家令クリプトンの後悔
三人が中に入ると、そこはエントランスだった。
真上には大きなシャンデリア、左右には二階に上がる階段があり、周囲の壁にも美少年の絵画が飾られている。
「ラルフ・アクアマリンは、美少年をいたぶり殺す残虐趣味があって……両親である公爵夫妻は外部に漏れないように隠していたのです。……この絵画も……殺された美少年だと書かれていました」
アレンは絵画を見て説明すると、二人に振り返る。
「……最悪だな……」
「ゲスね」
カリウスとカティーラは目を細めた。
『ひゃははははっ!!』
『君たちも俺の仲間になってよぉ!!』
シャンデリアから少年アンデッドと、青年アンデッドが飛び降りて襲い掛かって来る。
「しゃらくせぇ!!」
カリウスは背中から長剣を引き抜くと、少年アンデッドの首を斬り落とした。
「ふんっ!!」
カティーラも青年アンデッドを一刀両断する。
アンデッド達は灰になり消え去り、エントランスが静かになる。
「アレン、お前何でアクアマリンにそこまで詳しいんだ?」
気になったカリウスはアレンに問い掛けた。
「……家令クリプトンの手記を見たのですよ。偶然にも研究会にあったので……恐らく迷宮品かと思われます。その手記は彼が魔女に殺されるまでずっと後悔していました。クリプトンはラルフの罪を後世に遺すために記していたようですね」
苦笑してアレンは答えると、先に歩きだししカリウスとカティーラも続く。
「ラルフと奴隷商人が居るとしたら……地下牢ですね。手記にもそこが罪の証と書かれていましたし……」
「地下への階段……何かヒントか、仕掛けないかしら?」
アレンに言われてカティーラは首を傾ける。
「スイッチか何かあるかもな」
カリウスも周囲を見回す。
『お坊っちゃまの元へは行かせません!!』
『死ねえ!!』
壁をぶち破ってメイドアンデッドがナイフを手に襲い掛かって来た。
カティーラとカリウスはメイドアンデッドの首を斬り落として倒す。
「あるとしたら……ラルフの私室だと思ったのですが……案内人が居ましたね」
アレンが指差す先には、中年の紳士が燕尾服姿で頭を下げていた。
『勇気ある冒険者の方々よ、ずっとお待ちしておりました。我々はラルフ様のアンデッドとして逆らう事は出来ませんが……僅かの自我で自分の意志を持って行動出来ます』
中年の紳士アンデッドはそう言うと、奥の時計の上部を押す。
すると時計が沈み、壁が崩れるとそこから階段が現れる。
『どうか……ラルフ様と奴隷商人を止めてください』
「必ず止めますよ、ありがとうクリプトン」
中年紳士アンデッドにアレンは礼を言う。
……こいつが……クリプトン……。
……生前も強い魔力を持って居たのね……。だから自我も持てているのか。
カリウスとカティーラは目を見開いた。
クリプトンに見送られ、三人は地下へと階段を降りていく。
地下の階段を照らすキャンドルは、何故か人間の指だった。
「これ、皆ラルフが殺した美少年の指を戦利品として加工した本物の様ですよ」
「うげっ!?趣味悪すぎるだろう!!」
「ホラーだわ!!」
アレンの説明にカリウスとカティーラはドン引きして叫ぶ。
地下は更に奥へと広がっていた。