さんのよん
──ビーッ。ビーッ。ビーッ。ビーッ。ビーッ。…………
『『門』ガ開キマス。『門』ガ開キマス。大変危険デスノデ、『門』ルーム内ニイル方ハ速ヤカニ黄色イ線ノ外側マデ、オ下ガリクダサイ。『門』ガ開キマ…………──』
突如、響き渡る警告音と機械音声のアナウンス。
成る程。黄色い線は転落防止ドア設置が完全義務化されるより昔の鉄道のホームに在ったとされるものと同じものだったのか。
──それにしても、『『門』が開く』とはどういう意味だろうか? 幾何学的紋様が描かれている床が開いて、下から何かがせり上がってくるのだろうか……?
……………………。
「「「…………」」」
突然のアラートと警告に足を止めてしまったアタシたちは、一瞬「どうするか?」とアイコンタクトを取るも全員一致で────────黄色い線の外側へ無言でダッシュ!
ルーム内の壁際まで退避したアタシたち。いまだアラートは続き緊迫感を煽る。
────そして、アラートが響く中で、ソレは起きた。
目測なので不確かではあるけれど、床に描かれている幾何学的紋様の中心点の宙空──天井近く──に1点の輝りが顕れ、輝りは輪っかとなって拡がり、宙空に真円を描く。
さらに、真円になった輝りの円の内側がみるみるうちに極彩色に染まったかと思うと、穴が開いたみたいに“向こう側”の景色が顔を覗かせた。
──コレって、もしかしてワームホール!?
────────其処から、シャボン玉みたいな透明で球状な膜の中に入った人達が降り出てくる。
「──っ!?」
それを見た副店長は息を呑むと、直ぐにでも動けるように身構える。
人を中に入れたシャボン玉はゆっくりと輝りの輪っかを通過して、その全容をアタシたちに見せる。
シャボン玉の中に見える人影は2つ。
それと同時に身構えていた副店長が構えを解いて、ホッと胸を撫で下ろした。
その理由は言うまでもなく、シャボン玉の中に居る人物達がアタシたちが知っている人物たちだったから。
──そう、シャボン玉の中に入ってワームホールを潜り抜けてきたのは────
────1人は大胆不敵を体現したような笑みを湛え、もう1人は手に常日頃から持ち歩いている愛用の楽器を納めたアタッシュケースを持っている────
────一卵性双子の希ちゃんと叶ちゃんだった。
今日は双子コーデのようで、色以外は全く同じ。希ちゃんは黄色系で叶ちゃんは赤色系。もし、2人とも同色の完璧な双子コーデだったなら、アタシじゃ見分けが付かない。
希ちゃんたちを包んでいるシャボン玉は床に着地すると、天辺から徐々に空気に溶けていくかのように消えていった。
さらに、天井付近に開いたワームホールもシャボン玉の消滅に追随するかのように輝りの輪が縮まり最初に顕れた輝りの点になると終には音も無く消えて、アラートも鳴り止んだ。
「あれ? 音恋さんに詩音さんときびちゃんじゃない。どうしたの、こんなところに?」
「──それはこっちの台詞だよ。……それと、今の……ナニ?」
「ん? “ナニ?”って、転移……装置での転移。詳細は省くけど、あたしが知ってる『場所』にあったものをセイメイに修復してもらったのよ」
「修復をした安部君からは「転移先が不明ですから、使用は止した方が……──?」って言われたんですけど……。ほら、希って興味を持ったら猪突猛進の一直線でしょ。ボクも最初は安部君と同じく反対はしたんです」
──はて? 店長と希ちゃんの詞の一部に変な間があったけど……、どうして2人ともその時にアタシの方を見たのだろうか?
…………いや、今は余計な事を考えるのは止そう。さっき、副店長が口にした通り現在は最優先事項があるんだから。
「──……そう。で、改めて訊くけど、二人はどうして此処に?」
「あたしは気分転換と叶の付き添い。で、叶は──」
「──ボクは主にフルートの練習を目一杯するため。ココって、歌音ちゃん以外は他に人が来なかったから、人目とかを気にしなくてもいいし」
「そう……成る程ね」
「それで、音恋さんたちはどうして此処に?」
「私たちは──あ、きびちゃんは別ね──依頼中に中央地区中央公園のドームの調査をしていたら、偶然にもドアが開いてね、それで契約上致し方なくドームの中の調査をし始めたら、歌音ちゃんたちが“ドームの中”に居るのを知って、此処の安全性が不明だから至急保護する為に現在行軍中なワケ」
「そうだったんですか。……へぇ~、ココって中央地区の中央公園のドームの中だったのね……」
「音恋さん、安全性なら大丈夫ですよ。ボクたち此処には何度も来てますが、これまで危険なことはありませんでした。それに、希がカメラをレンタルしてきて定点監視した結果──ボクたち以外の出入りする人物はいませんでしたから。まあ、後に歌音ちゃんが別の場所の転移装置で此処に来るようになりましたが」
「そう、わかったわ。希と叶の言葉を信じないわけじゃないけれど、でも、私たちは直に目にしたわけじゃないから、今日のところは歌音ちゃんたちを保護しに行くわ。あー、あと、さっき叶が言った定点カメラで監視したときのデータが残っているなら提出してもらえる?」
「はい、いいですよ」
あっという間のネタばらしな急展開。
希ちゃんたちからもたらされた情報は、不確定ながらにもアタシたちに安心安堵感を与えるには充分な素材だった。
おかげで、アタシの緊張感は霧散してしまい何だか拍子抜け。
未知に対する興味と好奇心と恐怖によって擽られた冒険心は行き場を失い、宙ぶらりん状態。
アタシ的には消化不良な感じ。
────それからは特筆するような事柄も無く、気になった事や腑に落ちない点などが多々有ったけれども、アタシたちは無事に彼(?)御一行さまと歌音ちゃんを保護して、ドーム内から撤退したのだった。────────




