45 自問と自答
「「「「「「「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOOAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!」」」」」」」
「ほぉら、おかわりだぁ」
ヴェルトルの杖に呼ばれたように、新たな魔物達が現れた。どれもこれもの眼は狂い、次から次へとあらゆる出口から会場に入り込んでくる。
外に通じる道は魔物達の濁流に全て塞がれ、窓からは夕陽すら差し込まない。
「!」
ハクアの体が強張ったのが、アルバスには分かった。
「なぁ、杖無し、今お前どんな気持ちだぁ? 弱いのに何かを助けようとして、結局、俺の我儘で魔隷角ごと殺される。そんな惨めな気持ちはどうだぁ、おい?」
ヒヒヒヒッ。半分は笑い、半分は凍った顔が不気味で、その眼はアルバスをジッと見る。
ああ、そうか、とアルバスは理解した。この大魔法使いは答えなど求めていないのだ。
きっともうこの大魔法使いの中で答えは完結してしまっているのだ。口に出した問いはただの自問自答で、幾百幾千幾万と繰り返されてきた物なのだ。
そういう言葉をアルバスは知っている。明けぬ夜に何度もしてきた自傷的な問いだ。
「弱いお前じゃ、何も成し遂げられないさぁ。教えてくれよぉ。弱くて弱くて何にも叶えられないって、どんな気持ちだったんだぁ?」
ヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒヒ!
「っ!」
これ以上聞いていられないとでも言う様にハクアがアルバスを抱えて走り出す。
出口から逆方向。当たり前だ。出口からは魔物の濁流が押し寄せている。
「駄目、か」
アルバスは歯を噛み締める。
ここまでやって駄目なのか。
ここまでやっても助けられないのか。
意地も捨てた。自分を捨てた家族にも頭を下げた。
色々な道具を用意した。そのどれも魔法が使えたのなら不必要な道具だ。
それでもアルバスには必要で、その全部を使ってハクアを助けようとして、この有様だ。
もしも、アルバスが、ルビィの様に、一族の期待を叶え、魔法が使えたのなら、ハクアを助けられたのか。
意味の無い自問自答だ。どこまで言っても自分は杖無しで、魔法が使えないのだ。
折られた体が痛い。
「く、そ」
だから眼が痛いのか。
だから眼の奥が熱いのか。
だから眼の先が滲むのか。
悔しくて、情けなくて、最後に残った大切な何かが砕けようとしている。
「違うのアルバス! あなたは助けてくれたの! あなたはわたしを助けてくれたの! それだけで嬉しかったの! あなただけが手を伸ばしてくれたの本当に嬉しかったの! だからお願い! そんな顔しないでっ!」
ハクアが走り、視界が動く。アルバスは今自分がどんな顔をしているのか分からなかった。
魔物達に蹂躙されていく角落市。杖無しと魔隷角を気にする余裕は誰にも無い。
そして、ハクアが走り、アルバスと共に入ったのは、角落市の壇上、そこにあった巨大な鳥籠だった。




