高鳴る鼓動――再燃
心臓の鼓動が強くなった……。
なんで……?
「俺はもうゲームをしない……だってもう皆はいないから……」
美紀の事情は知っている。
七瀬と瑠香の事情もなんとなく知っている。
あれ? エリカさんはゲームに関係なくお別れ?
そう言えばエリカさんとは連絡取って途中から返信がなかったんだっけ……。
でもなんか怒ってた気もする……。
結局俺……誰一人とも納得のいくお別れ出来てないや……。
だから……こんなにも皆に会いたいって思うのか?
そう言えばお母さんに限っては連絡すら取ってないな……。
懐かしい記憶が蘇るのは俺が……ゲームに……未練があるからなのか?
待て。
そもそも俺がゲームをしていた目的は既に達成されたはず。
なのに未練がある……。
「あぁ……そういうことか」
蓮見はふとっ思いあたる節があった。
「ゲームをしているうちに俺色々と変わってたのか……」
そう――自分に言い聞かせるようにして部屋の中で一人呟く。
「自分でも気付かないうちに……皆とずっと一緒にいたいって」
だけどそれは叶わない夢物語。
そんなことはわかっている。
この瞬間――蓮見が忘れようとしていた《《もの》》が暴れ始める。
皆との出会いは?
ゲーム。
皆との別れは?
ゲーム。
では……どうすれば皆と再会できる?
馬鹿なりに考えた答えはこれだ。
「ゲームしかない……」
自分の心に素直になった蓮見の心がようやく納得した。
本当に求めていた答えを脳が導き出したからだ。
本当は百パーセントで三人を応援なんかしてない! だって急に皆一方的なバイバイで今までの全てを終わらせるなんてめっちゃ寂しいじゃんか! でも、活躍して夢を掴んで欲しいってのは正真正銘の九九パーセントなのは本当! だって、だって、だって、羨ましいしとても凄い快挙でもあるからこそ……素直に認められないんだよ! なんで俺だけこんなに落ちこぼれで俺だけここで脱落なんだよ。せめてバイバイするなら納得のいくバイバイじゃないと嫌だ。
それになんだよ。
エリカさんに限っては嘘つきな人とはもう連絡取りたくないわ、私見ててとても辛い気持ちになるって……俺のことそこまで見抜いているなら教えてくれたっていいじゃねぇかよ! 皆してなんだってんだよ! 俺はな見栄張ってるだけで本当はこんなお別れ納得がいってないんだよ!
堂々と大声出して応援すらさせてくれない。
そんなのは認めねぇ。
俺はもうプレーする側じゃない。
俺はただゲームで生き生きとする皆を腹の底から声を出して応援したいんだ!
同じ土俵に立てなくてもそれだけで俺たちは繋がれるし、応援なら凡人の俺にもできる!
本当に大切な人たちだからこそ、ちゃんと応援して最後夢を叶えた姿まで見届けたい。
だって考えて見ろよ。
自分が憧れて好きになった人が目の前で活躍するんだぜ?
そんなの嬉しくないはずがない!
「確かオートマントエレクトロニクスワールド大会本選は二週間後の土日だったけ?
俺が……応援するにはどうしたらいい?」
蓮見は一人考える。
ネット配信を見ることで応援はできる。
だけどそれじゃ本当の気持ちは相手には伝わらない。
それに精一杯頑張る三人を本気で応援できない。
なら友達が美紀を応援したいって言ってチラッと言っていたゲーム内のサーバ内でリンクした特別ネット観戦ステージ?
オートマント……ワールドと言い、リンクした……観戦と言いやっぱり蓮見はいつもの蓮見だった……。
でも……だからこそいつもの蓮見にようやく戻ったと言えるのかもしれない。
「あっ……!」
そして、何かを思い出したように蓮見は部屋の電気を消すのを止め、スマートフォンの連絡帳を開き電話を掛ける。
時計の時刻は22:42分。
頼む、出てくれ……そう願う蓮見の耳に。
プルプル、プルプル、プルプル。
と、相手を呼び出すコール音が聞こえてくる。