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戦場での再会


 司会者が指を鳴らす。

 すると巨大スクリーンの先で二人が転送され、大衆の視線が惹き付けられた。

 その中では。


「久しぶりね、ダーリン」


「お久しぶりです。そう言えば昨日何で会いに来てくれなかったんですか?」


「それよりなんで今日は赤褌なの? 装備は? それとも私を舐めているのかしら?」


「え? お祭りだからですけど?」


「……お祭りですって?」


 大幅なステータス向上という装備の恩恵を捨てた紅にとって朱音はまさに最強の英雄ヒーロー

 それは巷の評価。

 だけど紅の中での評価は違った。

 弱点などは存在しない。

 難攻不落のプレイヤー。

 それを前にして足が竦むのならわかる。

 だけど紅は違った。

 今まで感じたことのない殺気を向けられて、鳥肌が立った。

 だけど――。

 さっきから心臓の鼓動が煩いし、ワクワクが収まらない。

 今すぐにでも全力でぶつかっていきたい衝動がどんどん大きくなっていた。

 最恐が最強を目覚めさせたように、最強もまた最恐を呼び起こしたのだ。

 目の前にいる相手を倒して俺様最強不滅伝説創造そんな言葉が紅の頭の中で生まれた男は不敵な笑みを浮かべる。


「です、です。お祭りと言えばやっぱり褌でしょ!」


「浴衣じゃなくて?」


 首を傾ける朱音。


「……そうか、その手もあったか」


 と、何かを考え始めた紅。

 相変わらずと言うべきか、緊張感の欠片すらない紅は「まぁ、いいか」と呟く。

 初恋の人が見ている、今好きな人が見ている。

 そんな思いもあってか紅の口から「全部終わったら告白できるかな」そんな言葉が零れた。それは紅自身にも聞こえるか聞こえないかぐらいに小さい声だった。

 昨日好きな人を含め夢まで見ていたハーレム時間を体験できてわかった。

 紅は気づいた。

 自分は誰よりも自分勝手で好きな人に思いを伝えられず永遠の別れが嫌だった。

 だからここに今立っているのだと。

 偶然に近い巡り合いによって得た感情。

 勇気を出した結果成功するかなんてわからない。

 だから恐かった。

 だからあの日告白出来なかった。

 だから未練を胸に抱えた。

 だから振り向いて貰えるようになんだかんだ頑張っていた部分もあった。

 だから――。

 沢山の思いや感情が走馬灯のようによみがえる。

 そして直感で気付いてしまったことがある。

 なんの根拠も確証もないのに、格好悪くてもいいから今日だけは絶対に勝たないとダメだって。ありのままの姿でありのまま姿を皆に見せてダサいと思われてもこれが俺だって証明しないといけないんだって。

 もう自分の心に嘘は付かない。

 だから――紅は朱音を本気にさせる。


 全部終わったら告白。

 

 全部終わったら告白。

 

 全部終わったら告白。

 

「前回竹林の森イベントで俺は負けた」


「……んっ?」


「あの日俺は気づいたんだ」


「…………」


「朱音さん貴女だけです」


「…………」


「何度も命を狙われ貴女には一度も俺は勝てていないことに」


「……だから?」


「今日ここで決着を付けましょう。朱音さん――」


「ダーリン。朱音でいいわ」


 朱音は正式に認めた。

 紅が対等の敵であることを。

 紅からあふれ出るなにかを感じ取った朱音の表情は微笑んでいる。


「俺と《《けっ》》こんしましょう」


「……――はっいぃぃぃぃぃ!?」


 一瞬真面目な顔になったと思いきや、勝負と関係のないことを言って来た紅に思わず驚いてしまう朱音。


「き、急に、な、なによ!?」


「あっ……間違えた。俺と《《けっ》》ちゃくを付けましょう」


 まだ寝起きで脳が完全に目覚めていない紅は同時に色々なことを考えていた為に言葉のチョイスを間違え現在不適切なワードを放ってしまった。

 それは程よく集中していた朱音の集中力を乱す結果となって、偶然にも功を収める結果となった。


「…………」


 司会者は試合時間になったのを確認してカウントダウンをしようとした。

 だけどいきなり結婚の話しに発展した二人の話しに割って入っていいのかと、沈黙を続けていた。

 会場全体からは昨日のエリカの発言や今の紅の発言から一体どういう関係なんだ? と疑問の声が多数聞こえてくる。

 それに里美の動きが昨日より切れ味があることについて言及されると「事故? らしいが紅とキスしたからじゃねぇ? 後隣で寝たから?」などと噂話も聞こえてきた。これはミズナとルナの会話を偶然通りすがりの誰かが聞いたことが噂の発生源と言われたりと、、、謎は深まる。ルナに関しては「お兄ちゃん!」などと言って甘える振りして小さい子供がお母さんにちゅうするようにしてどさくさに紛れてしたなども……ミズナに関しても……。現実世界の紅は既に決断を迫られタイムリミットは殆ど残っていない、と言うのが真実なのだが当事者たち以外にそれを知る者は誰もいなかった。


「えっと……と、とにかく試合開始のカウントダウンに入りますね! 三、二、一、試合開始!」


 司会者が早口になりながらも強引に試合開始のゴングを鳴らすと、さっきまでの二人が嘘かのように一瞬で戦闘モードに入り、『最恐VS最強』大注目試合は開始となった。




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