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ごめんなさい

目の前に現れた黄金の鳥はじっと私を見下ろしていた。

頭の中に聞こえてきた声に、私が反応すると会話が成立して、私は目の前の黄金の鳥に神聖力を注ぐことになった。

不思議な感覚だった。神聖力に満ちた空間に自分がいる。そして目の前には神聖力を集めたような黄金に輝く鳥。ここは神聖石の中なのだろう。さっきまで力を注いでいた中に自分自身が入り込んでしまったようだ。

頭で理解するというより感覚的にそうなのだとわかる。

不思議な感覚ではあるけれど、私は今神聖石の目の前の鳥が神聖石の核の姿なのだと理解できていた。

神聖力を注いでみろという言葉が頭に響く。

そうすることで結界を保ってくれるという。

ずっと注いでほしいということだったけれど、さすがに私にも限界はある。

出来る限りのことはするつもりではいるけれど。

そう思った時、不意にソフィア様から預かった本のことを思い出した。あの本の中に神聖力の循環が書かれていた。神聖力に満ち溢れた場所でなければできない技術であったはずだ。それを自分の中に取り込んで自分の力として使う。それをずっと繰り返していくことで循環させていく。

本にはその内容が書かれていたけれど、神聖力に満ち溢れた場所なんてないだろうし、試してみる機会なんてなかった。

まるで今の状況を見越していたかのような内容に驚きよりも納得している私がいた。

「力が続く限りなら」

やっと事のないことを出来るとは言えない。苦笑しながら言ってみると、それは困ると頭の中に声が響いた。困らせるつもりはなかったけれど、ここは本に載っていたことを試すしかないようだ。

そっと手を伸ばして、できるだけ柔らかい声を意識して口を開いた。

「力の循環をすれば注ぎ続けることはできると思います。ただ、やったことがないので成功するかどうかわかりませんけど」

不安はある。それでもここで諦めてはいけないと思った。

ゆっくりと黄金の鳥のくちばしが近づいてくる。

指先が触れると想像していたよりもひんやりとした感覚だった。

頭の中にやってみるといいと許可が聞こえた。

なんだか嬉しそうにしているのが伝わってくる。

「はい」

諦めるわけにはいかない。

そう思った時、不意にカイル様の顔が思い浮かんだ。彼とは神聖石の保護が無事に終ったら話したいことがあるという約束をしていた。

でも、ずっと神聖力を注ぎ続けろという黄金の鳥の希望を叶えることになると、カイル様に会うことはできないのではないか。

そう考えた瞬間、胸の奥に疼くような痛みを感じてしまった。

何を話したかったのかそれは本人でないとわからなかったけれど、聞きたいと思った。

彼とゆっくり話をしてみたかった。仕事ではなくて個人的に向かい合って穏やかな会話をしたかった。

私は彼に好意を持っていたのね。

ずっと気づかないふりをしていたけれど、ここではっきりと自分の気持ちを理解してしまった。

理解したところでもう遅いということもわかってしまう。

カイル様。ごめんなさい。

約束を守れそうにないです。

気持ちが大きく揺れるのを感じた。でもここで泣くつもりはない。

目の前には黄金の鳥である神聖石が私の力に期待している。ここで私が成し遂げなければ帝都は大変なことになるだろう。

帝都を護るためにも自分の気持ちはそっと封印するしかない。

ゆっくりと深呼吸して気持ちを落ち着かせると、神聖力を黄金の鳥に注ぎ始める。

まずは私の力を流していく。

流しながら周囲に満ちている神聖力を自分の中に取り込むこともしていく。

同時に神聖力を動かすのは難しい。経験がないから余計に力加減がわからない。

「・・・っ」

ぐっと奥歯を食いしばって神聖力に集中する。

取り込んだ神聖力を私の力と混ぜるようにして、そのまま黄金の鳥へと流していく。

それを繰り返していくと、だんだん力の流れに慣れていくのがわかった。

そうしていると、やがて神聖力の流れがしっかりと確保されていることに気が付いた。

それは神聖石が私の力を効率よく流してくれているのだと気が付く。協力してくれているのだ。

それがわかると肩の力が一気に抜けた。

これなら要望に応えられる。

それと同時にもう後戻りができないことも理解してしまった。

「・・・カイル様」

もう一度カイル様の顔が浮かんだ。

ごめんさない。

心の中でそれだけ呟くと私は神聖力を流すことに意識を集中させて、やがて神聖石の中に意識が溶け込んでいった。


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