アクアマリン公爵家
「ふむ、どうやら……此処がアクアマリン公爵家のようですね」
貴族街を奥へと進んだ先、王宮を目の前にした一際大きい屋敷の前でアレンが立ち止まる。
『あぁ……うぅ……』
『うわぁ……ぁぁ……』
中庭から10代前半くらいの少年アンデッド達が裸のまま近付いて来た。
「……何故少年アンデッドが公爵家から?」
カティーラは目を丸くし、剣を抜くと構える。
「ラルツオーネに掛けられた罪は二つです。一つは未来の王妃であるタバ聖女にいじめを行った不敬罪、もう一つは少年を誘拐して奴隷にした奴隷商人の罪ですよ。ですが……二つの罪は冤罪で、奴隷商人の犯人は他に居ました」
笑みを浮かべたアレンは、三人に分かりやすく説明する。
「……まさか……」
気付いたカリウスが眉を潜めた。
「そうてます、実の兄ラルフが犯人で、王太子と取引を行い妹であるラルツオーネに自分の罪を着せたのですよ」
満足そうにアレンが答える。
「なんてゲスなのかしら!?」
カティーラは憤慨しつつ、少年アンデッドの首を剣で斬り落とした。
「むむっ!?という事は……!?」
レギオンも、少年アンデッドを拳のみで倒すと、着地してアレンに振り替える。
「へへっ!!」
「もう逃げられねえぜ!!」
「覚悟しなっ!!」
後ろから男達三人が現れ取り囲む。
「おっしゃっ!!」
「逃がすなよ!!」
「魔封じ発動したぞ!!」
「ひゃははは!!」
結界が張られ、アレン達は屋敷から出て来た男達にも囲まれる。
「過去の奴隷商人と今の奴隷商人が出会うと、それぞれ利が同じなので強化されるはずです。迷宮の異常は恐らくこれが原因でしょう」
アレンは推理して答えるのだった。
「魔封じの結界を二重に張ったんだ!!」
「てめえらは魔力を使えねぇ!!」
「泣いて喚いて助けを呼べ!!」
「助けねえけどな!!」
男達が好き勝手に口々に叫ぶが……
「うっきゅ」
レギオンが結界に蹴りを放つと、二重の結界が音を立てて崩れていく。
「……は?」
思わず目が点になる男達。
「相手が結界より強い魔力を持って居る場合、それは無効になるっきゅ」
着地したレギオンがハードボイルドに答えた。
「こんの……クソ小人があ!!」
ぶちギレた男達が火や風の魔法でレギオンに攻撃を放つ。
「うっきゃ!!」
レギオンが光りに包まれて何も見えなくなり、火の玉や風の刃が直撃したかに見える。
だが、光が消えた後、白い軍帽に白い軍服を着た長身の青年が現れて全ての攻撃を交差させた両腕だけで防いでいた。
「こっこいつは……」
「まさか……そんな……」
男達は青ざめる。
「エマール王国騎士団団長レギオン・ナイトナックル……。まぁ、最強のランクも持つ彼を知らない奴は居ないわよね?」
カティーラは微笑むと、レギオンの背から離れた。
「……貴様等みてぇなクソ雑魚なんざ……拳で充分だ。此処は俺に任せてアレン様達は先に行け」
拳を鳴らしながらレギオンは言うと、背を向けたまま三人に言う。
「任せましたよ、レギオン伯父さん」
「どうも……」
アレンはレギオンに声を掛け、カリウスは頭を下げた。
「やり過ぎないでよ!!」
「努力するが……無理かもな」
カティーラが釘を刺すと、レギオンは苦笑する。
そして三人が屋敷に入った瞬間、レギオンの魔力が放出されその場を支配するのだった。
「さてと……始めるか?」
レギオンの笑みに男達は絶望するのは言うまでもない。