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1.6話

 自転車をこぐこと数分、商店街のある駅前までやってきた。ここ、甘川市(あまかわし)では最も人が多いエリアである。多いと言っても周りと比べればの話であってとてもじゃないが活気があるとは思えない。その端の方に俺の目的地があった。


「鈴風、ついたぞ」


「ここ……ひまわり?」


 俺たちの前には一階が店舗となった建物が建っている。そしてひまわり書かれたと大きな看板がかけられていた。


「ああ、ここでその髪きってもらうぞ」


 そう答えつつ扉を開けようとした時ちょうど中から知った顔がでてきた。


「うわっ、びっくりした! 達也じゃんどーしたん?」


 俺に気づいたそいつはつかつかと距離を詰めてきた。髪は今の鈴風と同じくらいのショートで眼鏡をかけ日焼けのあとが眩しい女の子である。


「ん、いや、ちょっと頼みたいことがあってさ」


「頼みたいこと?」


 そう言って首をかしげたところで俺のとなりに気づいたらしい。鈴風に近寄って数秒ながめた後……


「えっ……誘拐……」


「違うよ……」


「監禁するのに部屋を貸せと……」


「違うっつってんだろ!」


 大変失礼な事を言われたため大きな声が出た。周りの人に軽く頭を下げつつ説明する。ちなみにこの間に鈴風は俺の後ろにかくれてしまっている。


「妹だよ」


「妹? 達也に妹なんていたの?」


「まぁな」


 実際には本当の妹ではないがその辺はめんどくさくなりそうなのでカットだ。


「で、頼みたいことって何?」


 ふーんと軽く流して聞いてくる。もっと色々聞かれるかと思ったけど時間がないからありがたい。俺はそっと鈴風を前に出した。


「こいつの髪整えてやってくれ」


「妹ちゃんの?」


「ああ、鈴風って言うんだ。今日入学式なんだけどこの髪で行くわけにもいかないだろ?」


 女の子はチラッと鈴風を見ると確かにといった表情で顎に手をつけた。そして少し考えたあと俺たちを店の中にひきいれた。


「そこ座って」


 言われた通りに鈴風を散髪用のイスに座らせる。そして何か準備を終えると優しげな声で話しかけてきた。


「鈴風ちゃん、はじめまして。私は日向水夏(ひなたみなつ)。達也とは同級生なんだよ」


「お兄ちゃんの同級生……」


「ああ、それに美容師も目指してるからこいつなら大丈夫だ。それとほら鈴風も」


「っ、鈴風です、よろしくお願いします……」


 俺に促され少しびくつきながらも挨拶を返した鈴風。よしよしと軽く頭をなでてやる……つもりだったのだが本人にブロックされてしまった。


「こちらこそよろしくねー、こんなに可愛い妹さんがいたなんて全然知らなかったよー」


 そう言いつつバシバシと俺の背中を叩く。またポキッといかないか心配になりながらも時計を見て気持ちを切り替える。


「悪い水夏、入学式まであんま時間ないからささっとたのむ。あとでちゃんとまた話すからさ」


「はいはい、じゃーここは私にまかしてもらいましょー」


 水夏は自信満々に言うとハサミをかかげ作業にとりかかった。

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