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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
6章 ゼリリンの魔王邂逅編
121/164

ゼリリン、自分以外の魔王に出会う

新章突入。




ガタガタと馬車に揺られて一週間ちょっと、ようやく王都までの道のりを半分消化した。

現在は中継地点の町で食料などを補給し、宿を借りて休んでいるところだったりする。


もちろん宿の手配などは学校側が全てしてくれるので、特に手間などはかからない。

竜車はわんわんより遅いけど、こういうところは楽だな。


「かなり快適だ」

「きゅぁ」


ユニッピもオフトゥンの魅力に取りつかれたらしい。

寝そべっている俺のよこで、気持ちよさそうにゴロ寝している。


伊達だてにたまご時代、ずっとお布団で過ごしちゃいないな。

既に俺と同じレベルでくつろいでいるし、もはやゴロ寝をマスターしたといっても差し支えないぞ。


かなり見どころがある。


「なかなかやるな」

「……きゅあっ!」


うむ。


「……ははは。僕はたまに、セリルが何を考えているのか分からなくなるよ」

「うーん、お姉ちゃんには分かるよ。セリルのこれは、休憩力の出来栄えを認め合っているの。ルーにもいずれ分かる時が来るから、あせらなくていい」

「ええっ!? 僕がおかしいのっ!? っていうか休憩力ってなんだい姉さんっ!」


効率的にリラックスできる能力のことだ。

ルー兄ちゃんはまだまだ頭が固いな、大事なことだぞ。


これはゼリリンの奥義の一つでもある。


そしてしばらくダラダラしていると、おやつの買い出しに出かけていたリグが帰ってきた。

自主的に皆の分を買ってきてくれたらしいので、大助かりだ。


「おかえり」

「ただいま戻りました。……それと若、お客さんが来ていますよ」

「ぜりっ?」


こんな所でお客さんとな?

まさかタクマだろうか。


……いや、リグの反応的にそれはないな。

うーん、思い当たらない。


なら、もしかして押し売りかな?

きっとそうだ。


「なんでも、若の友達になりたいから、遠くの大陸から遥々やってきたそうですよ。黒竜のお土産っていえば伝わると本人は言っていましたね」

「なるほど、黒竜さんか」


ちょっと前に会った時はお土産が欲しいっていってたし、きっと俺に相談しにきたのだろう。

どんなお土産がいいかゼリリンに相談するとは、殊勝な心がけだ。


お土産選びのプロとして、ここは相談に乗ってあげるべきだろう。


「それじゃ、行ってくるね」

「はいっ! フルーツ切って待ってますね!」


それにしても、オーシャルちゃんが砂漠で修行している時でよかった、黒竜さんとは仲が悪いからね。


そして部屋を出てロビーに向かうと、見知った竜人が待ち構えていた。

前にいろいろとはぎ取っちゃったけど、既に体は再生したらしい。


「という訳で、相談にのりにきたゼリリンだよ」

「やぁ、こんにちは。君が僕の家臣をボコボコにした子供だね? ……なるほど、確かにこれはとんでもない。明らかに黒竜では対処できないレベルだよ」

「……申し訳ありません」

「ぜりっ?」


誰なんだろうこの子は。

年齢は俺と同じみたいだが、知らない子だ。


見た目は黒髪に青い瞳で、俺と同じように悪役のオーラが漂うマントを装着している。

まるで魔王だな。


黒竜さんと親し気にしているし、隠し子かなにかだろうか。


「もしかして黒竜さんの隠し子? でも、そういうのは僕に言わずに、奥さんときっちり相談しないとダメだ」

「なぁっ!? キ、キッサマァッ! 陛下に対して無礼だぞっ!! その首、いまここで落としてやるっ!!」

「ブフゥッ! クッ、クククッ、……き、君もしかしてギャグのプロかい? 僕をこんなに笑わせるなんて、やっぱりタダ者じゃない。……ブハッ!」


ちがうぞ、お土産選びのプロだ。

ゼリリンは真面目に答えているのに、ひどい奴である。


遠くから友達になりに来たようだが、初対面の礼儀も大事だという事を知らないらしい。

ここはちゃんと、セオリーという物を教えてあげねば。


「真面目に答えた相手の事を、わらってはいけない。友達同士でも守るべきマナーというものがあるんだぞ」

「……キッサマァ、どこまでも陛下を侮辱しおってぇっ!!」

「ク、クククッ、……ま、まままて黒竜っ。僕は気にしてないから、一旦おちつこう。すー、はー、すー、はー。……よし」

「うむ。一旦冷静になるのはただしい選択だ」

「ブハァッ!!」


だめだ、まったく会話にならない。

どうすればいいんだ。


……あっ!

そうか分かったぞ、もしかしたら笑うのが好きな子なのかもしれない。

なんだ、笑顔が絶えない良い奴だったのか、そうならそうと言ってくれればいいのに。


「理解した」

「何をだっ!!?」


すべてをだ。


それに、俺と同じ年齢の子供がこの付近にいるとなると、もしかしたら同じく王都の学生かもしれない。

身なりも良いし、きっと留学生かなにかだろう。

間違いないな。


「そ、そうかい? ク、ククッ、き、君に納得してもらってうれしいよ。……すー、はー。……ふぅ、いやぁ、今日は本当に笑った」

「友達の件なら任せてもらっていいよ。クラスの仲間には良い感じに紹介しておく」


ここで友達を作っておけば、留学生もクラスに馴染み易いと踏んでいるだろうし、快く引き受けておくことにする。

学校では、レナ姉ちゃんとルー兄ちゃんの威光を浴びたロックナー家の一人だし、きっとうまくいくはずだ。


「よかった、君に嫌われたらこっちもタダじゃ済まなかっただろうしね。それじゃ、これからよろしくね。……僕の名前はプライデ・ルチファーだ、ルチファーと呼んでくれ」

「僕はセリル・ロックナーだ。たまにゼリリンにもなるから、呼び方はどっちでもいいよ」


こうして、新しい友達ができた。


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