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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
6章 ゼリリンの魔王邂逅編
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ゼリリン、強すぎる


正義のゼリリンパンチで魔王種を怯ませたあと、周りをよく見ると金髪ロングさんが満身創痍まんしんそういで倒れていた。

近接戦闘になれば2人で対処できると思ったのだが、予想以上に魔王は強かったらしい。


反対に、魔王種側は赤黒いオーラを纏っているので顔は見えないが、そこまでのダメージは負っていないようにみえる。

何をしたのか知らないけど、遠近両方で勇者を手玉に取れるとは、なかなかやるな。


「くっ、やるねぇ君。不意打ちとはいえ、魔法使いが僕に一撃を入れるなんて信じられないよ」

「それほどでもない」


別に魔法だけしか使わないという訳でもないので、驚くことではない。

ゼリリンの職業はどこまで行ってもゼリリンなのだ。


「ハハハハハッ! 謙遜しないところもまた素晴らしいっ! 気が変わったよ、今回は聖剣などではなく、君を部下に迎え入れ……おや?」

「ぜりっ?」


パンチから立ち直った魔王種さんが俺の方を振り向くや否や、動きをフリーズさせてしまった。

戦闘中に立ち止まるなんて、いったいどうしたんだろうか。


もしかしたらだけど、俺には勝てないと悟って、和平を結ぶつもりなのかもしれないな。

こういう局面で正しい状況判断ができるとは、かなり見どころがある。


「き、ききき、君!!」

「うむ」


やはり和平か。


ケガ人は出たが死人は出ていないし、いまなら間に合うからね。

ここから先は話し合いをするつもりなのだろう。


やっぱり、なんでも暴力で決着をつけるのはよくない。


「君、セリルくんじゃないかっ!?」

「そうだぞ」


俺も有名になったものだ。

やはり世界各地を転々としていたのが大きいかもしれない。


「いやいや、この国が君のお気に入りだというのなら、先に言っておいてくれよ。僕だって友人の領土に土足で踏み入ったりするほど、礼儀知らずじゃないんだ。今回だって、過去に人間アリが盗んでいった聖剣を取り返してくれと、知り合いに頼まれたから来ただけなんだし」

「ぜりっ!?」


なんと、この魔王種さんは聖剣を返却してもらいに来ただけらしい。

彼の知り合いが誰かは分からないけど、他人から大事なものを盗むのは良くない事だ。


ここは一度金髪ロングさんを起こして、事情を聞かねばなるまい。


「うーん、だけど困ったなぁ。いくらセリルくんのお気に入りとはいえ、その聖剣はもともとこちら側の所有物だし、タダで引き下がる訳にもいかないのも事実だ」

「たしかに」


もっともな意見だ。


そして彼が悩んでいる間に、とりあえずエリクサースラタロ.Jrで金髪さんを治療しておく。

エリクサースラタロ.Jrは本物のエリクサーほどじゃないけど、中級ポーションくらいの回復力はある。


おそらく、数分もしないうちに傷は癒し切るだろう。

戦意を喪失してしまったユウキも治療にあたっているみたいなので、これで一安心だ。


きっと彼も金髪ロングさんと話し合いたいだろうし、こういう配慮はかかせない。


「……そうだっ、ならこうしよう! いまから君と僕で一騎打ちをして、先に一本取った方が相手の言い分を認めるなんてのはどうだい、これなら僕も撤退した理由ができるし、角が立たないからね」


なるほど、力ずくで聖剣を奪えない理由が欲しいらしい。

それならお安い御用だ。


ゼリリンは負けないので、彼の期待に応えることができるだろう。


「うむ、いいぞ」

「セリルっ!!」

「だいじょうぶだ、ゼリリンはつよい」


ユウキがこちらを気遣って止めに入ろうとするが、心配は無用だ。

なぜなら相性の問題的に、既に決着がついているから。


「……ハハハッ! 君ならそういうと思ってたよ。それじゃ、行くよっ!! 【憤怒の魔王ギガボルテージ、怒りの鉄槌っ!!】」

「出でよ攻略本、そして僕を守りたまえ」


おそらくスキルか何かで超強化されたであろう身体能力をもって、魔王種さんが渾身の一撃を入れて来た。

当たったらチクッとしそうな、すごい威力だ。


だがそうはいいつつも、どれだけパワーアップしてもタクマほどではないので、目で追う事は容易い。

そして目で追えるという事は、攻略本さんの防御が間に合うという事でもある。


さて、彼の実力はだいたい分かったし、そろそろ一本取らせてもらうとしよう。


「ちぃっ!! この手応え、世界級装備かいっ!?」

「ちがうぞ、これは特典おまけでついてきた攻略本さんだ。……それじゃ、トドメといこう。【ダークチェーン】」

「ガァッ!? な、なんだこの鎖はっ!? ……ばかな、僕のパワーで千切れないだとっ!!?」


攻略本さんに大振りのパンチを行い、少しだけ動きが止まっているところを【ダークチェーン】で縛り上げる。

素の筋力が凄い騎士団長さんとかなら効果は薄いだろうけど、どうみてもスキルや魔力でパワーを底上げしている魔王種さんには、その効果を一時的だが無効にできる【ダークチェーン】は天敵なのだ。


ちなみにこの戦略は、遠距離攻撃をしていた彼がどうして勇者を圧倒出来たのか謎だった時に、顔が見えないほど膨れ上がる魔力をみて理解した。

彼はおそらく、オリジンスキルかなにかで【魔力を身体能力に変換する】力を持っているのだろうと。


「それじゃ、一本取らせてもらうよ」

「ま、……待っ」

「ゼリリンパンチっ!」

「ゲバァッ!!?」


勝ち申した。



【忘れた方へ解説】


ダークチェーン:

魔王城解決前のタクマ戦の、少し前あたりで出て来た、攻略本の報酬。

拘束されると、スキルや魔力の流れが止まる。

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