも多いため、このギルドの登録システムを使って市民権を獲得することも多いのだ。

もっとも、その登録するための金額がけっこう馬鹿にならず、それすら出来ない者が大半なのだが。


「ま、さすがに金貨8枚あれば余裕だろ」


と、いうことで冒険者ギルドへレッツゴーだ。




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