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ゼリリン、稽古をつけてもらう

午後3時くらいに我が家に帰り、お昼寝から起きた。

うーん、よく寝たな……

これだからお昼寝はやめられない。


「お昼寝も済んだ事だし、さっき手に入れた火魔法でも使ってみようかな」


まだ習得したばかりだし、そこまで大きな火は出ないと思うが、火事になったら怖いので外で発動することにする。

畑の前くらいで使えば安全マージンは取れるのではなかろうか。


ちなみにやり方はなんとなくわかる、報酬で入手したときに使い方が頭に流れてきたのだ。

母ちゃんなんかは詠唱を使って火種を起こしていたが、あれはあまり効率的な使い方ではないらしい。

習得した今だからこそ分かるが、魔法の基本は無詠唱だ。


使いたい魔法をイメージして、魔力操作で出力をコントロールするだけで魔法は発動する。

それにはもちろん、使いたい魔法に対応した魔法属性への適性が必要だし、高レベルの魔力操作とイメージが明確でないといけないわけだが……


むしろどうやって詠唱で魔法を起こしているのか、俺が知りたい。

もしかしたら報酬の魔法と、この世界の人たちが使う魔法っていうのは少し違う物なのかなとも考えていたりする。

そうだったら、それはそれでいいんだけどね、俺のアドバンテージになるし。


「で、色々考えている間に畑に来たわけだけど、まあ論より証拠だ、さっそく使ってみようか。それっ!」


3年間の修行で培った魔力操作で火魔法を発動すると、手から火炎放射が出た。

ハッキリ言ってすごい迫力だ、ちょっとビビって泣きそうになった。


「う、うぉおお…… これが魔法か……」


だが、魔法の派手さに比べて魔力を消費した感覚がほとんどない。

さすがゼリリン、魔力SSの魔王なだけはある。

なんか興奮してきた、これこそファンタジーってかんじだわ。


…しかし、興奮した俺はまた大事な事を忘れていたようだ。

そう、ここが奴のテリトリーだということを。


「あーっ!セリルが魔法使ってる!魔法どこで習ったの!?…あっ、今のはもしかしてゼリルンなの?」


やっべ!レナ姉ちゃんに見つかった!


「あーえっと…… そ、そう!今だけゼリリンになってた!」

「わぁぁあ!ゼリルン凄い! ……じゃあ、私にも魔法教えて?」


喜色満面だった顔が一瞬で真顔になり、俺に無言の圧力をかけてきた。

もしやこれは、教えなければ親にバラすぞっていう暗示なのか!?

くっ、今日のレナ姉ちゃんはデキるッ!


仕方ない、ここは取引に応じるしかあるまい……


「う、うん、いいよ。……でもゼリリンになれるのはちょっとだけだから、いつもは教えられないけど」


ちょっとどころか、常時ゼリリンだけどね。


「ほんと!?ゼリルンありがとうっ!」


真顔がまた笑顔になり、いつものレナ姉ちゃんにもどったようだ。

ここまで全て計算済みとは、恐ろしい子っ…!


そしてその後は日が暮れるまで魔力操作を教え込んだ。

まずはこちらが相手に魔力を流し、その感覚を元に魔力の存在を掴むところからだ。


俺は攻略本で魔力の存在を掴むにだいぶかかったが、レナ姉ちゃんはものの数分で存在を掴んでしまった。

なんだこの格差は、天才とはこういうものなのか…

実際は魔力を流すのと攻略本の出し入れでは、動かせる魔力の量が全然違うので比べるのはおかしいと思うが、それでもちょっと悔しい。

こ、これは俺の教え方がうまかっただけなんだもんね!

全然悔しくないし、ホントだし。


まぁでも、家族が強くなる分には何の問題もないからいいや。

今度ルー兄ちゃんにも教えてみようっと。




──そして翌朝。


朝食を食べ終わると、さっそく父ちゃんが木刀を持って庭で待機していた。

…稽古の始まりのようだ。


「よし、2人共準備はできたな。セリルは今日が初めてだから、剣士がどういうものなのか知るためにも、まずは父さんに打ち込んでこい。一発でも当てたらご褒美をあげるぞ」


まずは実戦訓練をやるらしく、俺に木刀を手渡してきた。

それにしても…ふむ、ご褒美か。

…悪くない。

きっと何か買ってもらえるんだろう、これは本気で戦わなきゃならないな。


「じゃあ僕も本気でやるよ?」

「ハッハッハ!そうだ、本気でかかってこい。もちろんこっちはセリルに攻撃があたる寸前で止めるから、安心しろ。…いつでもかかってこい」


そういうと父ちゃんは距離を取り、木刀を正眼に構えた。

なるほど、まずは俺の攻撃を受けて実力やセンスを測ろうという訳か。


だがこちらも種族は魔王種、魔王ゼリリンなのだ、簡単にやられてやるわけにはいかない。

…主に俺のプライド的に。

それに先手を譲ってもらい時間があるのも好都合だ、魔力操作からの身体強化で限界まで身体能力を高められる。


そしてお互いに構えて10秒ほど、身体強化の効果が完全に行き渡ったところで俺が攻勢に出た。

種族の力と魔法の効果で、実質大人レベルの力を得た3歳児の突撃をくらうがいい。


「せいっ!」

「うおぉっ!とんでもないスピードだな!?…だが、技術はまだまだだ。これでは攻撃が簡単に先読みされてしまうぞ」


魔法の強化により身体能力が爆上げされた俺だったが、直線的な攻撃故に簡単に受け止められてしまった。

…まあそりゃそうか、いくら身体能力があがったとはいえ、相手はそもそも元騎士団員だからね。

技術でもパワーでも向こうの方が上なのだ。


ここは負けるのを承知の上で攻め続けるしかないな、いろいろと勉強させてもらおう。


そして稽古開始から5分後、そこには疲れ果てて地面に突っ伏した俺がいた。

ゼリリン、敗北を知る。




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