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無能と言われて勇者パーティーを追放された……? 〜お前が帰ったら追放にならないだろ?〜

作者: 竜ノ塚
掲載日:2026/01/30

「お前をこのパーティーから追放する」


 夕方のギルドにて。

 勇者ツイホが冷たくそう言い放つ。

 クビ宣告を受けた少年ループは、愕然とした。


「そん、な……理由を教えてよ!」


 喉を鳴らし、言葉を絞り出したループを見て、ツイホは大きな溜息を吐いた。


「だからお前は役立たずの無能なんだ。何もパーティーに貢献してこなかったろ?」


「そんな、事……だって……!」


 ループは訳が分からなかった。


「はぁー……納得していない顔だな。分かった、じゃあ他のメンバーにも理由を述べてもらおう。それで満足だろ?」


 面倒くさそうに頭を掻きながら、ツイホが後ろに控えるメンバーを手招きした。


「こんな事も分からないなんて、邪魔なだけなのよ」


 イエスマンな魔法使いミヤイが嘲る。


(今日の昼にスカウトされたばかりなのに……)


「マジ無理ー。てか、目線が無理ー」


 ギャル僧侶のチエが軽蔑の眼差しを向ける。


(あ、初めまして)


「空気が読めないもんなー」


 指専門の格闘家が苦言を呈する。


(あっ、初めまして!)


「服装が気に食わない」


 古着の剣士が睨みを効かせる。


(新品ですいません……)


「なんか、違う」


 聖騎士が首を振る。


(理由雑っ)


「それじゃあ勝てないよ?」


 魔術師が眉根を寄せる。


(……何に?)


「一緒に鍛えよう!」


 英雄が鼓舞する。


(あ、えっ? 応援された?)


「歩き方薄い」


 暗殺者がジト目を見せる。


(おう、褒ーめられた……?)


「腹減ってるからよぉ!」


 弓使いが怒鳴る。


(ご飯食べてっ!)


「最近、全然良い事無い」


 料理長が儚げだ。


(働き方改革っ!)


「靴汚い」


 ファッショニスタが嫌味を言う。


(……それはほんとにすいません)


「雨降ってんのに傘忘れた」


 シャーマンが溜息を吐く。


「はははははははっ!」


 受付嬢が高笑いした。


(疲れてるんだ……)


「ほんとにお前ってやつは……」


 ループの父が腕を組んでいる。


(――お 父 さ ん!)


「給料低すぎー」


 盗人が愚痴をこぼす。


(歩合制かぁ)


「最近関節痛くてさぁ」


 司書が肩を鳴らす。


(重たいんだね? 本が?)


「顔付きが、ねぇ?」


 マダムが目配せしてくる。


(ははっ……ねぇ?)


「うーーーん」


 誰か背伸びした。


(……ねぇ?)


「傘、忘れた」


(シャーマン根に持ってた! シカト根に持ってたぁ!)


「爪……切りたい」


 美容師がボソッと呟く。


(あ、汚いじゃなくて切りたい? 癖?)


「青色嫌い」

 男。

「壺磨くわ」

 女。

「歯に挟まってんだよ」

 双子兄。

「脱毛し〜た〜い〜」

 双子弟。

「ーー・・ー・ー・・・ー」


(ねぇっ?)


「と言う訳だ。今のンウンバルヌン・ルンスンババニンなんて、完璧な理由を教えてくれていたぞ」


 やれやれと首を振ったツイホ見るループの目は、何処か遠くを映していた。


(もう最後のが人なのか詠唱なのかさえも分からない……)


「さて、これでお前が追放される事に納得しただろ?」


「いや……まぁ、逆に、はい。もう、良いかなって」


『お世話になりました?』と首を傾げながら、ループは出口に向かって歩き出す。

 が、ツイホが肩をキュッと掴んできた。

 尋常では無い握力の弱さだ。


「おい、何勝手に帰ろうとしてんだ。お前は追放するって言ってんだろ?」


「は?……あ、いや……え?」


「はぁー。これだから無能ってやつは……いいか、お前が帰ったら、追放にならないだろ?」


(お前が帰ったら追放にならないだろ?)


「お前は追放、この事実は変わらない。だから、お前を追放すると、言っているんだ。それが本当の追放だろ?」


(この人は何を言ってるの?)


「よって、明日もここに集合だ。朝からいくぞ」


「……明日?」


 ループの疑問には誰も答えない。

 勇者パーティーの面々は不満げな表情をしながら、一人、また一人と帰っていく。

 唖然としながら全員を見送っていたら、明け方になっていた。


(……追放は?)


 魔王を倒すべく、国内から集まった勇者パーティー総勢284名。

 まだまだ、追放理由は残っている。


「言い忘れてたけどさぁ! あのガム買っとけよな!」


 数時間前文句を言えなかった鬱憤を晴らしに、魔王が捨て台詞を吐いていった。


(あえ、えっ、魔王もいた! てか勇者パーティーなのに英雄もいた!)


 少年ループの追放は、まだ始まったばかり。

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