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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
5章 ゼリリンの大冒険編
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ゼリリン、サボる口実を見つけてしまう



ギルドでの納品を終えたので、さっそく町の鍛冶屋にやってきた。


ロックナー領で育ってもう7年になるが、基本的に町には向かわずに迷宮で遊んでいたので、領内に何があるかはあまり知らない。

さすがにギルドくらい大きな建物になると分かりやすいが、鍛冶屋の場所は知らないので、レナ姉ちゃんについていっただけだったりする。


姉ちゃんは忍者装備の調達とかに何度も利用しているらしく、意外と常連のようなのだ。

なので基本的には口を出さず、S級依頼の報酬金を持って見守るつもりである。


「たのもー」

「おぅ、どうしたガキんちょ。……ってレナ嬢ちゃんじゃねぇか、久しぶりだな。またクナイが減っちまったのか?」

「……フッ、親方は甘い。今回の私は一味ちがう」

「なんだ、妙に自信たっぷりだな」


店の奥から出てきたムキムキのおっちゃんが凄く親しげだ。

またクナイが減ったとかなんとか言っているところを見るに、やはりレナ手裏剣の大部分はここで調達していたのだろう。


戦闘で使えば無くしたりもするし、壊れたり錆びたりもする。

高級なクナイになればそういう事もないのだろうけど、うちはお金がないからね、市販品の定めというやつだ。


「それで、今日は装備を作ってもらいにきたの。……セリル、例の物を」

「ススッ」

「な、なんだ?」


亜空間から黒竜の素材を取り出し、親方にススッと手渡す。

今の俺はアサシン・レナの付き人Aなので、目立った行動はしない。


ゼリリンはこういう配慮もできるのである。


「それはさっき仕留めてきたドラゴンの素材、親方ならその価値がわかるはず」

「……なにぃ、ドラゴンだとぉ!!? いや、しかしこの素材の重さ、質、魔力量……っ! 間違いなく上級の竜素材だっ! ランクはおそらくA、……いや、Sはあるぞっ!?」


うむ、おっちゃんにも見ただけで素材の価値が伝わったようだ。

そもそもS級素材なんて町じゃ出回らないし、発せられる威圧感だけで素人目にも違いが分かるので、プロが勘違いするはずもない。


「これは私とゼリルンが倒した黒竜の素材。それを使ってすごい武器を作ってほしいの」

「えぇっ!? オーシャルもがんばりましたよ?」

「…………」

「あれっ!? 無視されたっ!?」


憐れオーシャルちゃん、彼女の活躍はレナ姉ちゃんの記憶に残っていなかったらしい。


まあ実際、活躍したというよりも暴走していただけだしね。

トドメを刺したのも姉ちゃんだし、これはしょうがない。


「とにかく、素材はたくさんあるから宜しくお願い。お金も用意してある」

「分かった、引き受けよう。……それにしてもまさか、生涯でも巡り合えるか分からねぇ伝説の素材を扱えるなんざ、鍛冶屋冥利に尽きるぜ。嬢ちゃんは本当にすげぇ奴だ」

「ゼリルンのお姉ちゃんだし、当然の結果かな」


話がまとまったようだ。

角や鱗を使ってどんな装備が作られるかは分からないが、アサシン・レナが見込んだ鍛冶屋の腕前を信じるとしよう。


ちなみに完成までは一週間ほどかかるとのこと。

闇属性は影を使った空間移動なんかが得意らしいので、作業も夜が効率よく、時間がかかるのだとか。


「それじゃ、今日はもうおうちに帰ろう」

「うん。お姉ちゃん冥利に尽きる一日だった」


よかったよかった。





S級依頼を達成してから一週間が経った。


あれからオーシャルちゃんはチビッ子族と親交を深めるとかいって家に居座り、たまに父ちゃんやルー兄ちゃんのスライム販売を手伝いながら、ご飯にありついている。

リグには非常に嫌がられているようだが、本人は気にしていないので、今のところ問題はおきていない。


というか、気にしていないといよりも気づいていないと言った方が正しい。

あまりにも図太いドラゴンさんなので、もしかしたら心にも鱗が生えているんじゃないかと考察している。

オーシャルちゃんはやばい。


リグはリグで手料理が上達しはじめて、最近のお昼ごはんはリグのお手製弁当が主流になってきた。

しかし、妙に弁当に入ってる具やふりかけの模様にハートマークが多いが、なんなのだろうか。


これも母ちゃんの入れ知恵らしいけど、詳細は不明だ。


「……で、それがレナ姉ちゃんの新しい武器なんだね」

「手裏剣は大きめの鱗が使われていて、刀の部分は牙なの。あと、角は太刀にしてもらった感じかな」

「すごいね」


鍛冶屋のおっちゃん曰く、全ての武器に闇属性の力が付与されており、所持しているだけで影に潜り込んだり、それを応用した移動が可能になるらしい。

慣れてくると飛んで行ったクナイを自分の影に収納することもできるらしく、これからは無くす心配もなくなったようだ。


とんでもない装備のオンパレードだな、下手な魔剣なんかよりもよっぽど強い。


「で、セリルこそ何してるの?」

「たまごを温めてるんだよ。産まれるまで根気が必要なんだ」

「なるほど」


そして俺ことゼリリンだが、現在は攻略本さんの報酬でもらった竜種の虹卵を温めている最中である。

攻略本さんのデータベースで調べた結果、この卵が孵化するためには、大量の魔力と人肌程度の温かさが必要であることが発覚した。


なのでこの一週間布団にもぐり、一生懸命だっこしていたのである。

決してサボっているワケではなく、これは俺の仕事なのだ。


……ほんとだぞ。

口実とかそういうのじゃなく、これでも結構忙しいのだ。


……ぜりっ。


余談だが、報酬の卵が孵化するまでだいたい2週間くらいの時間が必要で、夏休みが終わる頃くらいまでは何もできない。

なので今日もオフトゥンの力を借りて寝るしかないのである。


2週間後にどんなドラゴンが誕生するのかは知らないけど、実に楽しみだ。


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