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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
6章 ゼリリンの魔王邂逅編
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ゼリリン、プライバシーを気遣う



ツインテちゃんにだっこされて、ユウキのいる治療室と思わしき場所までやってきた。

部屋の中では多くの回復術士たちが治療にあたっているらしく、何人もの魔力が感知できる。


そんなに重体だったのかユウキ、もっと早く助けに来れなくてごめんね。


「ツインテちゃん、もうここまででいいよ。あとは全て、僕がなんとかする」

「何を言うのです勇者ゼリリン様っ! ユウキ様は我が国の勇者と治癒術士たちがギリギリ命を繋ぎとめている状態です、あなた一人で何ができるというのですかっ!?」

「大丈夫だ、ゼリリンは嘘をつかない」


こういうのは論より証拠だし、ちょっとマナーは悪いが、無理やり入室させていただこう。


「ちょっと失礼するよ」

「なっ、何をするつもりです?」

「見ていればわかる」


そして治療室に入ると、全身ボロボロの状態で血を流して横たわるユウキが見えた。

他の治癒術士たちも懸命に光の魔力を注いでいるようだが、そんな魔力コントロールじゃたいした効果は見込めない。


宮廷魔術師か何かなのだろうけど、俺から言わせれば二流もいいところだな。

この中には勇者も混じっているみたいだけど、本当に勇者なのだろうか?


髪の毛の黒い人も混じってないし、この辺はあやしいな。


「むっ!? 誰だっ、こんな所に子供をつれてきたのは!?」

「早く摘み出しなさいっ!! ここがどこだか分かっているのか!!」

「むだだよ、ゼリリンにその程度の速度が通用するはずもない」

「くっ、ちょこまかと……」


入室がバレた瞬間、中の人が俺を捕まえに来たが、すべてゼリリンステップでかわした。

たわいもないな、全員修行が足りないぞ。


唯一、剣を提げた金髪ロングの女性だけが俺に構わず治療を続けているが、治療に集中できているのが一人だけとは、これいかに。


まあとにかく、症状を確認しよう。


「ふむ、確かにすごいケガだな。骨折どころか、腕なんか千切れかけている。ただ、魔力の流れは自然だし、呪いの類は掛かってないのが少し救いといったところかな」


エリクサーで回復させようにも、魔王本人がかけた呪いレベルだと通用するか怪しいからね。

純粋なダメージだけなのが不幸中の幸いだろう。



「……あなたは一体何者ですか? 相手の魔力を読み取り症状を判断するなんて芸当、普通の人間ができるとは思えません。もし、我が盟友であるユウキにトドメを刺しに来た魔王の手先というのなら、……ここで刺し違えてでもっ」

「金髪ロングさん、少しおちつこう」


かまっている場合じゃないので、さっそくエリクサーを振りかけてしまおう。

話はそれからだ。


「だばだばだば~」

「……ッ!? 何をするのですっ、おやめなさいっ!! ユウキは今、とても不安定な状態にっ!!」

「よし、ダメージは回復したね」


さすが大量のDPを対価にして得られる伝説のポーションだな。

肉体的なダメージなんて数秒で元通りにしてしまった。


「じゃ、さっそく起こすか。……朝だよ~」

「なっ!? な、なぁっ、なぁっ!?」


金髪ロングさんが口をパクパクとさせている。

結構美人さんだけど、かくし芸の練習だろうか。


もしかしたら、美人が金魚の真似をするという、高度なギャップを狙っているのかもしれない。

なかなかやるな。


だが、そういう練習は今すべきではないと思うので、できればこちらの手伝いをしてほしいかな。

さっきからゆさゆさとゆすっているが、なかなか起きないのだ。


お昼寝が得意なのは称賛に値するが、事情を聞かなければいけないので、このままという訳にもいかない。

何か策を練らなければ。


どうしよう。


「……せやっ!!」


良い事を思いついたぞ。


「ちょっとどいてて金髪ロングさん、いまからユウキを起こす魔法を使うから」

「なぁっ、な、な、な」


ダメだ、金魚の練習で忙しいらしい。


しょうがない、ちょっと邪魔だけどここは放置だ。

できればユウキのプライバシーにかかわる事なので、近くに居て欲しくはなかったんだけどね。


それじゃ、ゼリリンのグッドモーニング魔法を使わせてもらうとしよう。


「音魔法イヤホン起動、からの、……お土産にキャミィの写真集を持ってきたよ」

「なんだってぇっ!!!?」


よし、成功だ。

音魔法で直接ユウキの耳に音を送り届け、なるべく金髪さんに聞こえないように、ぼそっとキャミィネタで釣ったのである。


彼はクローム神聖国の王女、キャミィ・クロームの事が大好きなので、効果はてきめんだ。


キャミィネタの弊害として、起きると同時にユウキが鼻血を噴き出してしまったが、そこまではゼリリンの責任ではない。

なかなか起きないユウキが悪いのだ。


「……はっ!? こ、ここはっ!?」

「おはよう」

「あ、ああ、おはようセリル。今凄く大事な事を聞いたような気がするんだけど、勢いよく起きたショックで思い出せないな。……うーん」

「それなら気にしなくていい。きっと今後も実現しないことだ」


キャミィの写真集で飛び起きて鼻血を出すなんて、彼が聞けば羞恥心に悶えてしまうだろう。

ゼリリンは優しいので、しんじつはつげないでおく。


げんじつはざんこくだ。


「まあ、とにかく助っ人にきたからよろしく」


さて、次は暴れている魔王種さんをどうするかだな。


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