ゼリリン、ドラゴンさんを家族に紹介する
しばらく砂漠の魔物と戦闘してから、夕飯になりそうだったので家に戻ることにした。
今日はオーシャルちゃんもいっしょである。
「今日はドラゴンさんも頑張ったから、僕の家でごはんだ」
「チビッ子の家に行くのですか? どんな所なんでしょうかね、もしかしてチビッ子が沢山すむ集落だったり」
「そんなわけない」
俺を何と勘違いしているのだろうか。
小人の種族だとか思ってそうだ。
それと、母ちゃんにはスラタロの販売に協力してもらった事を伝えるので、きっと歓迎してくれるはず。
「それじゃ、収納」
いざ、わが家へ。
「という事で、森につきました」
「はわわっ!? 目の前が真っ白になったと思ったら、今度は森が出てきたっ!?」
収納はまず先に亜空間の部屋に出るからね、初めての人はびっくりする。
ドラゴンさんは転移とかは使えないようなので、経験が無かったのだろう。
でも驚いているところ悪いけど、母ちゃんのご飯に遅れる訳にはいかないので、ここからはゼリリンダッシュで向かう。
「それじゃ、ついてきてね」
「えっ。移動するなら、私が飛んだ方が早いですよ?」
「そこまで遠くないよ」
というか、領内でドラゴン形態になったら大戦争になりそうだ。
普通の人にとっては、ドラゴンなんて超強い魔物みたいなものだろうし。
「それじゃ、ゼリリンダッシュッ!」
「速いっ!? ……これがチビッ子の真の実力?」
「ぜりぜりぜりっ!」
「はわわっ! 待ってくださいー」
ふむ。
ゼリリンダッシュにギリギリだけどついてこれるとは、やはり身体能力のスペックはかなりのものだな。
レナ姉ちゃんの護衛として重宝しそうだ。
「ただいまーっ!」
「はぁっ、はぁっ! は、はやすぎる……」
「おかえりなさい若っ! 待ってまし、た……? あれ、若の隣に悪い虫が見える」
帰宅すると、リグが満面の笑みで出迎えてくれた。
母ちゃんのご飯も手伝ってくれるし、いつもありがたい事である。
でも、途中で顔から表情が抜け落ちたけど、大丈夫かな?
母ちゃんの特訓に疲れて、立ちくらみでも起こしたのかもしれない。
「大丈夫リグ? 疲れてるなら休んだ方が良いよ」
「……はぁ、はぁ。虫ではありませんよ人間、私は誇り高き種族の姫、オーシャルなのです。分をわきまえなさい」
「ああ、若の天使のささやきと、……虫の雑音が一緒に聞こえてくる。……雑音は、消さなきゃ」
やばい、オーシャルちゃんが無駄なプライドを発揮しはじめた。
リグも疲れて目の焦点が合ってないし、どうしたものか。
こういう時はあれだ、助っ人を呼ぼう。
ヘルプミー、救世主レナっ!
「ええいっ! カモン、レナ姉ちゃんっ!」
「お姉ちゃんが来たよーっ!!」
「はやい」
無敵のスピードでレナ姉ちゃんがすっ飛んできた、ゼリリンの目にも追いきれるかどうかといったところだ。
一瞬だけ、ゼリリンダッシュよりも上を行っていたかもしれない。
「レナ姉ちゃん、僕の友達を連れてきたから、母ちゃんの所に案内してあげて」
「セリルの友達ならお姉ちゃん大歓迎かな。すぐに連れていくね」
「じゃあ、僕はリグを休憩させてくるから」
リグは疲れているようなので、また働きすぎないように面倒を見る事にした。
ドラゴンさんの方はレナ姉ちゃんが適当に紹介してくれると思うので、一件落着だね。
姉ちゃんに連れられていくドラゴンさんはどこか誇らしげなので、きっと小人の国の王様にでも会いにいく気分なのだろう。
この家についてから子供しか登場してないし、そんな感じに勘違いしているに違いない。
「それじゃ、リグは僕といっしょに休憩しよう。きっと疲れているんだよ」
「ああぅっ! 天使のささやきがっ、ササヤキガーッ!!!」
「重症だね」
なぜか急に元気になったリグが、今度はテンションを暴走させた。
これは少し危険な状態だ、疲労がピークに達しているのだろう。
キノッピでも食べて元気だしなよ。
精神の疲労回復には、青キノッピが有効だよ。
味はソーダ味だ、一口食べるとしゅわしゅわするキノコである。
「これ、あげる」
「これはっ!? で、ですがしかし、若の大切なおやつをもらうなど……」
「はい、あーん」
「あ、あーん、……むぐぅっ」
リグが口をあけたので、そこへめがけて投げ入れた。
比較的小さめのキノッピを選んだので、うまく入ったようだ。
「……おいしい」
「自慢のおやつだ。精神の疲労回復効果があるし、何よりも美味しい。疲れているリグにはピッタリのキノッピだよ」
さて、リグも落ち着いたことだし、夕飯が食卓に運ばれるまで一緒にゴロゴロするとしよう。
漂う料理のにおい的に、もうちょっと時間がかかりそうだしね。
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レナ視点。
私はレナ・ロックナー。
セリルとルーのお姉ちゃんです。
お姉ちゃんには様々な仕事がありますが、今回は弟のセリルが友達を連れてきたので、その案内をしています。
「お母さん、セリルが友達を連れてきたよー」
「ふむ、あなたがチビッ子族の女王ですか。お初にお目にかかります、誇り高き光竜族の姫、オーシャルです」
「あらあら、あの子ったら、今度は変わったお友達を連れてきたのねぇ」
あれ、お母さんは何を言っているんだろう。
弟が連れてくる人はだいたい変な人なのに、ツノとか尻尾が生えているくらいで大げさだなー。
弟のことが好きなリグちゃんだって変な性格だし、王都の宿にいたタクマっていう人も普通じゃなかった。
今回の子も同じようなものだと思うのだけれど。
まあ、それはそうと紹介も頼まれていたので、お母さんに説明してあげなきゃ。
私は弟の期待に応えられるお姉ちゃんなのです。
「うーんと、たぶんこの人はセリルの弟子だよ」
雰囲気でわかります。
「よく分かりましたね、チビッ子の姉。あのチビッ子はタダ者ではありません、天才です。以上の理由から、ついていく価値があると判断しました、主にキノコのために」
「あら? あらあら、セリルにも弟子ができたのねえ。もしかしてスライム作りのお弟子さんかしら?」
「違いますっ! あのチビッ子はキノコ作りの王ですっ!」
やっぱり弟子だったらしい。
私の勘はいつも当たるから、今回も当たると思ってたよ。
でも、弟が隠れてキノコを食べているのは私しか知らないはずなのに、なんで知ってるんだろう。
もしかしたら私の次にゼリルンに詳しいのかもしれない、これは要注意かも。
なんにせよ、これで頼まれたお仕事は終わったので、また弟の面倒をみなきゃ。
お姉ちゃんは忙しいのです。
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