馬鹿力対決
「……って事は……カティーラも?」
「……8年前と違いすぎてびっくりしました」
何と無くカリウスが聞くと、アレンが苦笑いして頷く。
カリウスとアレンの様子を見た緑色の長い髪の青年と、桃色の髪の少年は茫然とする。
「……あのラルフをやっつけるなんて……凄いです!!」
少年は猫耳を動かし、アレンを見詰めながら尻尾を揺らして喜ぶ。
「……あの方々のおかげで私達は助かりました。恩を御返しせねばなりませんね」
青年が言うと、少年も頷くのだった。
「後は……カティーラだけですね」
「……そうですね……」
アレンとカリウスは顔を見合わせる。
「ひゃははははっ!!俺は強化魔法に特化した拳闘士だ!!てめぇみてぇな女の剣にやられる俺じゃねぇぜ!!」
両拳に強化魔法を使うと、ドルイがカティーラに殴り掛かる。
だが、カティーラはドルイの拳を自分の両手で受け止めた。
「そんな……馬鹿な……」
ドルイは青ざめて驚愕する。
「弱い拳で……この俺に勝てるとでも思ったのか?」
カティーラの姿が変わり、身長が伸びて声も低くなると、カティーラの背には悪魔の翼、頭に悪魔の三本角、尻に悪魔の尻尾が生えた。
「……お……お前は……元南方辺境伯……カティス・ドュランダル!?」
カティーラの正体に気付いてドルイは青白くなった。
「だったらどうした?力勝負はこうやんだよ!!」
「ぎゃああああっ!!」
カティーラは逆にドルイの拳を握り潰し、ドルイは激痛で叫ぶのだった。
「拳を握り潰されただけで気絶だなんて……弱すぎだろうが……」
口から泡を吹いて倒れるドルイを見て、カティーラは悪魔の姿から戻ると溜め息をつく。
「親父の力が馬鹿力過ぎんだよ」
ジト目でカリウスはカティーラに言う。
「しっかし……囚われていた若者達は全員避難させたし……後は小人冒険者を待つだけだな」
合流したレギオンが腕を組む。
「今回の件でエマール王国がエクスカリバーに介入し、……少しずつ我が国の力を削いでいくのですよね?」
「……まあな、それが妹君を心配するエリュル陛下の望みであり、きっかけになるからだ」
アレンに聞かれレギオンは答えると頷く。
「……小人冒険者が来るまで時間ありますし……目的の場所は王宮なので今から向かいましょうか?」
「王宮に?」「何かあるのですか?」
カリウスとカティーラは顔を見合わせた。
「元凶の原因である彼が居るはずなのです」
ニッコリと笑ってアレンが答え、レギオンは分かったのか笑みを浮かべる。
公爵家を後にした四人が目の前に立つ荘厳な王宮に入ると、侍女アンデッドや侍従アンデッドが会釈して通り過ぎる中、ある一室に入った。
『……あぁ……ラルツオーネ……私が……私が悪かったんだ……どうか……どうか……許してくれ』
嘆き悲しむ人気と変わらない見た目の青年アンデッドが居た。
「王太子クフルリードです。ラルツオーネを裏切って処刑した極悪人ですね」
……こいつのせいかっ!!
カリウス、カティーラ、レギオンが凄まじい殺気を放つのだった。