発動『俺様究極全力裏シリーズ超新星爆発』
破壊不能オブジェクト内に震度七を超える大規模な揺れが起きた。
そして換気のため開けていた窓から一呼吸でもすれば臓器に機能不全をもたらす熱風が物凄い勢いで入ってくる。眩しい光は室内に居た者たちの視力を一瞬で奪い、大規模な爆発によって発生した音の波が鼓膜を破壊する。
大規模ギルドを取り囲むようにして出現した炎の海は人の高さを超える柱を幾つも持っている。さっきまで晴れていた空は既にばい煙が舞い薄暗い物へと変わっている。
息を止めても全身から溢れ出る汗。
それがすぐに蒸発してしまうほどに高温多湿となった大ギルド内ではパニック状態になる前に数千に及ぶ生命の源がこの世から消えていた。
それは大ギルドの外に居た小百合や全ての元凶に対しても同じだった。
息ができない以前に大ギルドの建物全体を飲み込んだ超巨大爆発は俺様戦隊とメールを巻き込んで前代未聞の破壊力で四つの命を容赦なく刈り取った。
地面を根こそぎ剥ぎ取るようにしてできた巨大なクレータは破壊不能オブジェクトとそれに接触した地面以外を大空へと薙ぎ払い砂や石が溶岩のようにネバっとして溶けて赤く燃えている。
「んなっ!?」
小百合は言葉を失った。
紅対策でどんな劣悪な環境でも呼吸できるように調整されている。
だけど……。
運営の想像をまたしても超える出来事が起きたのだ。
「身体が溶け始めている?」
幾ら炎に対する耐性を持っていても、身体が溶けてしまえばそれは何の意味も持たない。要は機械少女に使われている材質の問題である。
「まさかあの圧縮による攻撃は召喚獣一人によるものではなく、そう見えるようにカモフラージュして最初から四人がかりで作っていた……そう考えればこの尋常じゃない熱にも納得がいく」
巫女装束は既に燃えている。
だけど機械少女が仮の姿である彼女に恥じらいはない。
むしろ今は恥じるべき相手が何処にもいない。
それよりも地面に触れていた足が融解を始めたことの方が問題なのだ。
「そうだ……く、紅は!?」
慌てて周囲を見渡すが紅の存在はどこにも見当たらない。
分身たちは死んだ。
それは良い。
だけどあのゴキブリ並みに生命力が強い紅が死んだとは考えにくい。
皆が死んでもアイツだけは能天気な顔して「あぶねー、危うく死ぬところだったぜ」とか言っていつも生きているからだ。
首を動かして広範囲に見渡すが見当たらない。
ならば空と思い。
一生懸命探すがどこにもいない。
そして小百合は知った。
「あぁ……死んだのですね……」
(とりあえず目的は達成かな? 向こうの世界に戻ったらLine送ろう)
と。同時に小百合の意識も強制的にシャットダウンしてしまう。
前いた世界とは比べ物にならないほどに再現性が高いサーバーはこの程度ではビクともせず、逆に神災耐性を持った者たちが先に根を上げる結果となった。
だけどこの時、多くの者たちが気付いていなかった。
「へぇ~、空気の圧縮面白いことするじゃん」
「あの機械少女の子相当な実力者かな? あの子が準備する時間攻撃の手があったはずなのに敢えてしなかったとか。まるでなにかを見せつけるようにずっと立ちまわっていたわね」
「あれが朱音の好奇心を最も刺激する存在か」
「朱音や菖蒲に続いて碧が警戒する意味がわからない」
など、とこの世界のある者たちからすればその程度? ぐらいにしか思われていなかったことに。彼ら彼女らは神災をまだその身で知らない者たち。しかしその者たちは朱音と同じく世界で名の知れた者たちでもある。まだまだ実力不足が見える紅の評価に対し小百合は自身の情報網からこの世界にもっとなれた方が良いと判断して二人だけの秘密の特訓を開始した。
正体は最後までばらさず。
そして時が経ち、遂に『神々の挑戦』が始まる前日になった。
同時刻運営からの告知にある板が注目を浴び始める。




