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舞い降りた一振の剣

……此処が冒険者ギルド王都本部ですか……。遂に来ましたよ!!


……私は……こほん、僕は若手商人のアレンです。


ずっとシュラウトと念入りに考えた設定と出身地、ダミーとなる商会も作ってあるので大丈夫な筈……!!いざっ!!


勇気を出した金髪の青年はドアを開けて中に入るが……


「わっぶっ!!」


突然目の前に出て来た大柄の大男の腹に顔をぶつけてしまい、思わずたたらを踏んでよろける。


「あぁ?何だ…こほん、兄ちゃん。此処は冒険者ギルドで……良い所の兄ちゃんが気軽に来て良い所じゃねぇぜ?あぁ……それとも、兄ちゃんが勝手にぶつかって来て汚れちまった服や装備を弁償してくれるから話は別だけどな?ん?」


スキンヘッドの大男は金髪の青年に詰め寄って馬鹿にすると、今度は自分の着ている服や装備を指差してたかって来た。


「……いやいや……僕にわざとぶつかって来たのは貴方だと思いますが?それとも……冒険者やギルドでは訪れた一般人にたかる行為が普通なのですか?……悪いですが、冒険者の質を疑いますね」


金髪の青年は肩を竦めると、目を細めて呆れた顔をするが……一歩も引かず正論を述べる。


「……確かに……そりゃそうだぜ」


「嫌だわ、冒険者としてのプライド無いのかしらね?」


「辞めて欲しいな、一人がバカをやると皆が同じに見られるよ」


「最悪」


「おい、誰かギルマス呼んで来いよ」


「今は無理。南方の国から帰って来た【魔剣】と殺し合ってるよ」


「巻き込まれたら死ぬな」


「タイミング悪……」


「あのギルマス【魔剣】を手懐けようとしてんのか?」


「悪どいからな……あのオッサンは……」


口々に他の冒険者達は、言い合って静観を決め込んでいた。


「……てめえ……馬鹿にしてんのか!?」


周りの冒険者達の反応に焦りつつ、馬鹿にした金髪の青年に逆ギレすると、大男は背中に背負って居た大剣を抜いて構える。


「おや?冒険者が一般人に剣を抜くのですね?聞いていた冒険者のルールとは違うみたいです」


目を丸くした金髪の青年は薄く笑みを浮かべる。


「……うるせぇ!!てめぇのすかした態度が気にいらねぇんだよ!!非力な商人の癖して……大人しく俺達冒険者に従って金だけ出せば良いんだよ!!」


興奮して、激しく激昂しながら大男は言い放つ。


「……気に入りませんね?我々商人にも依頼を頼む冒険者を選ぶ権利があると思うのですが?」


……この男、本当に冒険者か?ただのチンピラじゃないか……。


笑みを浮かべたまま金髪の青年は首を傾けるが、内心素を出して不愉快に感じる。


だが、金髪の青年は気付かなかったが、野次馬として傍観する冒険者の中に、一人だけ青年を見て驚愕する女性が居た。


……間違いないわ、あの方は……


女性は気付いて直ぐに、腰に差していた剣の柄に手を掛ける。


……誰も止めようとしないし、冒険者達も名ばかりね……。

……もし、あの方が万が一もあれば……あのクソハゲ……斬り刻む!!


女性は気配を消しつつ、大男に殺気を放ちたいのを必死に堪えていた。


「うるせぇって言ってんだろうが!!てめぇは一度居たい目に遭わなきゃ分からねぇ様だな!?」


「もはや話も通じない様です、貴方は獣の様で意思疎通も難しいみたいですね」


いきり立つ大男に金髪の青年は微笑む。


「死に晒しやがれっ!!優男がぁっ!!」


……広域光上級魔法展開……ライトニング……


大剣を振り上げる大男に対して、金髪の青年が魔法を発動しようとし……


……糞野郎がっ!!女性も気付いて剣を大男に向かってぶん投げようとし……


三者三様の動きが重なる事無く同じ空間で時を紡いでいた。


……その時、莫大な闇の魔力が三階部分から放出され……


「わぁっ!?」


「ちょっ!?」


「なっ何だ!?」


「ギルマスの部屋からだ!!」


魔力による余波でギルド内を凄まじい風圧が吹き荒ぶ中、冒険者達は混乱する。


それと同時に、三階の部屋のドアが吹き飛ばされ、男も吹っ飛んで来てギルド受付のカウンターに背を打ち付け止まった。


「……え?……これって……」


気絶したらしい男を見て、確認した冒険者は目を見開く。


「ギルマスの……ドルイさんだ!!」


思わず冒険者が叫んだ。


「……なっ……何々だ!?人が良い所で水なんか差しやがって……!!」


……ドルイさんを吹っ飛ばしただと!?冗談じゃねえぞ!?……何々だよ……この膨大な魔力はよぉ!?


内心、大男は剣を構えたまま動揺する。


……あらから?……そう言えば帰って来てたわね……。


女性は気付くと、手に持って居た剣を再び鞘に戻して笑みを浮かべた。


……この魔力……何処かで……


金髪の青年は目を丸くして、首を傾けて思案する。


その時、上から人影が落下してきた。


三階からの階段を一飛びで一気に飛び降りて、下の階に着地したのは、一人の青年で片膝を付いた状態から立ち上がると金髪の青年と目が合う。


気のせいか、青年の紅色の瞳が僅かに揺れ動くが、直ぐに目を反らされてしまう。


紫色の髪で後ろ髪が少し長く、黒いコートに茶色のズボン、黒のブーツを履いた切れ長の瞳の青年だ。

剣士なのか、背中に長剣を背負って居る。


青年の姿を他の冒険者達が見た瞬間、大きなざわめきが起こるのだった。








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