にのさん
──チリンチリン……。
「──おや、お前さんが約束の時間より前に来るとは……明日は雪かのう」
ん?
お店の中に入ってすぐ、お店の奥から老年の男性の声が響いてきた。
どうも約束をしていた人物と間違えているようだ。
「なんじゃ、今日はやけに大人しいのう……ぬ?」
このお店の店主であろう老年の男性は相手の反応がいつもと違うことに気付いたのか、顔を作業をしている手元から上げてこちらを見る。
「これは、失敬。何分、ここ数年は直接店に来る客はめっきりじゃったから、約束を交わしていた相手と勘違いしてしまったわい。お嬢さん方、ゆっくり見ていってくださいな」
「あ、はい、お邪魔します」
やっぱり、人違いをしていたようだ。
しかし、ここ数年お店に客が来ないなんて、この街では珍しい。ネット通販が主流な現代でも、この街では飲食物以外でも客側がお店に出向く傾向があるのに。何でだろうか?
……ま、考えても詮無き事だし、いいか。
ぐるりと店内を見回すと、陳列棚には様々な置物や箱が並んでいた。
なんていうか、想像していたのとは違った。
てっきり、店内にはオルゴールがびっしり所狭しと並んでいるものとばかりに思っていたのに……。
肝心要のオルゴールは店主のお爺さんが作業している場所の手前にあるショーケース内に有るだけだ。しかも、置かれている数も少ない。
──チリンチリン……。
「おーい、爺さんいるか?」
「ようやっと来よったか」
しばらく陳列棚に並ぶ箱を眺めていると、お店のドアが開いて一人の男性が店内に入ってきた。
「『なぁ、カレン。この声──』」
「うん、聞き覚えがあるね──」
ギーペに指摘されるまでもなく、今お店に入ってきた男性の声に心当たりがあった。
「わりぃ、わりぃ。約束の時間まで暇があったから、ちょこっとナンパしてたらいつの間にか時間を過ぎちまってた」
この男性と長年友人である詩音さん曰く「ナンパが成功したところを見た事がない」そうだ。
「あり? なんだよ、爺さん。客がいるなら「いる」って言ってくれよな」
「別にお前さんには客が居ようが居まいが、関係なかろうに」
「そりゃ、そうだけどさ。これでも有名人だから、変なウワサ流されると困るんだよ」
「よく言うわい。今更、お前さんの変な噂が一つ二つ流れても誰も驚きはせん」
「『そうだぜ。“ああ、なんだ、またか”ってスルーされるのがオチ。しかし、こんだけで済まされるなんて、ある意味大物の証だぞ!』」
「そうじゃぞ。お前さんに世界が認めるだけの曲を書く才能が無かったら、今頃は社会的に抹殺されて引き籠もり人生まっしぐらじゃっただろう」
「『違いねぇ。オレ様も店主の言い分に同意だ!』」
「おいおい、爺さんたち、もう少し言い方ってもんがあるだろッ?! 変な誤解を生むじゃねーか! ──……あ? “たち”??」
男性は店主との言葉の応酬の中に闖入者がいることに気付き、店内のそこかしこを見回す。
されど、闖入者であるギーペの姿を見付けることが出来ずに怪訝な顔をする男性。
「『ハッ。貴様の眼は節穴か? 鳥の中で最もぷりちーなペンギンの中でも更にぷりちーなこのオレ様を見付けられぬとは! 所詮、曲作り以外は能ナシのちゃらんぽらんだな!』」
ギーペは男性が自身を見付けられないことを鼻で笑ってこき下ろす。
男性の方も虚仮にされたことが頭にきたようで、
「そっちこそ、『喋れる』だけしか能がねーのに図に乗るなよ、エロペンギンが! 姿を見せやがれっ!!」
挑発に応じる。
しかし、男性の挑発にギーペは微動する事もなく、わたしの腕の中で笑いを噛み殺しながら、さらなる挑発にでる。
「『笑止、貴様は今ので言い返したつもりだろうが、猿真似にもなってねぇーぞ! まぁ、ペンネームに音色 奏なんて、ネーミングセンスの欠片もねぇ名前を付けるくらいだから、仕方ねぇーか。カッカッカッ……』」
「ぐぬぬぬッ……。言いたい放題言いやがって。テメェーこそ隠れないで出てこい! それともなにか? テメェーはコソコソ隠れてないと威張り散らすこともできないのか?!」
「『ハッハッハッ……。さっき、オレ様は言った筈だぞ? “貴様の眼は節穴か?”と』」
「……クソッ!」
ギーペのさらなる挑発に音色さんは血眼になってギーペの姿を捜すも、わたしの体が壁になって音色さんの視界からギーペを隠し、音色さんはギーペを見付けるに至らない。
「『ホラ、どうしたどうした。まだ、オレ様を見付けられないのか? んんー?』」
さらに音色さんを煽るギーペ。
それにしても、店主のお爺さんにはどうも茶目っ気があるみたいだ。
ギーペが何処に居るのかを知っているのに、音色さんに教える素振りもなく、ギーペと音色さんのやりとりの成り行きを面白可笑しいと笑いながら見守っている。
「『ん~……、そうだな~……。そろそろ貴様で遊ぶのも飽きてきたし、店主にこれ以上迷惑をかけるのもいただけない。だから、あと三分だ。今から三分以内に貴様がオレ様のことを見付けられなかったら、貴様のペンネームは以後“チャラポン”な!』」
悪どい嗤いを溢しながら、ギーペは一方的に賭け事を音色さんに押し付けた。
無論、音色さんとしてはそんなものはのめるはずもなく、ギーペに噛み付いていく。
「ハァ~ッ?! チャラポン?」
「『そうだ、チャラポンだ! 味気ねぇ、現在の名前よりは愛嬌があるだろ?』」
「──うくっ……!」
……うん、愛嬌という部分だけで考えれば、チャラポンという音の響きにはありそうだ。
「『──今──一瞬でも、“そうかも”って思ったろ?』」
「ななな、なにをバカ言ってやがる!? そそそんな訳ねーしッ!」
いや、音色さん……吃りながら否定しても、説得力に欠けますよ。
「『ククク……。しかし、悠長にオレ様と会話を楽しんでいていいのか、チャラポン?』」
「どういう意味だ!?」
「『あと三分って、言ったろ?』」
「アホか! こっちが了承していないのに、そんな賭け事が成立すりわけないだろうがっ!!」
あー、音色さん、正論に気付いた。
でも、ギーペの方も、その返しは想定済みのようで、
「『そうか? オレ様はこのチャラポンは貴様に合う新しいペンネームだと思うんだ。故に、貴様が現在進行中の賭けを放棄すると言うなら、貴様がペンネームをチャラポンに改名せざるを得ない状況に如何なる手段を用いても追いやるだけのこと』」
強行手段をちらつかせての脅しで、音色さんを揺さ振る。
「チッ。エロペンギンの分際で、なんて狡猾なんだ。…………いいだろう、その賭けに乗ってやるよっ!」
「『フッ。そうこなくてはなっ!』」
「ところで、賭けなんだからこっちが勝ったら、何か景品みたいなものはあるのか?」
「『ああ、考えてあるぞ。尤も、“オレ様を見付けなきゃ”お目にもかかれないがな! 因みに既に針は一周りしちまってるぜ!』」
はてさて、その場の思い付きで始めた賭け事で、音色さんが勝った場合の景品って……?
それはさて置き、ギーペは強気に出たものだ。
わたしの腕に巻かれた十二の人工宝石が文字盤を飾るアナログ式腕時計を見ながらギーペは音色さんに経過時間を伝えた。
これは明らかな音色さんへのヒント。
何故なら、このお店の中にも時計はあるけど、秒針が無い。なので、音色さんがコレに気付けるかどうかが鍵になってくる。
「──たくっ……、何処に隠れてやがる、エロペンギン?!」
「『ホレホレ、もうすぐ針が二周するぞ!』」
囃し立てるギーペ。
音色さんも負けじと、お店内の隅から隅まで捜すが、音色さんは未だギーペを見付けられない。
「──捜せる範囲は捜したのに何で見付からないんだ……?」
ここにきて音色さんはいくら捜しても見付からないことに疑問が生じたようで、動きを止める。
「『お!? なんだ、降参か?』」
「──……いや、何でテメェが見付からねーかの謎を解いてた」
「『ほお~──それで?』」
どうやら、音色さんはギーペが出したヒントに気付いて答えを出したみたい。
後は音色さんが時間切れ前にギーペを見付けられれば、音色さんの勝ちだ。
「──ああ、そして、謎はすべて解けた!」
音色さんはテンプレートな創作探偵よろしく、ありきたりなセリフと共に自信を漲らせていた。
そして、────
「ふ、ふはははは……! エロペンギン、テメェが隠れているのは────其処だーーーーっ!!」
────そして、勝利を確信した笑い声を上げながら音色さんは、───
──みぃの身体検査を始めた!──
はい?
そう、音色さんはみぃに一言断りを入れると、みぃの──夏毛とはいえ──ふさふさの毛並みの中を探りだしたのだ。
それは、まさにギーペの思うツボ。音色さんはまんまと、それに引っ掛かってしまった。
あー……うん、てっきりわたしは音色さんがギーペのヒントに気付いたと思ったけど、勘違いだったようだ。
必死にみぃの身体中を触ってギーペを捜す音色さん。だけど、当のギーペはわたしの腕の中。
しかも、今度はギーペが自身の勝利を確信したようで、ほくそ笑む。
「あり? おかしいな……? エロペンギンの奴、みぃの体を盾にして隠れていると思ったんだが……──」
残念、音色さん。
これはギーペの作戦勝ちかな。
陳列棚に並べられている箱の蓋の裏にある鏡から腕時計へ目を落とすと、秒針が残り十五秒を切った。
「『──……あと、十三……──』」
勝利へのカウントダウンを始めるギーペ。
すぐ隣りではギーペの通告に、安易に賭けに乗ったことへの後悔の念にかられる音色さん。
「やべー、よくよく考えたら、これからペンネームがチャラポンとか、いい笑い者だよな~……──……ハァ~……」
悲嘆にくれて力が抜けたのか、音色さんがぐらりとよろめいた。
──それは、偶然。もしくは土壇場で勝利の女神が、心変わりしたのだろう──
「──あ! すみません」
「……いえ、大丈夫ですので、お構い無く」
よろめいた拍子に音色さんはわたしにぶつかった。
さして強い衝撃ではなかったので、わたしの立っている場所が一歩ほどズレた以外は他には被害も皆無。
ただし、────
「『なッ!?』」
「アっ!?」
──一羽と一人の視線が交差した。──
残り僅か──二秒。
音色さんの逆転勝利。
しかし、場の空気は勝利の歓喜に湧くことはなく、嵐の前の静けさに包まれた。
「おい、エロペンギン。見ず知らずの客を巻き込むだけでなく、剰え抱っこさせるだなんて、理由如何に関わらず赦し難く万死に値するっ! 即刻、おれ自らが成敗してくれるから、其処に直れいっ!!」
吹き荒ぶテンペスト。
けれど、悲しいかな。
音色さんが巻き起こした嵐は見当違いな上に、この場にぽか~んとした雰囲気を置き土産にしていった。
さらに、第三者である店主のお爺さんからは、
「……こりゃ、お前さんは儂を笑い死なす気か?!……」
言外に喜劇と評される始末。
なんとも言えない空気の中に、店主のお爺さんの笑い声だけが響く。
「『なぁ、チャラポン、貴様の眼はマジで節穴か……?』」
「ナ~ニィ?! つーか、おれが賭けに勝ったんだから、チャラポン言うなっ!」
「『はて? オレ様は賭けにペンネームの改名を持ち掛けたが、オレ様が貴様の呼び方を元に戻すとは一言も言ってないぞ。──ま、この話は今は捨て置いて、先のチャラポンの阿保な発言についての話だ』」
「……な、なんだとー!? それに、阿保とは何だ、阿保とは?!」
「『だから、貴様は阿保なのだ。話を戻すが、貴様の発言の中に有った“見ず知らずの客”とは誰のこと、だ?』」
「……は? そんなの今現在進行形でエロペンギンを抱っこさせられている……──っ!!」
音色さんはようやく気付いたようで、わたしの顔をマジマジと見てくる。
「──ああーっ! カレンちゃん?!」
「どうも。こんにちは、音色さん」
「あ……ああ、こんにちは。……しかし──」
ん? 何だろうか?
音色さんはさっきとは違った視線で、わたしを見てくる。
「……あのー、何か?」
「あ、いや、なに、私服姿のカレンちゃんを見るのは初めてだったから、つい……ね」
言われてみれば、音色さんとは詩音さんの付き添い等々で『お店』の制服姿でしか会ったことはなかった。
「そうですか」
「うんうん、『お店』の制服姿も可愛いけど、私服姿も可愛いね♪」
うわー、出た。音色さん自慢のキラースマイル。
音色さん本人は気付いていないけど、胡散臭さが出て、音色さんのナンパが失敗に終わる素。
「ありがとうございます、お世辞でも嬉しいです。ところで、用事はいいんですか?」
ギーペがちょっかいを出して、ドタバタになったけど、そもそも音色さんは店主のお爺さんに用があって来たはず。
店主のお爺さんも音色さんが来るのを待っていたみたいだし。
「……あ! ああ、そうだった、そうだった」
「そういえば、そうじゃったのう。電子の楽曲データは何時も通りアップしておいてくれ」
「あいよ」
音色さんは店主のお爺さんがいる場所の前にあるショーケースの横に鎮座している機械に近付くと、懐からメモリーを取出して機械の接続端末に接続して機械を操作しだした。
「あのー、何をやってるんですか?」
気になったので横合いから覗かせてもらう。
「ん、ああ、電子オルゴール用に編曲した楽曲をこの機械にアップしてるんだ。で、ここにアップされた楽曲は電子オルゴールに別途料金でダウンロード出来るって仕組みだ」
「なるほど」
「試聴も出来るから、幾つか聴いてみるかい?」
「あ、はい」
場所を譲ってもらい、今度は横合いにいる音色さんから機械の操作を教えてもらいながら、機械にアップされている楽曲を試聴していく。
「『なあ、チャラポン。この機械に入ってる曲はチャラポンが全部作ったのか?』」
「まさか、殆んどは著作権切れの古い曲さ。おれのオリジナル曲はこっちの別カテゴリーに分けてある」
音色さんの操作で新しい曲目のリストが表示される。
それらは初めて目にする曲の題名ばかりだが、中にはわたしでも知っている曲が何曲もあった。
「どうよ! おれ作曲の楽曲のオルゴールVer.はここの端末かこの店の通販サイトでしか試聴できないんだぜ!」
「そうなんですか!」
さっそく知っている曲や知らない曲を何曲か試聴してみる。
──~♪~♪~♪~♪…………
「カレンちゃん、どうだい?」
「はい、知っている曲もオルゴール調だとちょっと違った味が出るんですね」
「まぁーね。でも、其処がオルゴールのいいところ、ってやつさ」
さて、次はどの曲を試聴しようかな?
……。
…………。
………………ん?
「あの、音色さん」
「なんだい?」
「この曲、題名が無いみたいですけど、どうしてですか?」
「どれ、……ああ、これか。これは────」
とりあえず、どんな曲か試聴してみよう。
──~♪~~♪~♪~~♪……
流れてきた旋律は素人耳ながら、さっき聴いた曲々とはなんだか毛色が違う。
「────確か……あ! あー、思い出した! これの原曲は詩音の奴が『この主旋律に合うギターでの伴奏パートを作ってくれ』って持ち込んできたヤツなんだ。それで、その時にたまたまこっちの仕事をしてて、いい曲だったからついでに編曲したんだ。だけど、詩音が持ってきた曲だし“勝手に題名は付けられないな”って題名を付けないままにしたんだよ」
「なるほど、そうだったんですか」
「そう」
でも、聴いたことがある詩音さんが作った曲とも微妙に違うような……?
うーん……、ま、いいか。
さて、一通り気になった曲も試聴したし、これからどうしようかな?
……そういえば、お昼まだだったっけ。
それにしても、せっかく気に入った容れ物は見付けたけど、曲が色々あり過ぎてオルゴールの曲が直ぐには選べそうにない。それに、オルゴール本体もオーソドックスの方と決めてはいるけれど、ぜんまい式か自動式かでまだ迷っている。
なので、名残惜しいけど今回は諦める。
次に来た来店したときには必ずオルゴールを買おうと心に決め、そろそろお暇しよう。
「さてと、それじゃ遅めの昼食を食べに行こっか」
「『うむ、そうだな』」
「……」
──コクリ。
「それじゃ、お爺さん、お邪魔しました」
──チリンチリン……。
音色さんと会話中の店主のお爺さんに一言挨拶をして、わたしたちはオルゴール屋を後にする。
──チリンチリン……。
「ちょっと、カレンちゃん、待って」
ん?
わたしたちがお店出てすぐ、追いかけるようにオルゴール屋のドアが開かれて、音色さんが飛び出してきた。
「はー、何でしょうか?」
「いやさ、さっきお昼を食べに行くって言ってたじゃない?」
「はい、そうですが……」
「よかったら、一緒してもいいかな? おれも昼飯まだなんだ」
「そうなんですか、わたしは別に構いません。が、ギーペたちがOKすればですけど?」
「そうか!
──なあ、エロペンギン。おれも一緒にお前らと昼飯食っていいか?」
「『ああ。チャラポンが奢るなら、同席をさせてやろう』」
「……」
──コクコク。
「かー、ちゃっかりしてやがる……。だが、いいぜ」
「いいんですか?」
「モチロンさ。古い考えだけど、こういう場合は男が持つものだからね」
「……じゃあ、お言葉に甘えて」
「『よかったな、チャラポン。これで、ナンパの連敗記録ストップ&初成功だ!』」
「ああ。チートぎりぎりだが、人生初のナンパ成功だ! ──って、何を言わせやがるっ!?」
「ナンパ──だったんですか?」
わたしとしては、音色さんからのナンパという意識はなかったのだけど……。
ナンパなら…………やっぱり、ここは断っておいた方がいいのかな??
「……えっと、……その……長年の記録を途切れさせるのは悪いので、────」
「──ッ!? チョ、チョット待って、カレンちゃん。今のはノーカン、ノーカウントだから。ね、気を遣わなくても大丈夫だから」
「そうですか?」
「うんうん、そう」
「…………よかった。正直、音色さんからナンパされたとは思わなかったので」
「……あ、ああ、おれもフェアじゃないのは良しとはしないからね……アハハ……ハァ~」
さてと、話も丸く収まったことだし、
「それじゃ、出発しましょう」
バス停が在る通りまで出るために、わたしは踵を返して来た道を戻ろうと一歩を踏み出す。
「あー、カレンちゃん、こっちにすぐに大通りに抜けられる『道』があるよ。
爺さんの店はさ、立地だけ見ると大通りからかなり近いんだけど、『道』を通らずに地図ナビを使って来ようとするとすんげー遠回りになるんだよ。お陰で直接店に来る客足はばったりでさ……──」