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世界と大衆にその存在を教えろ 後編


「いけるか?」


「当然! 今回は短期勝負でいく!」


「わかってる」


「お兄ちゃん!」


「頼む!」


「援護は任せろ! 俺が護衛に入る。メールはさっき耳打ちしたことを任せる!」


「オッケー、お兄ちゃんのために私頑張るよ!」


 霧の中、微かに聞こえる声。

 それはブルーとイエローの会話であり、そこにそれぞれが召喚したメールの声が混ざったもの。

 その話声が偶然聞こえた紅は一人微笑む。


 対して、ブルーとイエローが霧の中でコソコソ動いていることに気付いた小百合は呟く。


「今回の目的を考えれば、このまま自由にさせておいた方がいいですかね。ってことでちょっと遊んでみますか。飛べ! 紅蓮の鳥!」


 瞬間、小百合の矢が炎で出来た鳥の形に変形し飛ぶ。

 それは一射にとどまらず、速射による連射で霧の中を駆ける紅へと向けられる。


「ん? 随分とおそ……ってこいつ追尾機能を持っているのか!? ストーカーじゃねぇか!」


「行きますよ! 罪人に天空の裁きを与えよ」


 小百合の持っている弓が炎で燃え、空に赤い色の魔法陣が出現する。

 刻印を刻んだ魔方陣は明らかに紅が見たことがない物。


「あれも俺様戦隊と同じこの世界仕様なのか? だとしたら絶対進化(調整)されてる気がするが……」


「ふふっ」


 小百合が空中に出現した魔法陣に向かって矢を放つと矢の雨となって紅に襲い掛かる。後方と上空からの攻撃。ただし空からは矢と言うよりかは炎の矢が雨のように数を増やして広範囲に降り注ぐと言った感じだ。


「そうくるなら、俺様だって。イエローヘルプ!」


 紅が叫ぶと。

 猛毒の矢が炎の雨と一緒に空から降り注いでは小百合を襲う。


「そうきます? では私も少し本気を出しましょうか」


 すると、小百合の眼が光輝いては猛毒の矢を消滅させる。


「ちょ!? そんなのありかよ?」


 驚く紅は負けじと意地を見せる。


「だったら見せてやる! 美男代表の美しい俺様の眼、今こそ輝け!」


 足に力を入れて急ブレーキをかけて、後方から迫りくる炎の鳥と炎の雨に視線を向ける。

 そして精一杯の眼力を込めて自分の眼もこの世界仕様で進化していると願った紅だったが……。


 ブサブサ、ブスブス、グサッグサッ、とハチの巣にされ。


「ぎゃああああああああああああ!!!」


 激痛に叫び苦しむサボテン男ができあがった。


 それと、自分にはその力がないことを証明した。


「…………」

(え? 意味が分からないんだけど? バカなの? やっぱりバカなの? 美紀はこんな奴を好きになったの? え? 嘘よね? 冗談だよね? ね? ね? ね?)


 小百合は紅の行動が理解出来ず、一瞬どう反応していいか困ってしまったが、すぐに意識が危険を感じ取り、視線を上に向ける。


 そのころ、一人のメールは圧縮して作りあげていた。

 イエローの望む物を。

 ただし神災狐の頭上で。

 つまり、圧縮を利用して作られた燃える玉は小さい太陽のように燃えている。それがどれだけ凄い力を蓄えているのかは誰にも分からない。

 ただメールの手の平にある太陽は見るからに危険であることは間違いない。ただし客観的に見たメールだけは太陽が放つ熱さを感じていないように見える。言い方を変えればメールと機械少女の小百合を除くここにいる全員が尋常じゃない汗をかいている。口が乾き、息苦しい熱風が肺を蝕む毒となり、気を緩めれば意識が飛びそうになるような環境で異常者だけは元気な声をあげる。


「俺様裏超全力シリーズ太陽神! メール今だ!」


「オッケーだよ、お兄ちゃん!」


 最早今までの全力シリーズとは比にならないエネルギーの集合体が隕石のように落下を始めた。


 強風がタイミングよく吹いたことで霧が薄れると、そこには神災狐とその頭上にいるメールの隣では神災竜が護衛に付いており、空は混沌カオス状態になり始めていた。




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