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Wrist cut ~人間卒業式~  作者: シュロしん
「人間卒業式」
15/17

15『バイバイ、アリガト。』

 卒業式の終わり。


 私は全部終えた。人間としてできること全部。それまでの十八年間を思い出すと、捨てるのがすごくつらくなる。




 第一のお父さん。


 私の全てだった。母親をすぐに亡くした私にとったら、もうお父さんはただの親じゃなくなってた。だって、『私=お父さん』だったんだよ。


 ねぇ、お父さん。今でも私はお父さんのこと恨んでるよ。ゆるさない。私はお父さんをゆるさないまま、卒業するつもり。


 私を置いていったんだよ? ねぇ、どうして? 私にはお父さんしかないって、一番知ってるのはお父さんじゃん。


 今の私を、お父さんはどう思ってるのかな?


 リスカにすがる私。お父さんの目には、快く映ってないよね?


 曇木夏樹に身を委ねる私。親としては、認められないかな?


 人間を卒業する私。何ともいえないよね? お父さんからもらった『水城綾芽』という自分を捨てるんだから。


 私はリスカとともにお父さんのことも忘れてしまう。けど、つらくはないよ。私はお父さんにすがらなくても生きていける。曇木夏樹がそうしてくれたから。


 じゃあ、さよならだね。お父さん。




 リストカット。


 お父さんの次の、私の全てだった。


 すごく気持ちよかった。リスカをしてるときだけは全部忘れられて、一人でも孤独でも平気で、『リスカ依存症』にもなって。

 苦しかった。自分がおかしくなってるのに、理性じゃ冷静にそれを感じてて。けど、リスカは私に快楽をくれたから。それはお父さんが死んで、曇木夏樹と出会うまで私の生きる(かて)になってくれたから。『ありがとう』って言いたい。


 けど、第二のお父さんと出会ったら、新しい大切なものを見つけたら、快楽は私にとって押し付けがましいものになっちゃったんだ。私にはもうお父さんがいるから。代用品の快楽は、もう必要ないよ。


 だから私は人間卒業してまで、自分もお父さんも捨ててまで『リスカ』と離れることを決めたんだ。


 バイバイ、アリガト。



 そして、第二のお父さん。曇木夏樹。


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