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気づいた気持ち

「なぜ僕はカイルと一緒の部屋なのだろう」

「ベンかイスカと一緒が良かったか?」

「そういうことを言っているんじゃないの、わかっているよね」

ザックがため息をつくが、俺がどうこうできる問題でもない。

今日は旅の疲れを取るために休むことになったが、俺はザックと一緒の部屋に案内された。ベンとイスカも同室になっている。セシリアだけは女性1人なので1人部屋のはずだ。

俺と一緒だということに文句があるというより、1人部屋が良かったと言いたいようだ。

そう言われても、俺が一緒の部屋にしてくれと言ったわけでもない。神殿側がこうしたのだから、それに従っているだけだ。

「今からでも1人部屋にしてほしいと言ってみたらいいだろう」

どうしても嫌ならザックが言いに行けばいい。そう提案すると、ザックは気まずそうにベッドに横になった。

「そんなことが言える状況じゃないよ」

先に部屋に案内されてザックたちの話が終わるのを待っていたが、彼は部屋に来ると複雑な表情をしていた。

話し合いの内容は俺に話しても大丈夫なことのようで、部屋で起こったことを話してくれた。

明らかに歓迎していない聖人代表のベリル。歓迎はしていても期待はしていない様子の聖女代表のラニア。ここへ来たからにはしっかりと仕事をしたいと考えているセシリアとザックの気持ちが空回っているようで、温度差に戸惑いがあるようだった。

「調査依頼をしてきたのはそっちなのに、いざ僕たちが来たらがっかりされるのを目の前で見せられると、やる気があっても気持ちに揺らぎはでるよね」

大聖女か大聖人を望んでいたのに、ただの聖女と聖人が来たことを残念に思う気持ちはわからなくもない。でも、明らかな怒りや落胆を向けられては、せっかく来たのにと思うのは当たり前だろう。

しかも、ラニアは大聖女に何も期待していないとも言っていた。彼女の実力を知っていて否定的な言葉を隠すことなく発言するのは勇気がいるはずなのに、それを恐れる気配もなかったという。

皇太子殿下の命令で大聖女リリスを探っているが、ここにリリスの実力を証言できそうな人物がいることは俺にとってはラッキーなことでもあった。

彼女から詳しい話を聞きたいなと思う。前任の大聖女の補佐をしていたということなので、前任と比べることもできるのだろう。リリスを大聖女から引きずり下ろすきっかけを作ってくれるかもしれない。

そんな期待をしていることなど知る由もないザックは、再びベッドに横になりながら文句を言っている。

「ちょっとは期待しておこうという姿勢は見せてくれてもいいと思うんだよ。セシリアさんはあまり気にしていないように見えたけど、それでも内心歓迎されていないことにがっかりしていたんじゃないかな」

セシリアもその場にいたが、彼女はどれだけ残念がられても、ベリルが文句を言っても怯むことはなかった。

この仕事をしっかりこなそうという姿勢が変わらないのだろう。

強い女性だと思う。いつでも自分を信じて前を向いているように見える。

その真っすぐさが羨ましいと思える。リリスの側にいてもどんな仕事を押し付けられても嫌な顔をしている彼女を見たことがない。

とはいえ、いつも神殿の中を動き回っているセシリアと顔を合わせることはあまりないのが実情だ。本当は知らないところで文句を言っていたり、泣いている可能性だってある。だが、そんな噂も耳にしたことがないから、きっと彼女は俺が見た彼女のままのような気がする。

「とにかく、明日には神聖石の調査をすることになったんだろう。どれだけ文句を言っても、しっかり仕事は果たせよ」

「わかってるよ。ここまで連れてきてもらったからには成果は出さないとね」

大聖女か大聖人を望んでいた第3都市の神殿側からすると、セシリアとザックに期待していない。どこまでできるのかザックたちもわからないだろう。それでも、何らかの成果を持って帰らないと帝都の神殿に所属する者としては恥になりかねない。それに、大聖女の代わりとしてきたセシリアは、何もできなかったと報告すればリリスから酷い叱責を受けそうだ。

それならリリスが行けばよかったのだと言い返してやりたいが、セシリアは望まない気がする。

それよりも原因を突き止めて結界の違和感というものを解決することが重要だろう。

「セシリアとは明日の話はしているのか?」

「特には。神聖石の調査をしてみないと何とも言えないし、とりあえずここまでの疲れがあるだろうから、彼女もゆっくり休んだ方がいいだろう」

この旅で体力のないセシリアが一番疲れているはずだ。今はゆっくり休ませることが優先される。

彼女の実力が試されるのはここからなのだから、しっかり休息を取って万全の態勢で臨んでもらわなければいけないだろう。それに、俺にできることはここでは何もない。

帝都から第3都市までの道のりの護衛が任務なのだから、神殿では大人しくしていることしかできない。

帰りの護衛までセシリアとザックが頑張るしかないのだ。

「お前もゆっくり休め。俺が邪魔だと言うなら、ベンたちの部屋に3人で寝ても構わない」

2人部屋だが、床に寝ることもできる。それくらいは騎士として訓練で何度もしているから平気だ。

「そこまで思ってないよ。それにカイルを追い出したら、後が怖い」

幼馴染みだからこんな風に言い合える。一介の聖人と皇太子殿下の護衛騎士が同等に会話をするのは立場が邪魔をしてしまう。

夕食までまだ時間があるから、それまでザックを休ませることが今は必要なことだろう。

「とりあえず休むよ」

そう言ってザックは目を閉じた。それほど時間をおかずに静かな寝息が聞こえてきた。

なんだかんだといっていたが、彼もそれなりに疲れていたんだろう。男性だからといっても聖人は騎士よりも体力面で劣る。

夕食で呼ばれるまで彼を休ませることにして、俺はしばらく黙って窓から外の景色を見ているだけの時間を過ごすことになった。


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