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エストレージャの願いを  作者: 村咲アリミエ
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  行動開始(3)

 アクルはその後、ひとりで朝食をとった。食後は自室に戻り、久々にゆっくりと本を読んだ。なんだか慌ただしい日々が続いたため、いいリラックスになった。そして十一時二十五分、ボスの部屋にたどり着いた。


 黒い扉をノックすると、どうぞと中からボスの声がした。入ると、ソファにはボス、ライン、ギルが座っていた。ボスは相変わらず白いスーツを身にまとっていたが、他の二人は随分とラフな格好をしていた。


 ラインは黒のタンクトップにだぼっとしたズボンをはいていた。筋肉質な肩、腕が出ているが、その全てが白い包帯によって隠されている。しかし、その包帯のせいで、筋肉の線がより際立って見えていた。横目でアクルを捕え、にこりと微笑む。怪しげな魅力に、思わずアクルは視線をギルへと移した。


 ギルは、何の変哲もないTシャツ一枚に、下はジーンズだった。長い紫色の髪の毛は黒に染まっており、いつもより雑に結んである。結わえきれなかった髪の毛が、首元にまとわりついていた。ギルはアクルと目が合うと、よおと右手を挙げて挨拶をした。


「染め直したのか?」

「一日だけ染まるやつだよ。一応俺は変装しておいた方がいいと思ってな。しかし、これはべたべたして嫌だな」


 ギルは髪を指でいじり、そう言った。

 二人は、ボスと対面する位置に座っていた。ボスの右隣りは空いている。アクルはボスに一礼した。

「座って」

「はい」

 アクルは、ボスの隣に腰かけた。ボスはアクルが座ると同時に、話を始めた。


「この二人に、昨日アクルがたてた作戦を話しておいた。今すぐ実行できそうだ。ギルが情報をたくさん集めてくれたんでな」


 その言葉に、おお、とアクルは感嘆の声を挙げる。

「お疲れ、ギル」

「なに、そんなに大変じゃなかったよ」

 ギルは口の端で、にやりと笑った。ボスもにやりと笑うと、話を続けた。


「それでな、二人にラフな格好に着替えて来いと言ったんだ。そしたら見ろ、のりのりだぞ」


 ボスはにやりと笑うと、二人を親指で指差した。ギルは恥ずかしそうに頬を赤らめ、ラインは恥ずかしげもなく、アクルにどうだい? と問いかけた。


「なかなか、若者っぽいだろう?」

「やぁ……本当にかっこいいです」

 アクルはラインの姿をまじまじと見つめた。アクルの舐めるような視線に、ラインはくすくすと笑う。


「ボス、どうしよう。熱い視線が刺さって痛い」

「ライン、お前はお調子者すぎるんだよ」

「そうかなぁ。この姿、ギルもかっこいいって言ってくれたよ?」

「こいつを調子にのさせるな二人とも……って違う」


 ボスは俯きかけた頭をぐい、と持ち上げた。眼差しは、いつもに増して真剣だ。三人も瞬時に、真面目な表情になる。


「いいか、この作戦は一見単純だが、少しでも狂うとやっかいなことになる。相手に察されちゃいけない、うまくうまく、慎重に事を運ばなけりゃいけないんだ」

「大丈夫だよ、ボス。うまくやるさ」

 ラインの言葉に、ボスは不安そうにうなる。

「ライン、余計なことは、するなよ」

「しないって」

 ラインは苦笑する。

「信じてよボス。大丈夫だって、趣味は趣味、仕事は仕事」

「まぁ信じているが……」

「よかった」

「それでも不安なもんは不安なんだよ。まったく、よろしく頼むよ」

「はいはい」


 ラインは立ち上がると、にこりと笑った。それに続き、ギルも立ち上がる。

「じゃぁさっそく、行ってきてもいいかな?」

「あぁ。屋敷に帰ってくるまで、連絡は不要だ。戻ってきたらすぐに連絡をくれ。よろしく頼んだぞ」


 ボスの言葉に、ラインは楽しそうにほほ笑む。ギルもにこりと、小さく笑った。

「お任せあれ」

 二人は声をそろえてそう言った。その声色は、とても頼もしいものだった。


 二人が部屋を出た後、ボスはふうとため息をついた。

「大丈夫そうですね」

「まぁ……なんかイレギュラーなことが起きたら、アクルがどうにかしてくれるだろう?」

「また……」

「あ、そうだ。さっきから、ニールの部屋、工事してるよ」

 ボスの言葉に、アクルは表情を輝かせた。目がきらきらと光っている。

「さっきから、ですか! 随分と早いですね!」

「ギャンに言ったら、すぐにでも取りかかりたいと言うのでね。多分今日中には終わるよ」

「頼もしい!」

「だろう?」

 ニールのおかげで、みんな大活躍だなぁ、とボスは嬉しそうに笑った。


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