表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

37/65

束の間の休息と対戦表発表


 紅が会場から消え、全体が落ち着き始めた頃。

 司会者の女がタイミングを見計らって口を開く。


「例年通り開会式の後はすぐに一回戦を行います。紅選手はそのための準備に向かっただけですので皆さんを煽るだけ煽って逃げたなんてことはないのでご安心ください。そんなわけでサプライズ参戦するゲスト紹介は以上を持ちまして終了となります。続いて対戦カードの発表となります」


 その言葉は会場全体の空気を張り詰めた物へと変えた。

 対戦相手の発表。

 それは選手にとっても観客にとっても重要なこと。

 選手は各々が得意とする相手や不利とする相手などの実力とは別に相性の良し悪しに関わってきたりと優勝を狙う上ではかなり重要な発表となり、観客は白熱する戦いを求めているわけで人気のある戦いがいつ実現するかに興味をそそられている者が大半だと予測できるからだ。当然そうじゃない者たちも中にはいるかもしれない。なぜなら優勝より血が疼く相手と戦いたいと言うDNAに刻まれた狩猟本能に突き動かされ動く者たちもやはり……いる。


「ではこちらの巨大ディスプレイをご覧ください」


 責任者の顔が消え、対戦カードが発表される。

 対戦はAグループとBグループに分かれ、それぞれ勝ち残った二人が決勝戦に進める仕組みとなっている。

 つまり三十六人を二グループに分けそこからそれぞれのグループで二名を選抜し、四人で優勝争いをすることになる。残りはそれぞれのグループの勝ち点によって結果ランキングが決定される。


 つまるところ本選はこのグループの中で何度か勝負し勝ち残らなければいけない。

 言い方を変えれば仮に初戦で敗北しても場合によっては奇跡の逆転ファイターとなってグループ内二位となって決勝戦駒を進める可能性は十分にあるのだ。なので出場者は体力の配分や手の内をいつ相手に見せるかなどの駆け引きもこの発表次第では重要になってくるのだ。


 当然それを見て知る必要性を全く感じていない男一名を除いて公開されたグループ分けはこうだ。


【各グループ分け】

 名前の順番は機械の乱数によってランダムに選出された順である。


 Aグループ


 エミリー・ラブ・ベネッタ、アイリス、里美、…………、イェーガー、朱音、紅


 Bグループ


 小四郎、菖蒲、ルナ、WALL、Gollan、Dorago、チョン、…………、オー・ラン、ミズナ


 となった。


 沸き起こる会場全体からの歓声とブーイング。

 観客は各々が楽しみにしていた対戦カードがすぐに実現するかしないかで各々が言いたいことを言っている。

 対して選出たちは静かに自分の対戦相手を確認している。

 選出たちの中ではもう脳内でどう戦っていくかがシミュレーションされているのかもしれない。


 そんな皆の集中力を乱すようにして裸足で海パン一丁の男が選出が集まる一階の会場の隅に姿を見せる。


「おっ! 俺はAか!」


 その言葉にAグループの選手の視線が一斉に集まった。

 能天気な言葉を発した紅はさっきは持っていなかった大きな浮き輪を持って、


「へへっ、もうすぐ波が来る時間だな!」


 と嬉しそうに言った。

 そこに緊張の欠片はなぜかなかった。


「は~い、皆さん確認終わりましたか?」


 再び司会者に向けられる視線の数々。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ