カナリア
愛しい。
傍らに、静かに寝息を立てて眠る
その手が、指が
顔が…唇が。
そのすべてが愛しい。
"金で買えないものなどない"といわれる程、財力も人脈も、
欲しいものそのすべてが思いのままのこの私が…
唯一手に入れられないもの───
こんなに…この胸を苦しめてならない。
それなのに、この想いは許されない。
目覚めれば君はまた、
可愛らしい笑みで、その綺麗な声で、
無邪気に私を呼ぶんだ。
兄様…と。
そのたびに、また私を苦しめる。
この手で何もかも壊してしまいたくなる。
この腕に閉じ込めて…
君を壊したくなる───。
そう…いっそ
壊れてしまえばいい───
戻れなくていい。
愛する君をこの腕に抱けるなら
君を連れていけるのなら
すべて捨ててしまおう…
たとえどんな粛清を受けようとも
たとえ君が涙を流すことになろうとも
私は君を手離さないだろう
さぁ、おいで
私のカナリア
私という名の檻で、美しく鳴かせてあげましょう…