無能と言われて勇者パーティーを追放された……? 〜お前が帰ったら追放にならないだろ?〜
「お前をこのパーティーから追放する」
夕方のギルドにて。
勇者ツイホが冷たくそう言い放つ。
クビ宣告を受けた少年ループは、愕然とした。
「そん、な……理由を教えてよ!」
喉を鳴らし、言葉を絞り出したループを見て、ツイホは大きな溜息を吐いた。
「だからお前は役立たずの無能なんだ。何もパーティーに貢献してこなかったろ?」
「そんな、事……だって……!」
ループは訳が分からなかった。
「はぁー……納得していない顔だな。分かった、じゃあ他のメンバーにも理由を述べてもらおう。それで満足だろ?」
面倒くさそうに頭を掻きながら、ツイホが後ろに控えるメンバーを手招きした。
「こんな事も分からないなんて、邪魔なだけなのよ」
イエスマンな魔法使いミヤイが嘲る。
(今日の昼にスカウトされたばかりなのに……)
「マジ無理ー。てか、目線が無理ー」
ギャル僧侶のチエが軽蔑の眼差しを向ける。
(あ、初めまして)
「空気が読めないもんなー」
指専門の格闘家が苦言を呈する。
(あっ、初めまして!)
「服装が気に食わない」
古着の剣士が睨みを効かせる。
(新品ですいません……)
「なんか、違う」
聖騎士が首を振る。
(理由雑っ)
「それじゃあ勝てないよ?」
魔術師が眉根を寄せる。
(……何に?)
「一緒に鍛えよう!」
英雄が鼓舞する。
(あ、えっ? 応援された?)
「歩き方薄い」
暗殺者がジト目を見せる。
(おう、褒ーめられた……?)
「腹減ってるからよぉ!」
弓使いが怒鳴る。
(ご飯食べてっ!)
「最近、全然良い事無い」
料理長が儚げだ。
(働き方改革っ!)
「靴汚い」
ファッショニスタが嫌味を言う。
(……それはほんとにすいません)
「雨降ってんのに傘忘れた」
シャーマンが溜息を吐く。
「はははははははっ!」
受付嬢が高笑いした。
(疲れてるんだ……)
「ほんとにお前ってやつは……」
ループの父が腕を組んでいる。
(――お 父 さ ん!)
「給料低すぎー」
盗人が愚痴をこぼす。
(歩合制かぁ)
「最近関節痛くてさぁ」
司書が肩を鳴らす。
(重たいんだね? 本が?)
「顔付きが、ねぇ?」
マダムが目配せしてくる。
(ははっ……ねぇ?)
「うーーーん」
誰か背伸びした。
(……ねぇ?)
「傘、忘れた」
(シャーマン根に持ってた! シカト根に持ってたぁ!)
「爪……切りたい」
美容師がボソッと呟く。
(あ、汚いじゃなくて切りたい? 癖?)
「青色嫌い」
男。
「壺磨くわ」
女。
「歯に挟まってんだよ」
双子兄。
「脱毛し〜た〜い〜」
双子弟。
「ーー・・ー・ー・・・ー」
(ねぇっ?)
「と言う訳だ。今のンウンバルヌン・ルンスンババニンなんて、完璧な理由を教えてくれていたぞ」
やれやれと首を振ったツイホ見るループの目は、何処か遠くを映していた。
(もう最後のが人なのか詠唱なのかさえも分からない……)
「さて、これでお前が追放される事に納得しただろ?」
「いや……まぁ、逆に、はい。もう、良いかなって」
『お世話になりました?』と首を傾げながら、ループは出口に向かって歩き出す。
が、ツイホが肩をキュッと掴んできた。
尋常では無い握力の弱さだ。
「おい、何勝手に帰ろうとしてんだ。お前は追放するって言ってんだろ?」
「は?……あ、いや……え?」
「はぁー。これだから無能ってやつは……いいか、お前が帰ったら、追放にならないだろ?」
(お前が帰ったら追放にならないだろ?)
「お前は追放、この事実は変わらない。だから、お前を追放すると、言っているんだ。それが本当の追放だろ?」
(この人は何を言ってるの?)
「よって、明日もここに集合だ。朝からいくぞ」
「……明日?」
ループの疑問には誰も答えない。
勇者パーティーの面々は不満げな表情をしながら、一人、また一人と帰っていく。
唖然としながら全員を見送っていたら、明け方になっていた。
(……追放は?)
魔王を倒すべく、国内から集まった勇者パーティー総勢284名。
まだまだ、追放理由は残っている。
「言い忘れてたけどさぁ! あのガム買っとけよな!」
数時間前文句を言えなかった鬱憤を晴らしに、魔王が捨て台詞を吐いていった。
(あえ、えっ、魔王もいた! てか勇者パーティーなのに英雄もいた!)
少年ループの追放は、まだ始まったばかり。




