私の剣なのだよ
地下へ着いた途端、聞こえたのは青年や少年の甘い声と、響き渡る水音だった。
地下牢には、美しい少年や青年達が裸のまま鎖で繋がれており、奴隷商人達に犯されている者も居る。
「……カティーラ、カリウスお願いします」
「了解」「御意」
怒りを堪えつつアレンは二人に命じると、二人は一礼して姿を消す。
「うわっ!?何だお前等は!?」
「ぎゃ!!」
「ぐはっ!!」
「ぎょえっ!!」
奴隷商人達はカティーラとカリウスによって次々と倒されていく。
「付近の商人達は全員倒しましたわ、罪人は生かしたままがセオリーなのが少しムカつきますけど……」
「法の下での裁きだからな……レギオンさんに任せるだけだ」
それぞれの地下牢から出て来たカティーラとカリウスが報告すると、互いに不満そうに顔を見合わせた。
『おやおや……招かれざる客人が来たようだな?』
「おっお前等は!?外の奴等失敗しやがったのか!?」
奥から美青年アンデッドとドルイが姿を現す。
「やっぱりあんたの仕業ね!?ギルドマスターのドルイ!!」
憤慨してカティーラが叫ぶ。
「……もう一人は……アクアマリン公爵次期当主だったラルフ・アクアマリンですか……」
無表情のままアレンは美青年アンデッドに告げる。
『客人は僕に詳しいようだね?だが……残念だよ。君達はもはや生きて帰れない。……僕の玩具になる未来が決まってるからね』
『オオォォアアアー』
「っ!?」
ラルフが笑みを浮かべ指を鳴らすと、カリウスの足元から強大なアンデッドの集合体が出現して彼を飲み込む。
「っ!?」
アレンは飲み込まれたカリウスを見て驚愕する。
『君を守る者はもう居ない。さあ……僕の物になっておくれ』
ラルフはアレンの身体をアンデッド能力の一つ、金縛りで拘束すると、アレンの顎を掴んで笑みを浮かべる。
「此処まで自意識過剰だと気持ち悪いな……」
アレンはラルフを見下すように言うと、冷たい瞳で睨み付ける。
『何を言っているんだ!?君は自分の立場を分かって……!?』
ラルフは怒りを露にして言い掛け……そして目を見開く。
「……汚ねぇ手で……アレクシス様に触んじゃねぇ!!」
圧倒的な魔力を放出し、カリウスがアンデッドの集合体を蹴散らして出てきた。
ただし、カリウスの姿は悪魔の翼に、二本角、悪魔の尻尾が生えた悪魔に変わって居た。
『……覚醒体……だと!?ばかな……その姿で自我を保つなんて!?』
慌てラルフはアレンから離れて後ろに後退るが……
「カリウス……いや、カイトは私の剣なのだよ。あれくらいで折れる剣ではない」
アレンは気品溢れる態度でラルフに言い放つと、傍らに膝を着いたカリウスの右肩に手を置く。
「罪人を処断しろ」
「御意に……」
アレンに命じられカリウスが返事をして立ち上がると、長剣を構えてラルフに近付く。
『ひいっ!?やめろっ!!来るなぁっ!!』
ラルフは次々と配下のアンデッドを呼び出して後退るが……
カリウスはアンデッドを難なく斬り殺してラルフに剣を振り上げる。
『ぎゃああああああっーー!!』
ラルフはカリウスによって身体を斜めに斬り落とされ絶命した。
「……アレクシス様、俺だと分かって居たのですね」
元の姿に戻ると、カリウスは長剣を鞘に戻してアレンに言う。
「まぁ……大体はシュラウトに聞いて居ましたし……約束したでしょう?したでしょう?絶対に私が君達を見つけるとね?」
アレンが笑顔でカリウスに言った。
「……俺の方が見付けるの早かったですよ。ギルマスと戦っている時に魔力で気付いて、ぶちのめして駆け付けましたし……」
「ガーン」
不満そうにカリウスが言うと、アレンはショックを受け青ざめた。