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 街がある。


 この街に人はいない。


 街だけがあった。


 荒涼とした無機質な世界に、その街は、ポツンとあった。


 街には、ロボットと機械と電子回路と、それによるシステムだけが動いていた。


 人はみな死んでしまっていた。人だけでなく、植物も含め、ありとあらゆる生命が死んでいた。生き物だけを殺す新型爆弾で、この星に生きる生命はことごとくみんな死んでしまっていた。


 だから、街だけがある。


 街はすべてロボットと機械で自動化されていて、人間にとっての最適快が常に維持されていた。


 しかし、その人間はもう誰一人としていない。

 

 今日も機械だけが動いている。


 生命の音もなく、生命の息吹きもなく、生命の躍動も笑顔も歌も喜びも悲しみも何もない。


 匂いもなく、そこには鉱物のような無味乾燥した風が吹いているだけ――。



 ただ機械だけが機械的に動いている街。



 人間にとって最高の快適と秩序を作り出すようにプログラミングされた機械が、そのプログラミング通りにただ動く街。


 かつてここには、偉い人がいて、優秀な人がいた。特別な人がいて、有名な人がいた。お金持ちがいて、美しい人がいた。


 今はもう誰もいない。


 かつてここには戦争があり、平和があった。犯罪があり、法律があった。名誉があり、孤独があった。革命があり、秩序があった。神様がいて、核兵器があった。都市があり、自然があった。


 でも、今は何もない。


 街だけがある。



 機械やロボットは自己修復能力があり、壊れても自分で修理することができた。エネルギーも自然から自分たちで作り出し、供給できた。だから、これから、地球が滅びるまで、このシステムは、とまることなく半永久的に動き続ける。


 すべての生命がいなくなったこの星の中で、この街だけがこれからもずっとあり続ける。



 ―――



 今日も、規則正しく機械とロボットと電子回路だけが動き続けている。宇宙の片隅でこのシステムだけが、永続的にこれからも延々と動き続けていく――。


 

                               おわり



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