ゼリリン、ユウキを助けにいく
さて、ユニッピを強化するにしても、いきなり実戦という訳にもいかないだろうし、まずはどういう修行をするか考えてから行動に移るとしよう。
こういうのはルゥルゥの知識も役に立つと思うので、ロリ魔女はあとでユニッピ育成論会議に強制参加だ。
「あとでタクマとルゥルゥを交えて作戦会議をおこないたい」
「勿論いいぜ、このチビ竜を最強のドラゴンに仕立てあげてやる。……あっ、それとよ、作戦会議っていえば、ユウキの奴が他大陸の勇者から救援を頼まれたらしいぞ」
「ぜりっ?」
勇者の救援要請とな?
というか他の大陸にも勇者っていたのか、驚きだ。
まあ神聖国だけっていうのもおかしな話だし、分からなくもないけどね。
だがそれにしても、勇者が勇者に救援を頼むとは、タダ事じゃない。
いったい何があったんだろうか。
「なんかヤバい事態なの?」
「さぁ、どうだかな。詳しい事は分からんが、あいつがカジノに転移して、俺にも助けを求めてきた事は確かだ」
「どうみても大事じゃないか」
さっきカジノはいつも通りっていってたのに、どういうことだ。
タクマの基準がよく分からない。
「いや、あいつも一応勇者だ。ガキじゃねぇんだし、自分の事は自分で解決するだろ。カジノの平和とは関係ないぜ」
「うーむ、なるほど。いやでも、うーん」
まあ、ユウキをある程度信頼しているからこそなのだろうけど、いくらなんでも放任主義すぎじゃなかろうか。
今まで一人で何でも解決してきたタクマの人生観的に、何が言いたいのかは分かるけど、それにしたって物凄くスパルタだな。
厳し過ぎるのはよくないぞ。
ここはユウキの友達として、一肌脱がねばなるまい。
「じー」
「な、なんだ、俺も助けにいけってのか?」
そうだぞ。
「じー」
「……チッ」
抵抗しても無駄だ。
ゼリリンは友達を大切にする奴なのである。
「じー」
「あーっ、わかったわかったっ! わーったよ、お前は本当に甘え、甘すぎだ」
「それほどでもない」
ようやく折れたようだ。
ゼリリンアイに2回も耐えるとは、なかなか強情な奴だったな。
「つっても、直接は助けに行かないぜ? なんでもかんでも手ぇ出してたらキリがないからな。あくまでもお前に情報を渡すだけだ」
「ずるいぞ」
「ずるくねぇよ」
ようするに、俺が助けに行ってこいって事か。
いつも良い落としどころを見つけるタクマらしい意見だが、なんかずるいな。
自分で助けに行こうと言ってしまった手前、奴の言う事を否定できないのがつらい所である。
「で、その情報とは」
「なんでも、別の大陸に子供姿の魔王が出現して大暴れしてるらしいぜ。実力はしらねぇけど、勇者が数人がかりでも勝てないってことは、お前と同じ魔王種の可能性が高いな」
「なるほど」
他大陸の勇者がどれほどの実力かは分からないけど、ユウキと二人で挑んでも勝てないからタクマに相談したんだろうし、その可能性は高い。
しかし残念だな。
同じ魔王種なら友達になりたかったけど、人様に迷惑をかける奴ではダメだ。
最悪、ゼリリンパンチが必要かもしれない。
「しょうがない、それじゃあ僕が助けに行ってくるよ。戦ってる場所はどこなの?」
「普通に移動したんじゃ絶対間に合わねぇよ。今回はサービスで俺がタクシーをやってやる」
「結局タクマもあまい」
「うるせぇ」
なんだかんだ相棒は協力的なので、いざって時に頼りになるな。
さすが、腐っても勇者である。
「そんじゃ俺に捕まれ、時空魔法で向こうの王国に飛ばしてやる」
「ピトッ」
感謝を込めて、やさしく触れる。
「……なんで妙にソフトタッチなんだ。じゃあいくぞ、……おらっ!」
「ぬわぁーっ!!」
気合を入れて飛ばされたので、俺も気合を込めて飛んでみた。
それにしても、相手の事も瞬間移動させられるなんて、なんて便利な能力なんだ。
ユウキレベルではまだ無理かもしれないけど、極めたらすごいな時空魔法。
◇
「シュタッ!! ……ふむ、ついたか」
「な、なんだこの子供はっ!? ……ま、まさか、あの魔王の仲間かっ!?」
「ちがうぞ」
豪華絢爛なお城の、おそらく謁見の間と思われる場所についたのだが、いきなり悪い魔王の仲間にされた。
俺は悪くない魔王なので、その見解は間違っていると言わざるを得ない。
「僕は他大陸の勇者ゼリリンだ。クローム神聖国から、勇者ユウキの助っ人として転移してきたんだよ」
こういう時には勇者の肩書が便利だな。
いつもは何の役にも立たないのに、現金な肩書である。
すると、謁見の間にひしめいていた貴族たちの中から、一人の少女が姿を現した。
歳は15くらいかな?
だいたいユウキと同じくらいに見える。
金髪にツインテールだし、パチュルが成長したらこんな感じの子になりそうだ
「あの勇者ユウキ様のお仲間ですかっ!? ……よかった、本当によかったっ! ……ぐすっ」
「なくことはない、ゼリリンが来たからには魔王くらいケチョンケチョンだぞ」
「いや、それは無理です」
「ぜりっ!?」
励ましてあげたら一瞬で否定されてしまった。
なぜなんだ、俺も肩書だけは正式な勇者なのに。
やっぱり見た目が子供だからだろうか。
「そんな事より、勇者様なら高レベルの光魔法が使えましたよねっ!? なら早くユウキ様のもとへ向かってあげてくださいっ! さぁっ!」
「ぬわぁぁああっ!?」
「……待っていてくださいユウキ様、必ず私が傷を癒してみせますっ!」
謎のツインテちゃんにだっこされ、ユウキの下へと連行されてしまった。
こんなに急ぐなんて、よほど傷が深いのかもしれない。




