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魔王ゼリリン、異世界を生きる  作者: たまごかけキャンディー
4章 ゼリリンの大迷宮編
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ゼリリン、はぐはぐする



タクマに王女様とゼリリン2号を託し、俺は祖国であるベルン王国へと帰ってきていた。

道端には学生を乗せた竜車なんかがチラホラと見えるので、おそらくちょうど良いタイミングで帰ってきたと思われる。


さっそくレナ姉ちゃんとルー兄ちゃんを見つけてお家へ帰ろう。


「じゃあリグは僕についてきて、いまから姉ちゃん達を探すから。たぶん向こうも探してるだろうからすぐ見つかると思う」

「はいっ! どこまでもついていきます!」

「いや、そこそこでいいよ」


家族を学校へ探しに行くだけなのに、リグの愛が重い。

こういう所はリグの良いところでもあり、やっかいな所でもあったりする。


そして学校へゼリリンダッシュで赴き、校門の外をぐるぐると散策していると、やはりレナ姉ちゃん達も俺のことを探していたみたいだ。


いまもキョロキョロと辺りを見渡しながら、ぴょんぴょん飛び跳ねている。

相変わらず元気な姉ちゃんだ。

ルー兄ちゃんとかは校門の壁に背中を預けてじっくり待機しているので、性格の違いがよく出ているね。


「やぁ、おまたせ」

「あーっ! セリルどこに行ってたの!? お姉ちゃんすごく探したんだよ?」

「おや、お帰りセリル。ずいぶん遅かったみたいだけど、ギルドの用事とかだったのかい?」

「ううん、散歩してただけ」


まあ公国にいって帰ってきただけだからね、散歩と変わらない。

王女ちゃんについていた魔王虫の駆除とか、騎士の撃退とかはほぼ全部タクマがやっちゃったし。


「あはは、相変わらず外が好きなんだねセリルは」

「そうですよ若のお兄様、いつもついていくのがやっとなんですからっ!」

「いいなぁー、お姉ちゃんもセリルと冒険したい。最近はゼリタロウとしか冒険していないから」

「すらっ!」


どうやらゼリタロウは相変わらず可愛がられているらしい。

よかったよかった。


この前見た時は魔力の使い過ぎでしおしおになっていたけど、今はお肌がぷるんぷるんのようで、魔力の匙加減が分かってきたみたいだ。


「まあお家に帰ったら僕も一緒に遊ぶから、とりあえず竜車に乗ろう。へいタクシー!」


そういいつつ、竜車に向けて親指を立てた。

この世界でタクシーって叫んでも全く意味がないんだけど、気分の問題なので問題ない。

親指を立てる行為は竜車を呼ぶ合図でもあったりするので、一応止まってくれるしね。


「セリル、タクシーってなんだい?」

「きっとゼリルン語だよ。ルーは分からないの?」

「……えっ、ゼリルンってなに?」

「ゼリルンはゼリルンだよ、お姉ちゃんだけが知っているの」

「えっ」

「ぜりっ?」


いや、レナ姉ちゃんだけが知ってる前提だったら、ルー兄ちゃんが分かる訳ないと思うよ。

俺の姉ちゃんはときどき不思議な事を言うんだよね。

ルー兄ちゃんもリグも、どういうことなのって顔している。


その後親指を立てて1分ほどすると、一台の竜車が俺たちの前に停まった。

やっぱりタクシーって叫んで停まると気持ちいいね。


それじゃ、ロックナー領へ向けて出発!



……そして3週間後、途中で村や町なんかで食料などを補給しながらロックナー領へと帰ってきた。

わんわんならダラダラと移動しても1週間で到着するのだが、さすがにD級魔物の亜竜と比べてもしょうがないね。


何はともあれ着けばいいのだ。


「父ちゃん、母ちゃん、ただいまー!」

「あらあら、久しぶりねセリル。おかえりなさい。あなたーっ! 子供たちが帰ってきたわよーっ!」

「なにぃっ!?」


母ちゃんの声につられて、父ちゃんがドタドタと玄関までやってきた。

そんなに急いで向かってくるとは、父ちゃんも寂しかったに違いない。


ここは家族サービスをしてやらねば。


「ゼリリンジャンピングタックルッ!」

「ぬおぉぉっ! 良い衝撃だセリル、父さんはお前たちに会いたかったぞ!」

「はぐはぐ」

「あらあら、ふふふ」


威力を落としたゼリリンタックルをジャンプで再現することにより、父ちゃんの胸へとダイブすることに成功した。

今日の家族サービスはハグなのだ。


すると、俺のゼリリン技につられてレナ姉ちゃんも参加してきた。


「ハグハグッ!」

「はぐはぐ」


ルー兄ちゃんは来ないのかな?


「ちらっ」

「はははっ、僕もやれって事だねセリル。……はぐはぐ」


残りはリグだけだぞ、さぁ勇気を出してみんなではぐはぐだっ!


「ちらっちらっ」

「あぅ。……はぐはぐっ!」

『はぐはぐっ!』


俺たち兄弟は父ちゃんへ、リグは母ちゃんへダイブを決めたようだ。

うむ、これで一家団欒だな。


それと余談だが、その後の父ちゃんは感動のあまり涙目になっていた。





「……という訳で、学校で冒険者活動をしていたらCランク冒険者になって、ついでにスライムの商売に成功してお金持ちになったよ」

「私は若についていきましたっ!」

「うーん、私はいつも通りかなー」

「僕もだよ」


帰ってきてからしばらくして、俺たち兄弟は1学期の報告を行っていた。


ただ俺以外のみんなは特に報告するほどの事はやっていないので、今回のお話は主に俺の事が中心となっているようだ。


「な、なにっ!? スライムの商売で金貨4500枚儲けただとっ!?」

「うん、でも高い宿に泊まったりギャンブルに使ったりして、もうほとんどないけどね」

「なにぃーっ!?」


ギャンブルというのは嘘だが、カジノの設備にだいぶ使ったので、お金はほとんど消えてしまっている。

まあその代わりDPが大量に手に入ったからね、文句なしだ。


「また気が向いたら稼ぐよ」

「なにぃぃぃいいーーっ!?」


……あ、父ちゃんが驚きすぎて気絶してしまった。

元気な父ちゃんである。


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