ろくのいち
──煌めく太陽
sun sun sun.
一夏の恋 心ときめく
アバンチュール♪
一目で惚れた
貴方と夜のビーチで
Love Love ランデブー♪
止められない
止まらない
この想い 全力で
貴方にぶつけるね♪
だから 逃げないで
避けないで
受けきって~♪
Shining Shining
WIZARD!
私の愛は強烈~♪
Shining Shining
WIZARD!
これが私の愛~♪
────そんな!?
手に伝わる感触は相手の体温を伴って、アタシにまざまざと現実を突き付ける。
現在、アタシたちがいるのは清美グランドパーク内に在る屋外のレジャープール。先日の依頼の報酬で、特別手当として先方からココを含む清美グランドパーク内遊泳施設の無料優待券をいただき、今日みんなで遊びに来た。
そこで、不慮の事故──アタシが足を滑らせての転倒──で、アタシは彼(?)を押し倒すような格好になった。
屋外レジャープールにて絶賛営業中のご当地アイドルの生唄が響く中、アタシは自身の転倒に巻き込んで下敷きになってしまった彼(?)と見つめ合う。
合わさる視線。されど、そこにある空気は恋愛モノのような甘酸っぱい雰囲気さは微塵も含まれていない。
むしろ言外に「はやく退いてもらえませんか?」と彼(?)の目が訴えかけてくる。
しかし、アタシはそれどころじゃない!
転倒した際に出した手のうちの左手が地面ではないところに着いた。その地面ではないところは、柔らかくてふわふわで布地が隔てていても温かい。
──そう、ソレは紛れもない本物の乳房!
詰め物じゃない正真正銘の胸。
さらに、一瞬だけ彼(?)の腹部より下方向へと視線をチラりとだけ移して、とあるモノの存在の有無の確認。──目視による結果は、たぶんナッシング。つまり────
その事実はアタシに衝撃の真実をもたらす!
「お……、女の子!?────」
出会ってから今まで、『男の子』と思っていた彼(?)が実は女の子だったなんて……!?
「そうだけど……。──まさか!? ほぼ毎日、わたしのこと抱き枕にしていたのに、今の今まで勘違いしたままだったんですか?!」
「──はうぅわぁ!」
なんたること!
「てっきり、衣替えをした辺りで勘違いに気付いていたと、わたしは思ってたのですが……──」
いや、まあ……、確かに……、衣替えしてから、薄々と違和感が生じてた。でも、その違和感の正体がなんなのかは全く見当が付いていなかったわけで……──現在に至る。
「おーい、二人とも大丈夫か?」
どうやら、事態に気付いた副店長の詩音さんが駆け付けてきた。
しかし、アタシの脳内の大部分は今だにバニック中で、身体が転倒した状態のままフリーズしたかのようにうまく動かせない。
下敷きになっている彼(?)──改め、彼女の目は先程同様に「いいかげん、退いてください」と言っているようで、アタシを焦らせる。
「ん? 嬢ちゃん、どうした?! ケガしたのか?」
動かないアタシを心配してか、副店長が声をかけてくれた。
──助かった。
いま少し、自分だけでは自身の体を動かせそうにないので、副店長に手助けしてもうらおう。
「……いえ、たぶん怪我はないです。ただ……──」
「──ただ?」
「──……つい先刻まで女装好きの男の娘だと思っていた相手が、実は正真正銘の女の子だと理解した際に生じた衝撃で頭の中が混乱して、うまく身体が動かせないんです」
「…………。あー、もしかして、嬢ちゃんは少年の性別をついさっきまで、勘違いしたままだったって、ことか?」
「……………………はい」
一瞬「誤魔化そうか」という考えが頭を過ったけど、隠し立てしても恥の上塗りになるだけなので、素直に認める。
「…………………………………………ドンマイだ、嬢ちゃん」
──ぬをわぁっ!
副店長がアタシのことを可哀相な子を見るような目で見ている。──ような気がする。
なんか、自虐的な妄想からくる言い知れぬミジめ感が胸中にわだかまり、顔を上げられないまま、アタシは副店長の手を借りて立ち上がり近くのベンチへと連れていってもらう。
「嬢ちゃん、大丈夫か?」
「……え? あ! はい、大丈夫です。お手数かけました……」
「…………そうか。まあ、ケガなくてなによりだ」
──あぁ、なんたることだろう……。でも、ぶっちゃけ、『寝惚けて部屋を間違える』のにこれまでは相手が異性だという前提があったため、気まずさとか僅かばかりの背徳感があったけど、今夜からはそんな気兼ねなく彼女の部屋へと『寝惚けて部屋を間違える』ことができ────────────────って、ナニを考えてるんだ、アタシはーーッ!!!?
──いや、待てアタシ。今はそれ以上に重要な心情の案件あるだろう?!
────そう、それは────
────男の子と認識していた彼女に対して、異性としての好意が芽生えていた事────
──これが露見したならば、黒歴史確定だよ……──。
──あぁ、行き場をなくしたこの想い“忘却の彼方に”葬り去りたい────────