心配ごとが現実問題となった運営室
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アメリカに所在する某運営室。
「やっちまった。早くも朱音と進撃の神災者を衝突させてしまった」
「わかってる。問題は――」
「アレね」
「これは【神槍の使い手・朱音】VS【進撃の神災者・紅】なんかじゃない」
「そう【神槍の使い手・朱音】VS【進撃の神災者・紅】VS【負荷耐久向上・サーバー】ってことだな」
「よし、皆わかってるな。では皆挙手してくれ。今回は無事に終わると思う者は左手を。今回は準備万全だが朱音が大暴れしてソレに乗っかった神災がさらに進化して我々の予想を大きく超えると思う者は右手を上げてくれ」
今回の大会の主な運営を任されたとある責任者を含む五人がそれぞれ手を挙げる。
「ふむっ、なるほど、なるほど。五人右手で総意一致だな。ヨシ、ミーティングを終わろう」
責任者はなにを見てヨシ、と言ったのかそれは本人にしかわからなかった。
だけど誰もその理由を聞こうとはしなかった。
サーバーは明日過酷労働を強いられた。
その腹いせにお前達の技量で我の負担を可能な限り減らせ。
できなければ――再び会社存続の危機が訪れる……。
と言いたいのかもしれない。
そんなはずはない。
それなのに――五人はサーバーの声を聞いた気がした。
今まで勤勉に働いていた物に与えた試練は試練返しと言う結果を迎えた。
だけど世間はその逆。
当事者となってどこか笑えない者たちとは対照的に早くもクライマックスカードの一枚が成立したとなって大盛りあがり。
某国の某サイトでは早速朱音と蓮見に対するBETが始まっており、オッズが凄いことになり始めていた。
例えば、〇〇〇と名乗る純粋無垢な少女は貯蓄の半分を『私の人生は紅君と共にある! 紅君を養うお金が増えますように』とそんなメッセージと共に人生を捧げていた。勝てば円換算で億に近いリターンを手に入れる。
例えば☆☆☆と名乗る少女は『好きな人との結婚生活費用のため』などとメッセージを添えてBETし、神々の挑戦で結果を残してもこの賭けに勝っても多額の賞金を手に入れる算段を付けていた。プロの世界では常に結果が求められる。だからこそ稼げるときに稼ぐと師匠の言葉通り、師匠ではなく好きな人にBETしてみたのだ。
例えば今回の某サイトの運営者は『手数料だけでも賞金の大半を賄えるぐらいに良好な結果が出ればもしもの時の場合でも会社の利益は護られるはずだ』とサーバーダウンによる保険金を荒稼ぎしていた。出場選手がいる全ての国の政府関係者と連絡を取り、全ての国の人間が合法で賭けれるようにした男は言う。
『神災好きってどこにもいるんだな』と。
つまり神災で迎えるかもしれないピンチを神災を利用して軽減しようと言う考えである。
そんなわけで責任者は「今回は大きな保険が既にある」と小さく呟いてから珈琲を口に含んだ。
だけどこの時責任者や某サイトの運営陣は忘れていた。
神々の挑戦のルール上神災は何度も訪れる可能性を。
一回、一回、一回、と何度も世界崩壊が訪れれば保険など無意味になるということを。
彼らは知っているだろうか?
この世には保険があるからと一安心していてもその予想を大きく上回ることがあることを。
そして賑やかな夜は過ぎ、運命の時間がやって来た。
その前に二つの世界の意見を交えた板を確認しておこう。