飛んで火に入る夏の海蛍
「この迷宮のボスは彼なので、彼を倒すと迷宮にちなんだ報酬と、迷宮品が出るみたいです。……ランダムらしいですが……ラルツオーネと関わりがある迷宮品だと良いですね」
爽やかな笑顔でアレンが三人に言った。
その瞬間、カリウス、カティーラ、レギオンが王太子クフルリードに襲い掛かる。
『へ?え?お前等誰だ!?うわあああっ!?』
訳が分からないまま、王太子クフルリードが倒されると二つの宝箱が出現する。
「一つが金貨で……もう一つが……法衣?」
宝箱を開けてアレンは目を丸くした。
……鑑定によると、この法衣を着れるのは自分……つまり宝箱を開けた私に対して愛情を寄せる恋人又は奴隷で男性専用。
鑑定魔法で様子を見たアレンは難しい顔をする。
「使えるかどうか微妙ですね……」
「ランダムだからな……」
「ドンマイ」
「……あははは……」
カリウス、カティーラ、レギオンに励まされ、アレンは思わず苦笑いするのだった。
暫くして、小人冒険者達が駆け付け、一連の事件は解決したかに見えたが……。
スキンヘッドの大男は、迷宮から奴隷一人を連れ出すと、アレン達が戦っている隙に脱出して今は空家に隠れていた。
長い黒髪の色白で美しい青年の両手両足を縄で縛り、ベッドでうつぶせにさせ、気が狂ったように腰を振り突いていた。
「んぐっ!!んんっ!!んぶっ!!んんんっ!!」
猿轡された青年から呻き声が聞こえる度に、ベッドが激しく軋む。
……俺もギルマスの仲間だと分かったら終わりだ!!畜生!!そうだ……こいつを人質にして逃げれば良い!!
大男は開き直った。
あれから三日後、アレンはシュラウトと共に商人の格好をして冒険者ギルドに来ていた。
「ドルイの処分は極刑、一味も同じで後一人と奴隷が行方不明だからまだ事件も終わってねえよ」
ギルドマスターの証である赤い制服を着たレギオンが報告する。
「……全て解決とは行きませんね」
「僕は事件に首を突っ込んだアレン様が居なくなってから肝が冷えましたよ」
アレンが苦笑すると、シュラウトが文句を言う。
「いやん、シュラウトが顔さえ見てくれないわ、次男の反抗期かしらん?」
「カマ野郎だからだよ」
ふざけるカティーラにカリウスがツッコム。
「当分は俺がエマール王国から正式にギルドマスターに任じられたんでギルドをやる。エクスカリバーの冒険者も暫くエマール王国預かりだな」
腕を組んでレギオンが溜め息をつく。
「てめぇら!!動くんじゃねぇ!!」
ギルドにスキンヘッドの大男が黒髪で着物を着た青年を連れて入って来る。
「あいつが最後の一人で、あの美人が奴隷だ」
レギオンはアレンに言うと、その場から姿を消す。
ざわめく他の冒険者達に興奮したのか、大男は青年に突き付けていた剣で青年の着物を切り裂くと手を突っ込む。
「あっ!!んっ!!」
大男に胸を弄られ、青年は甘く哭いて顔を赤らめる。
「こいつの命が欲しければ俺を見逃せ!!」
大男は叫ぶが……
「嫌なこった」
「へぶっ!!」
真上から現れたレギオンの踵落としを脳天に喰らって大男は沈む。
「はぁ……はぁ……」
ぐったりした青年をレギオンは支えるが……
……こいつはひどい媚薬を使われてるな……
直ぐに見抜いてレギオンは青年を抱き上げる。
「俺は暫く抜けるから……誰も俺の部屋に入れるな」
「はいっ!!」
レギオンは職員に命じてその場から姿を消した。