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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
5章 ゼリリンの大冒険編
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ゼリリン、受付嬢さんに報告する



気絶して寝そべっているドラゴンさんの爪や角、牙なんかを収納し、ギルドに戻ってきた。

オーシャルちゃん曰く、上位のドラゴンになれば自身の再生能力ですぐに素材は生え変わるので、敗者からは気にせずに採取していっていいとのこと。


それに、負けた腹いせに復讐するのは竜族の誇りとしてありえないので、上位ドラゴンにそんな事をするやつは居ないらしい。

ここらへんは黒竜とか白竜とか関係なしに一致した概念のようだ。


もし仮にそんな事をしようものなら、他のドラゴンたちから袋叩きに遭うだろうとの事。


それにしても、負けたらみぐるみ剥がされるなんて、なんて敗者に厳しい社会なんだ。

おそるべしドラゴン社会。


「ということで、黒竜さんに勝負を挑んできたゼリリンだよ」

「……なっ、本当にドラゴンと戦ってきたんですかっ!? 見学ではなくっ!?」


S級依頼を受理してくれた受付嬢さんが驚いている。

まあ無理もないけどね、普通のC級冒険者なら魔力にビビって逃げてただろうし。


むしろレナ姉ちゃんが平然としていたのがおかしいくらいだ、緊張してきたとは言っていたけど、よくそれで済むものである。

どれだけゼリリンの力を信頼しているのだろうか。


すると、周囲の冒険者がざわつき始めた。


「おいおい、あのチビ達黒竜に挑んで帰ってきたみたいだぞ」

「ハッ、どうせ戦うっていうよりは、魔力にビビって逃げ帰ったってところだろ」

「バカいうなよてめぇ、黒竜に立ち向かいに行くだけでもチャレンジャーなチビじゃねぇか、こりゃあ将来が楽しみだぜ」


ふむ、さまざまな憶測が飛び交っているようだ。

まあいままで誰も成功していないS級依頼だからね、勝負に勝って爪を採取できたら成功とはいえ、普通は難しい依頼なのだろう。


だが俺たちはこの依頼を成功させてきた訳だし、さっそく証拠を出してしまおう。


出でよ黒竜の素材たち。


「じゃらじゃらじゃら」


ギルドのカウンターに、採取してきた素材をバラまいておく。

いざ出してみると結構な大きさと重さなので、偽物と疑われる心配はないだろう。


「……こ、これはっ!?」

「……おいおい、嘘だろ。ありゃあどう見ても本物の素材だぞ」

「ばかなっ!? いやしかし、素材から感じる魔力的にも偽物の可能性は無い。……どうなってやがるっ!?」


うむ、問題なく納品できそうだ。

黒竜の鱗には鋼などよりもさらに重みが増したつやと色があり、含まれる魔力も尋常ではないために、これが偽物だと思う人は一人もいないらしい。


さすがは冒険者だな、俺たちがいくらちっちゃくても結果には正直なようである。

嫉妬に駆られてケチをつけるという思考すら無さそうだ。


「ふふんっ。このオーシャルが出張ったんです、黒竜など木っ端みじんの粉みじんにしてやりましたよ」

「粉みじんにはしてないよ? お姉ちゃんとセリルで気絶させただけ」

「オーシャルちゃん、うそはいけないぞ」


オーシャルちゃんの気分的には木っ端みじんにしたつもりだろうけど、黒竜さんは生きてるからね。

間違った情報を意図的に伝えるのはギルドの規約違反なので、ここは正確に伝えておく。


「傷を負った黒竜に、僕の姉ちゃんが毒魔法で気絶させただけだよ。気絶している間に素材をはぎ取ったんだ」

「な、なるほどっ! それでもすごい成果ですよっ! 黒竜の爪が納品されるなんて、国内でもそうそうある事じゃありませんっ」


まさに傷口に塩ならぬ、毒を塗る作戦である。


ちなみに、レナ姉ちゃんの毒魔法は2年前の学校入試の時に明らかになり、それ以来ずっとこの魔法を極め続けていたらしい。

アサシン・レナにはピッタリの魔法だ、特技の隠密ともすごく相性がいい。


「それで、爪以外の素材はどうしますか? ギルドでは買い取る事も可能ですが」

「うーん、どうしよう」


DPにしてもいいけど、これは俺だけのものではないので、扱いに困る。

かといってお金に関してはスラタロ達が稼いでくれるし、金貨に変えるうま味は少ない。


もっと有効活用できないだろうか。


「セリル、セリル」

「なに?」

「お姉ちゃんこれで武器つくりたい」


なるほど、確かにそれは良いアイディアだ。

俺の報酬は攻略本さんから貰っているし、オーシャルちゃんは黒竜素材なんて絶対にいらなさそうだしね。


それならアサシン・レナの強化装備として活用した方がいいかもしれない。


「じゃあそうしよう」

「さすが私の弟は話がわかる」

「それほどでもないよ」


となると、爪装備は全部納品するとして、残った鱗・牙・角は回収してしまおう。


「依頼以外の素材は姉ちゃんの武器にする事にしたよ」

「畏まりました、それではギルドカードの更新だけしてしまいますね」


きっとCランクから昇格するのだろう。

さすがにAランクにはならないだろうけど、少なくとも毎日ギルドに貢献してるレナ姉ちゃんはBになるはずだ。


そしてしばらくすると、ゴソゴソと作業していた受付嬢さんが戻ってきた。

カードの更新が終わったのだろう。


「うむ、ちゃんとBランクになっている」

「私もBになった」

「さすが私の見込んだチビッ子です、さすチビ」


オーシャルちゃんはBランクの意味が分かっていないようだけど、凄い事だというのは分かるらしい。

あと、俺はさすチビではない、ゼリリンだ。


「それじゃ、依頼はこれで完了として、次は鍛冶屋に向かおう」


黒竜を使った装備がどんなものになるのか、楽しみだな。

いままで市販の武器で戦ってきたアサシン・レナが、S級素材を用いた装備を使用する事で化けるのは間違いない。


きっとBランクでも上位に匹敵する実力になるだろう。


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