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55 旅立ちとツノアカリ


 青い空。テツバイの町を背後にアルバスとハクアは野を歩く。

 アルバスはハクアの角を見た。自分が折ってしまった片角。

 後悔がアルバスの胸を苛んでいる。

 もっと上手い方法があったのではないか。

 ハクアを傷付けずに済む方法があったのではないか。

 本当は彼女の角は二本とも揃ったままだったのではないか。

 鬼の角は感覚器だ。それを無理やり折ったのだ。

 ハクアの心身の均衡がどれ程崩れてしまったのか分からない。


「見て、アルバス。とっても今日は良い天気。旅の始まりには一番だと思わない?」

「そうだね。雲一つ無いや」


 ハクアは笑っていた。だから、アルバスも笑い返す。

 彼女は望まないだろう。アルバスが後悔する事を。

 ならば、後悔は口にしない。そうアルバスは決めて、前を向く。

 視線はハクアの角へ、その断面へ。

 痛みはもう無いとハクアは言う。ちょっと風に当たるとこそばゆいくらいだとも。

 その姿を見て、アルバスは一つ思い出した。

 この鬼の少女に渡したい物があったのだ。


「ハクア、ちょっと待って」

「ん? どうしたの?」

「これをさ、受け取って欲しいんだ」


 アルバスはローブのポケットからそれを取り出し、ハクアに渡した。


「これは?」

「……ツノアカリ。折れた角を隠せると思う。それに、似合うと思うから」


 それはアルバスにとって初めての他者への贈り物だった。

 心臓の鼓動が早くなる。顔が熱くなる。


「ありがとう。とっても嬉しい」


 差し出されたツノアカリ。ハクアが顔を綻ばせ、とても優しく微笑んだ。


「アルバスが着けてくれる?」

「うん」


 ハクアが折れた角へツノアカリを被せる。

 角折は隠され、ホウホウと光るツノアカリの下でハクアは笑い、アルバスも笑い返した。

 少し歩いて空へとアルバスは杖を掲げる。

 ハクアが自分の全てを捧げてアルバスへ授けた魔法の杖。

 美しい白晶の杖がホウホウと光っていた。


「ハクア、何処に行こうか」

「何処へでも、アルバスとなら」 


 きっと長い旅に成るだろう。

 角と杖が導くままにアルバスとハクアは空を見上げた。

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