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ねこの手、貸します。 夏  作者: 白月 仄
にゃん二章 とある夏の一日に
10/22

にのよん

「『いや~、まさか世界的に名前が知れ渡っているチャラポンより、オレ様たちの方が写真を撮られた回数多かったとはな~♪』」

「……」

 ──コクコク。

「…………なんか納得いかねー。みぃはともかく、エロペンギンより撮られた回数が少ないなんて……」

 東地区に移動して昼食を音色さんに奢ってもらったわたしたちは、その後、散策がてら食べ歩きをしていた。

 そうしていたら、みぃを目にした通りすがりの観光客の一組みが写真を撮らせてほしいと声を掛けてきたのだ。

 まぁ、急いでる訳でなし、軽い気持ちで撮影をOKしたら──どうも、他の人達も、みぃのことが気になっていたみたいで、せきを切ったように瞬く間に人集りになってしまった。さらにその場に音色さんも居たことで、僅かばかり人数が追加算され、その場の勢いでしばらくの間ゲリラ撮影会が行われたのだった。

 そして、ようやくゲリラ撮影会から解放されたわたしたちは、東地区を後にして中央地区の中央公園へとやって来て、現在、一息を吐いている。

「『ハッハーっ! オレ様のぷりちーさの前では、チャラポンのネームバリューなど取るに足らんのだッ!!』」

「えーっと……、あのぅ、これはわたしなりの憶測なんですが、動物園等以外でペンギンを生で見られるなんて普通ではまずありませんから、それでではないでしょうか」

   ──~~♪……

 ……?

「っ!? ……、……ナルホドね。そうだよな。ああ、そうだよ。エロペンギンにレアな付加価値が付かなきゃ、おれの方が撮影対象として引く手あまただったハズさ!」

「『ハッ。減らず口を!

 ──つーか、なんでチャラポンはまだオレ様たちと一緒にいるのだ?』」

   ──~~♪~♪……

 ……? 気のせい……??

「なんで、って、そいつは────」

「『ま、大方、カレンを彼女に見立てての疑似デートを堪能したかったって辺りだろ』」

「──ぎくッ!? そ、そそんなワケねーし!」

   ──~~♪……

 ──ッ!? 気のせいじやない!

 ──でも、──何処から?

「た、たまたま、行き先が重なっただけだし……」

「『ほぉ~、見え透いた方便だな』」

「ホントだって────ん? カレンちゃん、周りを見回して、どうしたの?」

「…………はい、さっきから、──歌──そう、歌声が聞こえませんか?」

「歌? …………。あー、確かに聞こえる」

「『なんだ、カレンも聞こえてたのか』」

「……」

 ──コクコク。

 どうやら、みんなにも聞こえてるみたい。

「……そういや、二ヶ月くらい前から中央公園のドームエリア付近で歌っている人が見当たらないのに何処からともなく歌声が聞こえるっていうウワサが立ってたな。これが、ソレか」

 へぇ~、そんな噂があったんだ。

 ──中央公園のドームエリア。聞いた話では、ドームエリアにあるドームは清美市が出来る前の極秘研究施設群の名残らしく、当初の設計では取り壊される予定だったとか。しかし、不可思議な力で保護されていて、取り壊しはおろか傷一つ付けられず、やむなく公園の一部として組み込まれたのだそうだ。

「……うーん、聞こえ方からして……多分、歌声が発せられてる場所は────」

 耳を澄ませて周囲を真剣に観察する音色さん。

「……」

 ──ぴくぴく……。

 みぃも両耳を動かして音源を探している。

 ……………………。

「彼処だ!」

「……」

 ──ピッ。

 音色さんとみぃ、両者が指差したのは────


 ──眼前に見えるドーム──


 正確にはドームの上部に開いた通気孔と思われる無数の孔。

 一先ず、みぃと音色さんの耳を疑うわけじゃないけど、ドームに近付いて歌声の出どころであることの確認。

 ……。

 …………。

  ──~~♪~♪……

 ──っ! 間違いない。

 ドームに近付いたことで、さっきよりよく聞こえた。

 さらに近付いてみる。

 ……。

 …………。

 ──~~♪~♪……

 あ! 今度はさっき以上にはっきりと聞こえた。

「こいつは、間違いなくドームの中に誰か──」

「『──ああ、居るな』」

「……」

 ──コクコク。

「……だとしたら、どうやって中に──?」

 目の前に聳えるドーム。その大きさは、野球場クラス。

 しかし、────

「パッと見、どこにも出入口が見当たりませんね」

「そうだね。上の通気孔から入ろうにも、高過ぎるうえに登れそうになさそうだし……まず無理だな」

 白くツルっとした建材で造られたドームには、上部の通気孔以外には窓もドアも何も無い。

「『フッ。お前らは浅はかだな。何処にも出入口が見当たらないということは、どっかに隠し扉があるということだ。さあ、とっとと探すのだ!』」

 あ~、うん。わたしと音色さんはドームに普通に入れるヵ所が無いことを確認していただけなんだけど……まー、いっか。

「はいはい」

「やれやれ、人使いが荒い鳥だな……」

 さてさて、一体何処に隠し扉はあるのやら?

 取り敢えず、ドームの外壁をペタペタやコンコンと触ってみるも、返ってくるのは壁の硬さとひんやり感だけ。

 次にドームの壁に手を触れさせたまま、外壁に沿って歩いてみる。

 ……。

 …………。

 ………………。

 しかし、今のところなにかしらの違和感の発見はなし。

「おーい! カレンちゃん、こっちに隠し扉があったぞぉー!」

 少し離れたところから、音色さんからの呼び声が響いてきた。

 どうやら、わたしたちとは逆周りで探していた音色さんが隠し扉を発見したようだ。

「『ほれ、カレン。チャラポンが居る場所へ急げ!』」

 もう、ギーペは興奮しすぎ……。わたしの腕の中から飛び出さんばかりに前のめりだ。

 わたしも逸る気持ちを抑えて、小走りに音色さんの下に向かう。

 ……………………。

「カレンちゃんー、こっち、こっち」

 さして距離は離れていないので、少し走るとドームの陰から音色さんの姿が見えてきた。

 ………………。

「『到着~。

 ──で、隠し扉はどこだ?!』」

「お、おう、此処だ」

 興奮するギーペの勢いに圧されながら、音色さんは自分が立っている場所のすぐ側のドームの外壁を指差す。

「『ん?? 見た目では分からんな』」

「そりゃそうだろう。見た目で分かるなら、隠し扉の意味がねーよ。

 ま、見てな──」

 そう言うと音色さんはドームの外壁に近付くと、右手で壁に触れる。すると──。

 ──ピッ。ピッ。ピッ。ピッ。ピーッ。プシュー……。

 ロックを解除するような電子音と自動ドアが開くような音が鳴った。されど、ドームの外壁には変化は見られない。

「??? 隠し扉……開いたんですか?」

「ああ。ホラ、御覧の通りに、ね!」

「──……ッ!!!?」

 それは、目を疑うような光景だった。先ほど音色さんが触れた外壁の左側の壁に、音色さんが伸ばした腕がなんの抵抗もなく突き刺さったのだ!?

「『──幻影──か……!?』」

「そ。エロペンギンのくせに明察だな。おれの前にある壁は、目に映ってはいるが実質物理的に存在していない。カレンちゃんも試してみなよ」

 ……ゴクリ。

 ネタばらしをされても、体験するのはなんだか緊張する。

 恐る恐る片手を伸ばす。

 ……。

 ドームの外壁に触れるまで、あと僅か────

「──ッ?!!?」

 頭の中で浮かんだ、先ほどドームの外壁に触れた時の感覚が来るのではないかとの先入観は──、見事に裏切られた!

 見えている壁に触れているという感覚がナイ。試しに手を振ってみても、ナニかに接触する気配もない。しかも、見えている壁にも揺らぎのような変化はみられず摩訶不思議だ。

「『ふんッ。これで、ドームの中に入れるな!』」

「うん」

「さーて、そんじゃ謎の歌姫のお顔を拝見といこうか!」

「はい!」

「『おうよッ!』」

「……」

 ──グっ。

 音色さんの号令にわたしたちは気合いを入れて、そして、ドームの中へと踏み入る────────




 ────はてさて、いったいドームの中には何が待ち受けているのやら?────





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