作戦(4)
「ねぇねぇ」
アクルの部屋を出て少し歩いたところで、ニールは言った。
「なぁに?」
「どうしたの?」
立ち止り、双子はニールの顔を覗き込む。
「アクルさんとボスって、カップルなんじゃないの?」
その言葉に、双子はおぉと声をあげた。その反応を見て、慌ててニールは撤回する。
「いや、ごめんなさい。なんか、そう思っただけで、聞いちゃいけなかったかな。でもギルさんとアニータさんはカップルだし、そういうのってあると思ってて。ていうか、会ったときからあの二人は恋人同士だと思ってて……」
「ニール賢い!」
「ニール勘がいい!」
双子の言葉に、えっとニールは顔をあげる。
「じゃぁやっぱり……」
「でも違うんだなー」
「でも違うんだよー」
「えっ……」
「アクルさんがね、鈍感なの!」
双子はそう言うと、そろって苦笑した。
「ボスがかわいそうだなって、いつも思ってるの」
「ボスは辛いだろうなって、いつも思ってるの」
言葉にこそしなかったが、ボスの片思いであることを、ニールは悟った。
「そう……なんだ」
「うん。でもね、このことはボスが解決すべき問題だから、私たちは口出しするなって、ラインさんに言われてるんだ」
「そうなの、このことはボスとアクルの問題だから、子供は口出ししちゃいけないんだよ」
「だからね、ときどき私たちはボスを慰めるの」
「だからね、ときどき私たちはボスの話を聞くの」
「それだけだよ」
「それだけなの」
双子はそう言うと、またニールの手を引き、歩き始めた。
「大人の世界は難しいね」
ニールが言った。
「そうだねぇ」
双子は同時に、小さく笑った。