ゼリリン、チビドラゴンの名前が決まらない
たまごを温めてから2週間が経った。
最近はたまごの中が動き出す事も多く、そろそろ孵化するのではないかと予想している。
たぶん今日中にはパリンといくだろう、そんな予感がするぞ。
きっとすごい奴が産まれるはずだ、間違いない。
よし、せっかくだからいつもより多めの魔力を注いでみよう。
「ゼリリンチャージ」
……どうだ?
……カタカタッ
……カタカタッ
「ぜりっ!?」
大きく動き出したっ!
それなら、もうちょっと強めにゼリリンチャージだっ!
くらぇっ!
……パリンッ!
「ぜりらぁあああっ!?」
パリンってなったっ!
まさかお前、産まれるのかっ!
たまごも虹色に光り出しているし、間違いない。
「むっ!? どうしたセリル、敵襲か!? 父さんの後ろに隠れてろっ!」
「あなたっ!」
「ちがうよ父ちゃん、たまごが割れそうなだけ」
夜中に大きな声を出し過ぎたらしい。
ごめんよ父ちゃん。
それに一緒に寝ていたみんなも起こしてしまったらしい、全員俺の部屋にやってきてしまった。
オーシャルちゃんだけは居ないみたいだが、あのドラゴンさんは図太いのできっとまだ寝ているのだろう。
これだけの騒ぎになって起きないとは、やっぱり心臓に鱗が生えているに違いない。
そしてしばらくすると、虹色に輝いていたたまごの光が徐々に収まっていき、目の前にはチビっちゃい竜がちょこんとお座りしていた。
……ついに産まれたか、感動の対面である。
さっそく攻略本でこいつを鑑定してみよう。
「出でよ攻略本、そして鑑定を行いたまえ」
「なにっ? セリル、その本はなんだ? 急に出てきたみたいだが」
「これは王都で売ってた鑑定の魔道具だよ、スライムで稼いだ時に買ったんだ」
大嘘こいた。
産まれた時から持ってたなんて言う訳にはいかないから、これはしょうがない。
ちなみに、たまごの事もS級依頼をやっているときに拾ったと伝えてある。
まあ、なにせS級依頼だからね、そんな事もあるよ。
さて、それでは鑑定結果を覗いてみるとしよう。
【ギャラクシードラゴン】
成長標準:
生命力:SS/魔力:S/筋力:SS/敏捷:B/対魔力:S
現在値:
生命力:D/魔力:D/筋力:D/敏捷:E/対魔力:D
オリジンスキル:渦巻く魔力、すごそうなやつLv2
スキル:竜光魔法、竜闇魔法、飛翔、合成魔法
【渦巻く魔力】
二つの属性を混ぜた合成魔法を使え、さらに魔力に回転を加えることが出来る。回転が加わった魔力は密度が高まり、物質に近い特性をもつ。合成魔法習得。
【すごそうなやつLv2】
└Lv1効果:卵時代、魔王ゼリリンの期待を一身に背負った事で、成長標準以上の進化が見込めるようになった。また、体を変化させて凄そうにみせる事もできる。
└Lv2効果:魔王ゼリリンの魔力を大量に受けて孵化したことで、魔王ゼリリンとシンクロできるようになった。シンクロ中は二つだけ、オリジン未満のスキルを借りられる。
「なんか、すごそうなやつが産まれた」
「きゅぁ~」
「うむ、お前はすごいやつだ」
なんて言っているのかは分からないが、【すごそうなやつLv2】の効果で言いたい事は伝わってくる。
どうやら褒めてほしいらしい。
「セリル、鑑定結果はどうなったんだ? 父さんにも詳しく教えろ」
「えっとね、ギャラクシードラゴンっていうのが産まれた。魔法を合体させたり、空を飛べたりできるらしい」
「ギャラクシードラゴンだと……? 知らない種族だな」
俺も知らない種族なので、あとでタクマかオーシャルちゃんに聞いてみよう。
銀河の竜なんていままで居たかどうか知らないけどね。
「オーシャルちゃんに聞いてみるから大丈夫、けっこうドラゴンに詳しいらしいからね」
「うむ、確かあの子は竜人だったな、それならば知っている可能性は高いだろう。でかしたぞセリル」
「……あら? あなたまさか、このドラゴンちゃんまで売るつもりじゃないでしょうね?」
「ち、ちがうぞっ!? 単純に興味が湧いただけだっ」
いやさすがに、いくら父ちゃんでも一匹しかいないのに売る訳がないので、そこは心配いらないと思うよ。
母ちゃんは心配しすぎなのだ。
「母さんは心配しすぎだよ、いくら父さんでもそこまではしない筈だ」
「お姉ちゃんもそう思う」
「きゅあぁ~」
ルー兄ちゃんとレナ姉ちゃん、おまけでチビドラゴンも俺と同じ意見のようだ。
よかったね父ちゃん。
「ならいいのです」
「う、うむっ!」
「……やっぱり怪しいわね」
まあ、俺的には売るつもりがないので、どっちにしろチビドラゴンの運命は変わらない。
どちらかと言えば、問題はこの後の名づけをどうするかだ。
なにかいい名前がないだろうか?
時間的にもそろそろ夜が明ける頃なので、もう今日は起きてしまうことにする。
朝ごはんまでじっくり考えておこう。
「うーん」
「きゅぁっ」
「確かに」
「きゅぁああ……」
「いや、それはおかしい」
なかなか決まらない。
「ダメだ、セリルがどんな会話をしているのか分からんぞ」
「たしかに難しい。でも、お姉ちゃんには分かる」
「えぇっ、分かるの!? ……僕の姉さんは一体何者なんだ」
「ルーにはまだはやい。解読にはゼリルン観察上級者並みの実力がひつよう」
レナ姉ちゃんには分かるらしい、さすがエスパー・レナだ。
だがこのままチビドラゴンと会話を続けていても、良い名前が浮かんでくるとも思えないな。
よし、こうなったらアレを使おう。
所謂、他力本願というやつだ。
「ではさっそく、チビドラゴンの名前を募集します」
「まかせて、お姉ちゃんはもう考えた」
さすがレナ姉ちゃんだ、頼もしい限りである。
作者的にも名前で迷ってます。
どうしよう。




